犬が飼い主を噛む理由は様々です。
成犬の「本気噛み」の場合、多くは物を守る・身を守るための防衛的な理由が中心です。
- ソファで寝ている犬に近づいたら噛まれた(居場所を守る)
- 頭を撫でたら噛まれた(上から手を出す事に圧迫感を感じた)
- 落としたオヤツを拾ったら噛まれた(価値の高い食べ物を守る)
等理由は様々です。
一方で、特に血が出る程、縫うほどの傷になる場合、必ずしもこういった「しつけの問題」だけではなく、身体の疾患や、脳機能の異常でも、攻撃的な噛みつきが発生することがあります。
本記事では、成犬の深刻な咬みつきの原因と治療について解説します。
身体疾患や脳機能の異常が疑われる噛みつきの例
- 何のきっかけもなく突然噛む
- ある日を境に急に噛むようになった
- 日によって性格が違う
- 犬歯が刺さる/縫うレベルの噛みつきがある
- 尻尾を噛む、手をなめ続ける等、常同行動を伴う
- 唸りが止まらない
- 嘔吐・下痢・痒み等を併発する
これらの症状は、特に注意が必要です。
身体的な問題や脳機能の問題がある場合、「しつけの問題」と思って対応しても、改善しない場合も少なくありません。
ぎふ動物行動クリニックによる緊急相談対応(全国対応)
ぎふ動物行動クリニック(岐阜県岐阜市)は、全国で唯一、獣医行動診療科認定医が2名、CPDT-KA資格を持つトレーナーが2名在籍する、行動治療専門の動物病院です。
全国から寄せられる相談に対応するために、通常の来院での診察だけでなく、往診対応(遠方でも応相談)、オンライン行動カウンセリング、預かりによる行動治療を実施し、飼い主と犬のサポートを行っています。
攻撃行動が強すぎて、触れない、近づけないといった相談もお受けしております。
私共は、岐阜に拠点がありますが、全国からご相談いただいています。
まずは、お電話でも構いませんので、ご相談ください。
(ぎふ動物行動クリニック 獣医行動診療科認定医 奥田順之)
お気軽にお問い合わせください。058-214-3442受付時間 9:00-17:00 [ 不定休 ]
お問い合わせ動画による解説
子犬が噛む理由
子犬の噛み癖については、こちらの記事で詳しく解説しています。
子犬のひどい噛み癖のしつけ方|ぎふ動物行動クリニック
【獣医師解説】子犬の噛み癖のしつけは、叱って止めるはNG。子犬が噛む原因は『興奮』にあります。噛む行動をやめさせるのではなく、興奮を抑える予防的対応が必要です。
成犬が噛む理由
成犬の場合、遊びや関心を引こうとして噛む行動は徐々に少なくなる一方、防衛的な理由で噛みつくことが多くなっていきます。具体的には以下のような理由が直接的な噛む原因になる可能性があります。
犬の噛みつきの相談事例
ぎふ動物行動クリニックでは犬の噛みつき/攻撃行動について以下のような相談をいただいています。
血が出る程噛む理由
血が出る程噛むようになるには、それなりの理由があります。通常の身体・精神の状態で、通常の関係性の場合、血が出る程の噛みつきにはなりません。
1.体の病気や痛みがある
まず、身体的な疾患(痛みのある疾患、不安を強める疾患、脳神経に影響をおよぼす疾患)があれば、そうした痛みや不快感が噛む理由となっていることがあります。
身体的な痛みが原因で噛むことを疼痛性攻撃行動と呼びますが、痛みがあることに気が付かなければ「なぜ噛むのかわからない」という状態に陥ってしまいます。身体的異常があれば、身体の治療を優先して実施します。
獣医行動診療科では、噛む行動の裏に身体的な異常がないか精査し、様々な所見から身体疾患の可能性が疑われる場合は、かかりつけ医や他の専門科と連携して精密な検査を行います。
痛み・不快感
身体のどこかに痛みや不快感がある場合、その部分を触られたくないという気持ちから、噛むことがあります。急に噛むようになった場合などは、身体的な異常が隠れている可能性が強くなります。
神経や感覚の異常
