噛む、吠える、引っ張るなど犬と人の間で起こる問題に取り組みます。飼い主が学ぶ犬のしつけ教室ONELife&ぎふ動物行動クリニック

柴犬しつけ&噛み癖研究所|行動診療科認定医が噛む犬の治療を解説

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柴犬の噛み癖は『しつけ』の問題だけじゃない?『脳機能』や『身体疾患』の可能性も

しつけ教室の看板犬の柴犬のしんさんの顔写真

柴犬は犬歯が刺さる程の噛みつきが多く発生する犬種です。私が診察しているぎふ動物行動クリニックでも、柴犬の相談が最も多くなっています。柴犬は、オオカミに最も近い犬種と言われており、独特の行動を示します。そのため、「なぜ噛まれたか理由が分からない」という飼い主さんも多くいらっしゃいます。

柴犬をはじめとした日本犬は、洋犬に比べて、葛藤を処理することが苦手な犬が多くいます。飼い主から撫でられたくないのに撫でられ続けた場合や、目の前に食べ物があるときに近くに飼い主がいて「食べたい」けど「守らなければならない」と思っている場合など、生活の中で葛藤を生じる場面で、葛藤から攻撃が起こります。

また、柴犬をはじめとした日本犬は、人に頼ったり、依存する傾向が低く、独立心の強い犬種です。それが魅力でもあり、自分が決めたことを曲げにくい性質から、攻撃行動も起こりやすくなっています。

柴犬噛み癖&しつけ研究所では、柴犬をはじめとした日本犬について、噛む問題への対応を中心に、犬のしつけ・問題改善についてご紹介します。

問い合わせについて

当WEBサイトは、岐阜県岐阜市で行動診療を行っている、ぎふ動物行動クリニックが運営しています。当クリニックの院長奥田は、2017年に日本で8人目となる獣医行動診療科認定医を取得しています。


こちらも是非ご一読ください。

適切な治療を行えば、多くの症例で症状が緩和されます。症状が悪化する前に、行動診療を行っている獣医師にご相談にお越しください。わからないこと、不安なことがあれば、当院にお気軽にお問合せください。
(ぎふ動物行動クリニック 獣医行動診療科認定医 奥田順之)

柴犬の特性と噛む原因と対応の概要

柴犬のリキちゃんのしつけ教室でのレッスンの様子

柴犬が噛む原因として、日本犬が葛藤に弱いという面があります。小さな刺激に対して過剰に反応しがちであり、そうした遺伝的特性が噛む行動が他の犬種よりも多い原因になっています。

しかし、葛藤の処理能力は継続的なトレーニングによって向上させることができます。トレーニングを受けていない犬が葛藤が処理できにくいのは、人間の子どもと同じです。人間は成長に伴い、子どもに見られるような感情的な行動は少なくなっていき、協調的な行動をとることができるようになります。しつけやトレーニングは、葛藤を処理し、飼い主と協調的な行動がとれるようにする力を向上させます。

一方で、同じ柴犬の中でも、非常に葛藤に弱かったり、小さな葛藤が生じただけで噛むという行動に出る犬も少なくありません。飼い主との関係の中で、小さな葛藤が生じた際に、噛むという行動をとった時に、飼い主が嫌な事を止めた、葛藤を生じるような場面(長時間撫でられる、身体を拘束される、ケージに入れられるといった状況)から逃げられたと学習することで、非常に小さな刺激でも噛むようになります。

あるいは、噛んだ時に飼い主がヒステリックに体罰的な方法を用いて、痛みや恐怖を与えた場合には、飼い主との接触そのものが不安・興奮・葛藤を生み、それが噛む行動につながっていることもあります。

脳機能の異常による攻撃行動

茶黒の柴犬ちゃんと一緒に散歩でのしつけトレーニング

また、噛む行動は必ずしも上記のような犬にとって正常な行動ではない可能性があります。噛む行動は、本来、犬自身の身を守るため、犬自身の利益を守るために行われるの正常な行動です。しかし、そうした意図・目的にそぐわない場面で噛む行動が発生することもあります。それは、犬が正常な判断を欠いており、正常な脳機能ではない状態にある可能性があります。

