血が出る程噛むには理由がある

血が出る程噛む
血が出る程噛む

血が出る程噛むようになるには、それなりの理由があります。

本気噛みの発生は、脳機能の異常や、身体疾患、飼い主との関係、学習など、様々な要因により、発生しています。一部の非常に強度の攻撃行動では、正常から逸脱した心身の状態により、異常な敏感性、異常な衝動性、異常な不安感を示す場合もあります。

そのような、異常な状態で「しつけ」を行ったとしても、犬に対して強い負担になるだけでなく、しつけを行う家族やトレーナー等が怪我のリスクを負うことになります。

本気噛みの対応としては、第一にこれ以上の噛みつきを発生させないことが挙げられます。普通に生活する事すら難しいケースも少なくありません。日々の生活を送るためにも、薬物療法による症状の緩和は治療の選択肢に入れておくべきです。

薬物療法とは

犬の噛みつき/攻撃行動に対する薬物療法は、犬が噛む原因となる情動(感情の揺れ動き)の緩和を行うことを目的に、抗うつ薬や抗不安薬を用いて行われます。

動物にも不安、恐怖、葛藤などの情動があり、こうした情動の変化が行動に影響を与えます。強い不安や恐怖は、交感神経を活性化させ、覚醒状態をもたらし、小さな刺激に対しても過敏に反応するようになります。

薬物療法により、犬自身が、自分の情動をコントロールしやすい状態にすることができ、結果として、犬が噛む、飼い主が噛まれるリスクを下げることができます。

使用する薬剤

  • 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(フルオキセチン/セルトラリン)
  • セロトニン遮断再取り込み阻害薬(トラゾドン)
  • 三環系抗うつ薬(クロミプラミン)
  • ベンゾジアゼピン系抗不安薬(ジアゼパム/アルプラゾラム)
  • 抗てんかん薬(フェノバルビタール/ガバペンチン)
  • 漢方薬(抑肝散/大柴胡湯/柴胡加竜骨牡蛎湯/黄連解毒湯)  他

薬物療法を実施するためには?

薬物療法を実施するためには、問題行動の診察を行っている獣医師の診察を受診することが必要です。日本獣医動物行動研究会では、行動診療を行っている獣医師の認定医制度を行っています。獣医行動診療科認定医の診察を受けることが一番確実な選択になります。

獣医行動診療科認定医紹介 | 日本獣医動物行動研究会

獣医行動診療科認定医とは 獣医動物行動学(動物行動学および臨床行動学)に精通し,行動診療を行うために必要な専門知識と技術,十分な診療経験を有しており,獣医行…

ただ、数が少ないということもあり、認定医でなくても、行動診療を行っている獣医師はいますので、そうした獣医師の診察を受けることも有効な選択肢です。

「獣医行動診療科 ○○県」

などで検索いただくと、近くに動物病院があればヒットします。

近くに行動診療科がない場合

近くに行動診療科がない場合は、一般の動物病院に協力してもらって、治療を行う必要があります。

当院ではオンライン行動カウンセリングを行っていますが、法律上、直接診察していない動物に診断と処方を行うことはできません。そこで、当院のオンライン行動カウンセリングを行いながら、当院から地元の動物病院に連絡を入れ、協力を得て、治療を行っていくという形も考えられます。

一度、往診で直接診察できれば、診断と薬の処方は可能です。以後の診察はオンラインで継続することができます。