柴犬は犬歯が刺さる程、強く噛むことが多い犬種です。ぎふ動物行動クリニックでも、柴犬の相談が最も多くなっています。柴犬は、遺伝的にオオカミに最も近い犬種と言われており、独特の行動を示します。そのため、「なぜ噛まれたか理由が分からない」という飼い主さんも多くいらっしゃいます。
柴犬の噛みつきで特徴的なのが、脳機能の異常が絡んだ問題行動が散見されることです。柴犬の中には、自分の尻尾を噛みちぎる犬も少なくありません。自分の尻尾を噛みちぎる行動は、明らかに異常行動であり、脳機能の異常が背景にあります。
異常行動を背景にした問題行動では、抗てんかん薬や抗うつ薬などの薬物療法が奏功する場合が非常に多く、積極的に多面的な可能性を疑っていく必要があります。
どんな「しつけ」「訓練」しても治らなかった柴犬でも、治癒する可能性が十分にあります。
目次
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緊急の相談対応について
触れない、近づけない、世話ができない、噛まれて縫った・骨折した等、緊急的な対応が必要な場合、メールか電話でご連絡ください。岐阜周辺であれば、往診します。直接うかがえない遠方の場合、当院のネットワークで、対応できる獣医師を探すなど対応法を検討いたします。一時的な預かりも含めて、どうにかする方法をご提案いたします。
ぎふ動物行動クリニックで対応できること
- 獣医行動診療科による診察・治療(来院型)
- 往診による対応(岐阜から300㎞圏内)
- 預かりによる行動治療
- オンライン行動カウンセリング
私共は、岐阜に拠点がありますが、通常の診察では、京都、滋賀、石川、三重、愛知、静岡からお越しいただき、ご相談いただいています。少し遠くても、ご相談いただければ、オンラインや預かりによるご支援も相談させていただきます。一刻も早くということであれば、まずは、お電話でも構いませんので、ご相談ください。
(ぎふ動物行動クリニック 獣医行動診療科認定医 奥田順之)
お気軽にお問い合わせください。058-214-3442受付時間 9:00-17:00 [ 月・火 除く ]
お問い合わせ血で出る程噛む犬「本気噛み」の原因と治療
院長奥田獣医師の著書
こちらもご参考に。
柴犬の特性と噛む原因と対応の概要
柴犬は葛藤状態に陥り、攻撃に転じやすい
柴犬が噛む原因として、葛藤に弱いという側面があります。
特に、トレーニングを受けていない犬が葛藤が処理できにくいのは、人間の子どもと同じです。人間は成長に伴い、子どもに見られるような感情的な行動は少なくなっていき、協調的な行動をとることができるようになります。しつけやトレーニングは、葛藤を処理し、飼い主と協調的な行動がとれるようにする力を向上させます。
また柴犬では、食事に関連して発生する攻撃行動が多くありますが、食事の与え方などによっても葛藤が強くなります。
あまりに強い攻撃、突発的な攻撃は、遺伝的な素因により、脳が葛藤状態を処理しにくい気質を持っていると考えられます。そうした場合には、薬物療法も選択肢であり、良く奏功します。
柴犬は、独立心が強く、自己主張が強い
また、柴犬をはじめとした日本犬は、人に頼ったり、依存する傾向が低く、独立心の強い犬種です。それが魅力でもあり、自分が決めたことを曲げにくい性質から、攻撃行動も起こりやすくなっています。
柴犬噛み癖&しつけ研究所では、柴犬をはじめとした日本犬について、噛む問題への対応を中心に、犬のしつけ・問題改善についてご紹介します。
脳機能の異常(異常行動)による攻撃行動
噛む行動は、本来、犬自身の身を守るため、犬自身の利益を守るために行われるの正常な行動です。しかし、そうした意図・目的にそぐわない場面で噛む行動が発生することもあります。
それは、犬が正常な判断を欠いており、正常な脳機能ではない状態にある可能性があります。
例えば、人間でも、うつ病のような精神疾患を発症します。犬でも、持続的なストレス環境下に置かれることで、そうした精神状態になる事があります。うつ病は脳内の神経伝達物質の枯渇や不均衡、脳神経細胞の死滅・萎縮などによって発生しますが、犬でも同様の変化が起こりえます。そのような場合、犬は正常な判断ができず、異常な行動をとる可能性があります。