例えば、人間でも、うつ病のような精神疾患を発症します。犬でも、持続的なストレス環境下に置かれることで、そうした精神状態になる事があります。うつ病は脳内の神経伝達物質の枯渇や不均衡、脳神経細胞の死滅・萎縮などによって発生しますが、犬でも同様の変化が起こりえます。そのような場合、犬は正常な判断ができず、異常な行動をとる可能性があります。

正常行動か、異常行動かを判断することは容易ではありませんが、特に以下のような特徴がある場合、注意が必要です。

  • 日によって表情が違い時に目が座ったような表情をする
  • 普段は出てくるのに、たまにケージから出てこない日がある
  • フードを出すとフードに対して唸る
  • 寝ている時や、深夜に、突然唸りだす
  • 尻尾に向かって唸る、尻尾を噛んで血が出る
  • なんのきっかけもないのに、突然唸りだす

このような行動は、精神的に不安定になり不安が強くなりすぎている場面や、非常に強い葛藤が発生している場面、てんかんなどの疾患によっても発生することがあります。もちろん、噛む犬の中では、こうした異常のない犬の方が多いわけですが、それでも、以上のような異常があるかもしれません。あらゆる可能性を考慮に入れて、原因を考えていく必要があります。

心身の疾患に対しては、獣医師の出番

柴犬のしんさんのニヒルな表情

こうした問題に対しては、一般的なしつけだけでなく、獣医師による心身の疾患の診断と治療が必要となります。そこで、全国の動物行動学に精通した獣医師が集まった、日本獣医動物行動研究会が組織され、行動診療のレベルアップを図っています。ぎふ動物行動クリニックの奥田・鵜海も所属し、活動を行っています。

獣医行動診療科では、問題行動の診察を進める際に、第一に身体疾患の除外からスタートします。

例えば、お腹が痛くてケージから出てこないという状況があり、その時に飼い主が触ろうとすると噛むということがあります。関節などの痛みでも同様に、痛みから噛みつきが起こります。また、何のきっかけもないのに突然唸りだすなどの状況では、てんかんなどの神経疾患の関与があるかもしれません。

『噛み癖』=『しつけの問題』と考えがちですが、必ずしもそうではなく、まずは心身の問題を検討するということが大切です。

詳しくはこちらをご覧ください。

獣医師への相談は、一般の動物病院ではなく、行動学を専門に学んでいる、行動診療を行っている動物病院にご相談ください。

噛む行動に対する診断と治療の流れ

柴犬のこはるちゃんガオーっという表情-しつけ教室にお泊り中

具体的にどうすればいいのか。獣医行動診療科では、大まかに以下の流れに沿って行動を減らしていきます。

身体疾患の除外
  • 身体疾患がある場合は、身体疾患の治療を優先
問題行動の分析
  • 噛む行動のきっかけや状況の分析(噛む前の状況)
  • 噛む行動を増やしている対応・要因の分析(噛んだ後の状況)
  • 噛む行動や付随する行動が異常行動か正常行動かの分析
問題行動への対応(環境修正・行動修正)
  • 安全に暮らせる生活環境の設定
  • ストレスとなっている生活習慣の改善
  • 噛むきっかけとなる刺激の除去
  • 噛む行動を増やしている要因の除去
  • 飼い主が犬を安全に扱えるようになるためのトレーニング
  • 噛む行動以外の行動を誘導するトレーニング
  • 噛むきっかけとなる刺激に馴らすトレーニング
問題行動への対応(薬物療法・その他の療法)
  • 異常な程度頻度・異常行動である場合、薬物療法
  • ホルモンが関係している場合避妊去勢手術

飼い主自身で今すぐできること(当座の対応)

茶黒の柴犬ちゃんと散歩
噛む唸るといった攻撃行動、中でも成犬で血を見るような攻撃行動では、素人の飼い主さんがネットの情報を信じて対応しても、改善の見込みは少ないと思います。お金はかかりますが、早い段階で専門家を探すのが最善だと思います。お近くの専門家をお探しの方は、以下のリンクをご確認ください。

とはいえ、何かできないのか?

とはいえ、何かできることはあるでしょうか。

飼い主自身で対策を行う場合、安全対策が何より重要です。安全対策とは、攻撃行動を発生させない対応を取るということです。そして、飼い主自身の判断で行う安全対策はあくまでも一時しのぎであって、できるだけ早く専門家に相談してください。その前提で以下のような対策が考えられます。

撫で方の再考

撫でるときに噛むという犬では、撫で方を客観的に考えてみると良いでしょう。犬にとって嫌な撫で方になっていないかどうかが重要です。噛まれるということは、犬の嫌だという意思表示です。

「撫でてあげているのに噛まれる」と考えているのであれば、それは飼い主側の欲求の押し付けです。撫でたいのは飼い主さんで、犬は撫でられたいのかを考えてみましょう。

犬が低い姿勢で飼い主の下に入ってくるような場合や、すぐにお腹を見せる場合、撫でてほしいんだろうと考える飼い主が少なくないわけですが、実はこうした姿勢は劣位行動と言って、脅威を感じる相手に自分を小さく弱い存在であると見せる犬でよくみられる行動である可能性があります。

生活環境内に仕切りを設ける

ケージに近づくと唸る、フードを食べている時に近づくと唸るといった攻撃行動では、自分の居場所に飼い主が近づいてくること、フードを食べている時に飼い主が近づいてくることに対して警戒心を抱き、唸っている可能性が高い状況です。

人の動線と、犬の生活環境の間に間仕切りを設けることで、犬が脅威を感じる場面を減らし、攻撃行動を発生させにくくすることができます。

ハウスリード

リードの付け外しの際に噛まれる場合、リードを着けられて拘束されることに対して、嫌悪感を抱いている可能性が高いです。この場合、もしリードを着けることができるのであれば、つけっぱなしにしておくと、付け外しの必要がなくなり、噛まれる可能性が低くなります。

常にリードを着けておいて、散歩用と家用を散歩に行くときに付け替えるという対策も良いでしょう。リードが既についている状態であれば、付け替えの際に噛まれる可能性は低くなります。リードを付け替えた際は必ずおいしいオヤツを与えるようにしましょう。

一緒に寝ない

いっしょに寝ていて、寝がえりを打った時に噛まれるという状況があるようでしたら、やはり一緒に寝るのは控えたほうが良いでしょう。犬は犬の寝床で寝られるように、ハウスのトレーニングをする必要があります。ハウスのトレーニングは、専門家の指導を受けながら進めることをお勧めします。

守るものを与えない

ガムなど嗜好性の高いオヤツや、フードを守って、唸る噛むということも少なくありません。こうした場合、いくらその犬がガムやフードを好きであっても、守れるように与えてしまうと、危険を生じます。ガムであれば与えない、フードであれば手で与えたり投げて与えるなど安全に与えられる方法を模索していきましょう。

『犬の咬みグセ解決塾』奥田先生の著書が発行されました!


“動物の精神科医”が教える 犬の咬みグセ解決塾

本サイトの内容がさらにブラッシュアップされ、本になりました。是非、ご購入ください!
第1章 犬のしつけの迷信と真実
第2章 犬の心の発達と問題行動
第3章 咬む原因は「脳」にあり
第4章 犬にとっての「ストレス」の正体
第5章 攻撃行動は如何に学習されるのか
第6章 「遊び」咬みの対応法
第7章 「本気」咬みの治療法