正常行動か、異常行動かを判断することは容易ではありませんが、特に以下のような特徴がある場合、注意が必要です。
- 日によって表情が違い時に目が座ったような表情をする
- 普段は出てくるのに、たまにケージから出てこない日がある
- フードを出すとフードに対して唸る
- 寝ている時や、深夜に、突然唸りだす
- 尻尾に向かって唸る、尻尾を噛んで血が出る
- なんのきっかけもないのに、突然唸りだす
もちろん、噛む犬の中では、こうした異常のない犬の方が多いわけですが、それでも、以上のような異常があるかもしれません。あらゆる可能性を考慮に入れて、原因を考えていく必要があります。
心身の疾患に対しては、獣医師の出番
こうした問題に対しては、一般的なしつけだけでなく、獣医師による心身の疾患の診断と治療が必要となります。そうした心と行動の治療を専門的に行う診療科が「獣医行動診療科」です。
獣医行動診療科では、問題行動の診察を進める際に、第一に身体疾患の除外からスタートします。
例えば、お腹が痛くてケージから出てこないという状況があり、その時に飼い主が触ろうとすると噛むということがあります。関節などの痛みでも同様に、痛みから噛みつきが起こります。また、何のきっかけもないのに突然唸りだすなどの状況では、てんかんなどの神経疾患の関与があるかもしれません。
『噛み癖』=『しつけの問題』と考えがちですが、必ずしもそうではなく、まずは心身の問題を検討するということが大切です。
詳しくはこちらをご覧ください。
獣医師への相談は、一般の動物病院ではなく、行動学を専門に学んでいる、行動診療を行っている動物病院にご相談ください。
噛む行動に対する診断と治療の流れ

具体的にどうすればいいのか。獣医行動診療科では、大まかに以下の流れに沿って行動を減らしていきます。
身体疾患の除外
- 身体疾患がある場合は、身体疾患の治療を優先
問題行動の分析
- 噛む行動のきっかけや状況の分析(噛む前の状況)
- 噛む行動を増やしている対応・要因の分析(噛んだ後の状況)
- 噛む行動や付随する行動が異常行動か正常行動かの分析
問題行動への対応(環境修正・行動修正)
- 安全に暮らせる生活環境の設定
- ストレスとなっている生活習慣の改善
- 噛むきっかけとなる刺激の除去
- 噛む行動を増やしている要因の除去
- 飼い主が犬を安全に扱えるようになるためのトレーニング
- 噛む行動以外の行動を誘導するトレーニング
- 噛むきっかけとなる刺激に馴らすトレーニング
問題行動への対応(薬物療法・その他の療法)
- 異常な程度頻度・異常行動である場合、薬物療法
- ホルモンが関係している場合避妊去勢手術
飼い主自身で今すぐできること(当座の対応)

噛む唸るといった攻撃行動、中でも成犬で血を見るような攻撃行動では、素人の飼い主さんがネットの情報を信じて対応しても、改善の見込みは少ないと思います。お金はかかりますが、早い段階で専門家を探すのが最善だと思います。お近くの専門家をお探しの方は、以下のリンクをご確認ください。
第一に、飼い主と家族の安全対策
とはいえ、何かできることはあるでしょうか。
飼い主自身で対策を行う場合、安全対策が何より重要です。安全対策とは、攻撃行動を発生させない対応を取るということです。そして、飼い主自身の判断で行う安全対策はあくまでも一時しのぎであって、できるだけ早く専門家に相談してください。その前提で以下のような対策が考えられます。
撫で方の再考
撫でるときに噛むという犬では、撫で方を客観的に考えてみると良いでしょう。犬にとって嫌な撫で方になっていないかどうかが重要です。噛まれるということは、犬の嫌だという意思表示です。
「撫でてあげているのに噛まれる」と考えているのであれば、それは飼い主側の欲求の押し付けです。撫でたいのは飼い主さんで、犬は撫でられたいのかを考えてみましょう。
犬が低い姿勢で飼い主の下に入ってくるような場合や、すぐにお腹を見せる場合、撫でてほしいんだろうと考える飼い主が少なくないわけですが、実はこうした姿勢は劣位行動と言って、脅威を感じる相手に自分を小さく弱い存在であると見せる犬でよくみられる行動である可能性があります。