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柴犬のしつけと噛み癖を考えるために~目次~

柴犬の噛み癖の原因と対策

柴犬の攻撃行動の本当の原因とは

柴犬の攻撃行動への対応法

柴犬の子犬の噛みつきの動機と種類

柴犬の子犬の噛みつきの対処法

相談できる獣医師の探し方

薬物療法って怖いんだけど…

 

柴犬の問題行動としつけ相談例

いつもは良い子なのに、日によって機嫌が変わる

抱っこできない、近づくと唸る、噛む

物を守って噛む

夜中に吠える

帰宅時・食餌中に家族に噛む

食餌の前後で攻撃的になる、突然噛む

尻尾を追う・唸りながら尻尾を噛む

柴犬の認知症(高齢性認知機能不全)

 

クリニック・しつけ教室に通う柴犬の飼い主さんからの声

こはるが病気だったと理解できて、本当によかったです

犬との付き合い方を根本的に見直すきっかけとなりました

 

柴犬の噛み癖としつけの概要

柴犬の問題行動は脳の問題

当研究所の紹介

飼育放棄を防ぐために

柴犬との関係を築く『知識』

柴犬の行動特性とは?

柴犬特有の問題行動

問題行動発生のプロセス

 

攻撃行動以外の問題行動の種類と対応・しつけ

柴犬の常同障害(しっぽを追う・噛む)

柴犬の認知症(高齢性認知機能不全)

犬の分離不安(留守番できない)

 

柴犬の問題行動改善としつけのポイント

しつけの前に『生活環境を整える』

しつけの前に『ハウスリードで安全確保』

しつけの前に『犬のニーズを満たす』

しつけの基本=クレートトレーニング

犬と一緒に歩くためには?楽しい飼い主になろう!

噛みつきに対して、体罰的なしつけが否定される理由

家庭の犬達は、動物福祉の5つの自由が守られている?

 

柴犬しつけ&噛み癖研究所とは?(代表あいさつ)

柴犬噛み癖研究所では、日本で最も咬傷事故が多いけど、とっても愛すべき存在である柴犬について、その行動と生態、そして柴犬特有のしつけについて研究し、飼い主さんと柴犬の共生をサポートする研究所です。

ぎふ動物行動クリニックでは、毎日のように柴犬の問題行動の相談を受けています。愛知県や岐阜県では柴犬の飼育数が他地域に比べて多い様です。土地があるので持ち家が多く、企業が元気なので所得が比較的高いので、犬の飼育率が高く、外で飼う方も含めて柴犬の飼育率が高いようです(正確な統計はないのです)。

ぎふ動物行動クリニックの診察の中で、柴犬の相談が非常に多い現状を日々肌で感じています。そして飼い主さんのサポートをする中で、しつけに関する勘違いや、柴犬の攻撃行動に対する迷信が事態を悪化させ、家族の身体と心を傷つけている現場に幾度となく出会いました。保健所への放棄をするか真剣に悩み、相談に来られた飼い主さんも少なくありませんでした。

私はこうした柴犬に対する迷信や、体罰を中心とした古いしつけの考え方ではなく、適切な情報を得られる機会を作ることで、多くの柴犬の飼い主さんが、愛犬を再び愛せるようにしていきたいと考えています。咬む咬まれる関係ではなく、信頼し合える飼い主さんと愛犬になって行くサポートをしたいと考えています。

そこで、私は『柴犬しつけ&噛み癖研究所』と題して、情報発信をするべく、本サイトを運営しています。
是非チェックしていただき、また面白い記事があるなと思ったら、SNSなどでシェアして頂きたいです。

お問い合わせはこちらから

メールでの相談だけでもさせていただいております。お気軽にお問い合わせください。お問い合わせは、以下の電話番号もしくはメールフォームにてお願いいたします。

岐阜近郊・東海地方・岐阜近隣県の方は、往診も可能です。遠方の方は、お近くの行動学を専門にしている獣医師をご紹介することもできます。

teltoiawase

噛み癖のしつけに主従関係は必要ない

周囲からも「あなたがリーダーにならないと」「舐められているから噛まれるんだ」という指摘を受けることもあり、「私のしつけが悪かったから」と自分を責めている方も多いと思います。

「主従関係が出来ていないから噛まれる」という情報は半ば定説化していますよね。「本当は体罰なんてしたくないけど…」と疑問に思いながら体罰をしているなんてことも。

実は、噛み癖の改善には、『主従関係』≒『体罰を用いたしつけ/強制的なしつけ』は必要ないどころか、さらに強い威嚇・噛みつきにつながる恐れのある、非常に危険な考え方なのです。

中には、体罰を用いて噛み癖がなくなる例はもちろんあります。しかし、成犬で血が出る程の噛みつきや、頻繁に発生している威嚇に対して、専門家の助言を受けることを選ばずに、飼い主が体罰を使うことは、百害あって一利なしなのです。

犬の飼育放棄をなくしていくために必要な『しつけ』と『知識』

犬の飼育放棄の理由の中で、しつけができなかったから、吠えるから噛むからと言った問題行動を理由にした飼育放棄は、全体の2割程度と言われています。その他の理由としては、飼い主が高齢で世話できない、離婚・失職・突然の災害などの経済的要因によるもの等がありますが、いずれの場合も、犬といい関係が築けていれば、飼育放棄の可能性は低くなり、また殺処分という結果も予防できます。

現在、保健所で殺処分される犬は、高齢の犬、病気の犬、問題行動のある犬など、譲渡が難しい犬に限定されてきています。

このように、犬の飼育放棄や殺処分問題を解決していくためには、犬と飼い主がいい関係性を持つことは非常に重要な要因になってきます。いい関係性を作る上では「しつけ」をしっかりやることに加えて、適切な知識を飼い主が身に着けるということも必要です。

しつけの基本は、犬がいい性格で育てるように、犬の精神的発達をサポートすることです。
特に子犬の時期の社会化が何より重要で、まず第一に社会化を実践していく必要があります。

そして、その上で、適切な知識を得て犬との関係を築いていく必要があります。
特にしつけで解決できない問題に対しては、適切な方法で解決していく必要があります。

柴犬との関係を築く、しつけの前に必要な『知識』

犬との関係を築いていくために必要な知識とはなんでしょうか?たくさんありすぎて困ってしまいますね。犬の生態や正常なに関する知識、犬の行動や学習に関する知識、犬の異常行動に関する知識、犬種ごとの特性、犬の健康管理やケアの方法、知っていればいい関係になれるのに、知らないがためにそれができないということは多くあります。そして、しつけをする前提として、犬という種のことを知り、柴犬という品種を知り、その犬の個性を知ることが何より重要です。

柴犬に関して特に知ってほしい知識としては以下の項目です。

1.柴犬はオオカミに最も近い犬種、その犬種の特性を知ってほしい
2.柴犬は最も問題行動に悩む飼い主さんが多い犬種。どんな問題行動があるのか知ってほしい
3.問題行動はしつけだけの問題ではなく、脳機能の問題もあること
4.薬物療法だけでは改善しない場合も。行動修正と関係改善のトレーニング法について

柴犬しつけ&噛み癖研究所では、これらの情報について随時更新していきます。

オオカミに一番近い!?柴犬の特性とは?

柴犬はオオカミに近い?

犬種間の遺伝的差異に関する研究は世界的に行われています。マイクロサテライトDNA解析を用いた研究では、犬は5つの品種のグループに分けられることが示されました。1つ目が、柴犬・秋田犬・チャウチャウ・シャーペイのアジア犬グループ、2つ目がバセンジー、3つ目がアラスカンマラミュート・シベリアンハスキーの北極系スピッツグループ、4つ目がアフガンハウンド・サルーキーの中東ハウンドグループ、5つ目がその他すべての犬種を含むグループとなりました。この中でも柴犬を含むグループが、他のグループから遺伝的に大きく離れた位置で分離されたのです。

さらに柴犬たちのグループは、すべての犬種の中でオオカミと最も近縁なグループであることが分かりました。この結果から、欧米でも柴犬をはじめとする日本犬に対して、多くの研究者が注目することになったのです。

柴犬の行動特性とは?