生活環境内に仕切りを設ける
ケージに近づくと唸る、フードを食べている時に近づくと唸るといった攻撃行動では、自分の居場所に飼い主が近づいてくること、フードを食べている時に飼い主が近づいてくることに対して警戒心を抱き、唸っている可能性が高い状況です。
人の動線と、犬の生活環境の間に間仕切りを設けることで、犬が脅威を感じる場面を減らし、攻撃行動を発生させにくくすることができます。
ハウスリード
リードの付け外しの際に噛まれる場合、リードを着けられて拘束されることに対して、嫌悪感を抱いている可能性が高いです。この場合、もしリードを着けることができるのであれば、つけっぱなしにしておくと、付け外しの必要がなくなり、噛まれる可能性が低くなります。
常にリードを着けておいて、散歩用と家用を散歩に行くときに付け替えるという対策も良いでしょう。リードが既についている状態であれば、付け替えの際に噛まれる可能性は低くなります。リードを付け替えた際は必ずおいしいオヤツを与えるようにしましょう。
一緒に寝ない
いっしょに寝ていて、寝がえりを打った時に噛まれるという状況があるようでしたら、やはり一緒に寝るのは控えたほうが良いでしょう。犬は犬の寝床で寝られるように、ハウスのトレーニングをする必要があります。ハウスのトレーニングは、専門家の指導を受けながら進めることをお勧めします。
守るものを与えない
ガムなど嗜好性の高いオヤツや、フードを守って、唸る噛むということも少なくありません。こうした場合、いくらその犬がガムやフードを好きであっても、守れるように与えてしまうと、危険を生じます。ガムであれば与えない、フードであれば手で与えたり投げて与えるなど安全に与えられる方法を模索していきましょう。
犬の咬みグセ解決塾
本サイトの内容がさらにブラッシュアップされ、本になりました。是非、ご購入ください!
第1章 犬のしつけの迷信と真実
第2章 犬の心の発達と問題行動
第3章 咬む原因は「脳」にあり
第4章 犬にとっての「ストレス」の正体
第5章 攻撃行動は如何に学習されるのか
第6章 「遊び」咬みの対応法
第7章 「本気」咬みの治療法
柴犬のしつけと噛み癖‐リンク集‐
柴犬の噛み癖の原因と対策
柴犬の問題行動としつけ相談例
クリニック・しつけ教室に通う柴犬の飼い主さんからの声
柴犬の噛み癖としつけの概要
攻撃行動以外の問題行動の種類と対応・しつけ
柴犬の問題行動改善としつけのポイント
柴犬しつけ&噛み癖研究所とは?

柴犬噛み癖研究所では、日本で最も咬傷事故が多いけど、とっても愛すべき存在である柴犬について、その行動と生態、そして柴犬特有のしつけについて研究し、飼い主さんと柴犬の共生をサポートする研究所です。
ぎふ動物行動クリニックでは、毎日のように柴犬の問題行動の相談を受けています。愛知県や岐阜県では柴犬の飼育数が他地域に比べて多い様です。土地があるので持ち家が多く、企業が元気なので所得が比較的高いので、犬の飼育率が高く、外で飼う方も含めて柴犬の飼育率が高いようです(正確な統計はないのです)。
ぎふ動物行動クリニックの診察の中で、柴犬の相談が非常に多い現状を日々肌で感じています。そして飼い主さんのサポートをする中で、しつけに関する勘違いや、柴犬の攻撃行動に対する迷信が事態を悪化させ、家族の身体と心を傷つけている現場に幾度となく出会いました。保健所への放棄をするか真剣に悩み、相談に来られた飼い主さんも少なくありませんでした。
私はこうした柴犬に対する迷信や、体罰を中心とした古いしつけの考え方ではなく、適切な情報を得られる機会を作ることで、多くの柴犬の飼い主さんが、愛犬を再び愛せるようにしていきたいと考えています。咬む咬まれる関係ではなく、信頼し合える飼い主さんと愛犬になって行くサポートをしたいと考えています。
そこで、私は『柴犬しつけ&噛み癖研究所』と題して、情報発信をするべく、本サイトを運営しています。
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