日本犬の行動特性を調べるべく、これまでにいくつかのアンケート調査が行われています。東京大学の武内ゆかり先生と森裕司先生の研究では、人気犬種56品種について、飼い主への攻撃性、子どもへの攻撃性、他犬への攻撃性、縄張り防衛、警戒吠え、無駄吠え、破壊性、興奮性、活動性、遊び好き、愛情要求、他人への人懐っこさ、服従訓練、トイレのしつけの14項目について検討が行われました。その結果、柴犬ではすべての攻撃性がトップクラスであり、はじめて犬を飼う家庭には向かないと評されています。日本犬へのこだわりがある人向きとのことです。この研究をもとに武内先生が書かれている本がこちらです。『はじめてでの失敗しない 愛犬の選び方』

実際に診察やレッスンの中で柴犬を見ていても、興奮性が高く、一般的なトレーニングでも苦労されている飼い主さんが多くいらっしゃいます。それも個体差が大きく、非常に人懐っこい柴犬もいれば、リードを持つだけで失禁する柴犬もいるという印象です。総じてハンドリングされること、首輪を持たれること、拘束されることが苦手なため、抱っこやブラッシングを嫌がる傾向にあります。なので、スキンシップを求める飼い主さん、犬の表情を見ずに触ってしまう飼い主さんは咬まれる傾向にあるように思います。

血統によって、おとなしいタイプと攻撃的なタイプに分かれるとの指摘があり、迎える際は親兄弟に尾追いがあるかどうか、噛みつきの状況などが確認できると良いでしょう。またペット業界としても、攻撃性の高い柴犬を少なくしていくための取り組みが必要とされるでしょう。

柴犬の特有の問題行動とは?

攻撃性と噛む行動の発生しやすさ

先にも述べたように、柴犬の攻撃性は他の犬種にくらべて高い傾向にあります。東京大学の荒田先生の研究では、攻撃性に焦点を当てて、柴犬を含む14犬種について比較を行っています。その中で、柴犬は他の犬種に比べて「刺激反応性」と「ヒトへの親和性」が低く、「嫌悪経験に対する回避傾向」「獲物追跡」が高いことが明らかになりました。また攻撃対象として、飼い主、見知らぬ人、他犬への攻撃性が高いことが示されました。

当方への相談で最も多いのが、飼い主への攻撃性です。攻撃の動機づけとしては、食餌に関連した攻撃行動、物を守る所有性攻撃行動、首輪を持たれることやブラッシングをされることに対する恐怖性/防衛性攻撃行動、常同障害の併発事例で常同行動が発生している時に手を出して咬まれる、等があります。これらは、荒田先生の調査にある、恐怖性/防衛性攻撃行動は「嫌悪経験に対する回避傾向」に、所有性・食餌関連性攻撃行動は「獲物追跡」に関連して、その発生頻度が多くなっていると考えられます。

しっぽを追う・しっぽに唸る・しっぽを咬む(常同障害・てんかん)

もう一つの柴犬特有の問題行動は、尻尾を追う、尻尾に唸りながら咬みつこうとする、あるいは出血するくらい咬む、いわゆる常同障害が挙げられます。尾追い行動は、多くの場合、興奮したり、葛藤状態になることによって発生します。発生頻度は非常に高く、一説には6割の柴犬が尾追い行動をすると言われます。治療が必要な程深刻な尾追いが発生する確率は、はっきりとはしませんが診察とレッスンをしている中では、100頭に2~4頭というところかと思われます。

重篤な尾追い行動や攻撃行動がある場合、常同障害だけでなく、てんかんが関連しているのではないかと最近の東京大学の研究で示唆しされています。実際、重篤な尾追いの場合、常同障害の治療薬だけでは反応が悪く、抗てんかん作用のある薬を併用することで改善する事例も多く、半数程度は抗てんかん薬に反応する感触があります。また、門脈シャントなどの身体疾患が関連して尾追いが起こっていることもあるため、尾追い=常同障害と決めつけずに、しっかりと診断をつける必要があります。

高齢性認知機能不全

いわゆる犬の痴呆=高齢性認知機能不全も柴犬をはじめとした日本犬に特徴的な行動異常です。高齢性認知機能不全では、睡眠リズムの変化(昼夜逆転・過剰な吠え)、関わり合いの変化(飼い主との遊びの減少、喜ばなくなる)、不適切な場所での排泄、散歩ルートが分からなくなる、同じ場所を回ってしまう・行き止まりで引き返せない、等の変化が起こります。動物イーエイムリサーチセンターの内野先生の調べによると、高齢性認知機能不全を発症した犬の84.1%が柴犬もしくは日本系雑種だったとのことで、如何に柴犬と日本犬が高齢性認知機能不全になりやすいか分かります。

柴犬の特有の問題行動を理解して付き合う

このように、柴犬は様々な問題行動が特徴的に発症しやすい遺伝的特性を有しています。その分、しつけ(=行動を学習させること)でしっかりと飼い主との関係づくりを進める必要があります。しかし、ひとたび問題行動が発生した場合は、一概にしつけの問題と括らずに、脳の機能障害や身体疾患を考慮して、獣医師の診断の元に改善を行っていくようにしましょう。

しつけのイメージとは違う?問題行動は如何に発生するのか?

このような、攻撃性・常同障害・認知機能不全という柴犬特有の問題行動は、しつけの問題とは言い難いのです。もちろんしつけ(学習)の問題も関与していることは事実ですが、問題行動の素因となる脳機能の障害あるいは身体疾患が潜在していると考えるべきでしょう。

問題行動は如何に発生するか?

問題行動の発生は、4つの段階に分けて考えることが出来ます。1.先天的要因・後天的要因、2.きっかけとなる刺激・状況、3.行動の発生、4.行動の定着です。

1.先天的要因・後天的要因

問題行動の発生(特に強度の問題行動)には、行動の要因となる要素が何かしら潜在していると考えられます。先天的要因としては、品種・性別・繁殖の状況・社会化の程度などが挙げられます。後天的要因としては、飼い主との関係性・飼育状況(生活環境や生活習慣)・健康状態などが挙げられます。

先天的要因として、例えば攻撃的な家系は攻撃的になりやすいというのは分かりやすいかと思います。なぜそうなるかと言えば、一つには脳内の情報伝達を司る、複数の脳内伝達物質の受容体は、遺伝子によってその形が決まっており、情報を伝えやすくも伝えにくくもします。例えばセロトニンは脳のブレーキとも呼ばれるホルモンですが、マウスやベルベットモンキーを使った実験では、動物の攻撃性とセロトニンの代謝速度の低下やセロトニン活性を減少させる薬剤の投与が関連していることが示されています。また、繁殖の状態が悪く母胎にストレスがかかった場合は、脳のコルチゾール受容体が減少するなどの反応があることも知られています。しかし残念ながら先天的要因は犬が家に来た時点で決まってるものがほとんどですので、まずは先天的要因があるんだと理解することが需要です。

後天的要因は、飼い主が操作できるものでもあり、問題行動の発生にも予防にも非常に重要な要素となります。飼い主との関係や、生活環境・生活習慣は飼い主次第で変えていくことが出来ます。例えば、先天的要因として不安傾向の強い犬を、「昼間一人はかわいそうだから」と人通りの多い道路に面した庭につないでおいたらどうなるでしょうか?おそらくストレスから過剰な警戒吠えや他の問題行動が発生したり、場合によっては身体健康状態にも影響してくるかもしれません。

先天的要因・後天的要因ともに、減らしていくことが重要ですが、そのためには、動物福祉の5つの自由をしっかりと確保していく必要があります。特に飼い主が操作できる後天的要因について、5つの自由が確保されているかどうか確認してみましょう。

2.きっかけとなる刺激・状況

問題行動は、きっかけとなる刺激や状況が無ければ発生しません。柴犬の攻撃行動では、きっかけとなる刺激として、『飼い主が触る』『飼い主が近づく』『飼い主が物を取り上げようとする』『食餌を食べる』『知らない人が近づく』等が挙げられます。何れも問題になりやすい刺激です。

特に飼い主が触ることについては、「犬は触られるのが好き」と勘違いしていたり、家族に子どもがいたりすることで多く触ってしまうことで問題行動のきっかけを多く与えていることもしばしば見受けられます。お腹をみせるので触ってあげたら咬まれたなんてことは良くあります。ちなみにおなかをみせるのは降参の意味もあって、触ってほしいのではなく「これ以上いじめないで」とか「ここら辺でブレイクしましょう」と言う意味だったりします。

きっかけとなる刺激が無ければ問題行動は発生しないのですから、そういう刺激や状況を避けるということは、問題行動のコントロールに非常に重要です。しつけというと、きっかけとなる状況が有っても我慢できるようにするというイメージがありますよね。例えば触っても怒らないようにするとか。でもそれは二の次で、まずはきっかけを排除する、すなわち、触らないということが重要だということを覚えておいてください。

3.行動の発生

先天的・後天的な要因があり、きっかけとなる刺激や状況が与えられることで、問題となる行動は発生します。噛む・吠える・飛びつくなど様々な行動が問題となる可能性があります。

この行動の発生については、直接制御できないものと考えたほうがいいでしょう。つまり、要因やきっかけとなる刺激は人の働きかけで減らすことはできるけれど、行動の発生はその結果起こることであって、要因やきっかけなどを制御すること、あるいは行動の結果生じる事象を制御することでしか、行動の発生を抑えることはできません。『しつけ』を行う際には、その行動そのものを変えるのではなく、要因や刺激、行動の結果を変えていく必要があることを理解しなくてはなりません。

4.行動の定着

行動が発生した後、どのような結果が起こるかによって、動物がその行動を繰り返すかどうかが決まります。

例えば、不安傾向という要因があり、飼い主から恐怖刺激が与えられた際に、飼い主に噛むという行動を取ったとします。その結果、飼い主から逃げることが出来たという結果を得ることが出来れば、再度同じ状況になった時に噛むという行動を繰り返すようになります。

あるいは、社会化不足という要因があり、窓の外を侵入者が歩いているという刺激が与えられた際に、窓の外に向かって吠えるという行動を取ったとします。その結果、侵入者は立ち去り、安全が確保出来たという結果を得ることが出来れば、再度同じ状況になった時に吠えるという行動を繰り返すようになります。

改善はしつけのイメージとは違う?

このように、1.先天的要因・後天的要因、2.きっかけとなる刺激・状況、3.行動の発生、4.行動の定着というプロセスを経て、問題行動は成立します。この中でも1.2.4.をコントロールすることが問題行動の改善には必要です。

しつというと、悪いことをしたら叱るという様なイメージだと思いますが、それは、4.の行動の定着の部分で、行動の結果罰を与えているということになります。罰についてはこちらの記事をご参照ください。

しかし、1.2.についてはコントロールできていませんし、また上の記事のとおり、効果を上げられるように罰を与えることは非常に難しいことになります。問題行動の改善には、しつけと言うイメージではなく、問題行動を分析し、要因を除去し、きっかけを除去し、行動の結果を変えるプロセスであると言う風に捉えたほうが改善しやすくなります。なんだか科学的な感じですね。しつけという精神論ではなく、科学の力も借りながら、問題行動は改善していくようにしましょう。

お気軽にお問い合わせください TEL 058-214-3442 受付時間:水~日 9:00‐17:30

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