神経の疾患や、感覚の異常により攻撃が発生することがあります。子犬であれば、先天的な神経疾患が疑われますし、老犬であれば目が見えにくくなった、耳が聞こえにくくなったという感覚異常から不安が増大し噛む行動が増えることがあります。
犬の認知症(認知機能不全症候群)
老犬では、犬の認知症(認知機能不全症候群)により噛む場合もあります。犬の認知症では感情の起伏が大きくなったり、身近な人を認識できなくなるという症状もあり、そうした症状を原因として噛む行動が発生することがあります。
てんかん(焦点性発作)
一部のてんかん(焦点性発作)では、行動の異常がみられることが知られています。人間であれば、突然、場にそぐわないような怒り方を繰り返す場合、てんかんによっておきる感情障害や発作のことがあります。
人間と同じように、てんかんにより怒りっぽくなり攻撃する犬もおり、実際に、抗てんかん薬による治療が奏功する場面が多くあります。
2.脳機能が異常な状態にある
正常行動とは、その動物が置かれた環境に対して、適応的な行動を指します。その動物が生き、子孫を残すために必要な行動のことですね。そのため、自分の身を守るための行動は適応的な行動です。身を守るために咬む行動は正常行動です。
一方、異常行動は、正常な範囲を逸脱した程度や頻度の行動、あるいは、本来その動物が行わない行動を指します。例えば、日によって目が座ったようになり、突然尻尾を追いかけまわし、何の刺激もないのに突然吠えだす、さらにその時に近づくと噛まれるというような行動は、異常行動の可能性が高いでしょう。また自分の身体を傷つける、尻尾を咬みちぎるような行動は、明らかな異常行動です。
異常行動がある場合、脳機能が正常な状態を逸脱している可能性があります。人間でいえばうつ病など精神疾患の状態です。こうした状態では、薬物療法を併用することが治療に有効に作用することがあります。こうした精神状態が噛む理由の背景にある場合があります。
噛みつきと併発することのある異常行動の例
- 特になんの刺激もないのに、不安を示し続ける
- 自分の尻尾をかじってしまう、噛み切ってしまう
- 特定の場所をなめ続ける
- 日によって性格が違う/時々目が座っている日がある
- 特定の場所を見つめて動かないことがある
- 何もないのに、ハエを捕まえるように、口をパクパクさせることがある
これらの異常行動が伴う場合は、必ず獣医師(獣医行動診療科)の診察を受けるべきです。
3.経験による嫌悪感・恐怖心の増幅
- 無理やりブラシをする
- 無理やり足ふきをする
- 無理やり物を取り上げる
など、犬に対して、無理やり○○するという経験は、飼い主に対して嫌悪感・恐怖心を関連付けます。子犬のうちは、身体が小さく力も弱いので、無理やりにケアをすることもできますが、成長すると、身体も大きくなり本格的に抵抗するようになっていきます。
いったん関連づいた嫌悪感や恐怖心を取り除くには、相当の時間を要します。嫌がるようになってから、オヤツを使っても遅いです。オヤツを食べることの価値よりも、嫌なことから逃げることの価値の方が圧倒的に高くなり、オヤツを見せても見向きもしない状態になります。
嫌悪感や恐怖心を関連付けていない子犬の段階で、「無理やり○○する」のではなく、「オヤツを使いながら馴らす」ことを実践することが予防になります。
4.体罰
- マズルをつかんで、キャンというまで放さない
- 床に仰向けに押さえつけて怒鳴る
など、体罰的なしつけを行っている場合も、飼い主に対する攻撃性を高める要因になります。犬が体罰を行った相手に対して、恐怖心や防衛心から強く噛むというだけでなく、体罰を行った相手には敵わないと感じ、別の対象に対して憂さ晴らし的に噛むこともあります。
例えば、子犬の遊び噛みを考えてみましょう。身体の大きいお父さんが体罰を行っている場合、お父さんに噛めば嫌なことが起こると理解しており、お父さんには噛もうとしなくなるかもしれません。一方で、お父さんに噛めない分、その欲求が子どもたちに向き、余計に噛むようになることがあります。
飼い主さんが体罰を行うことは、百害あって一利なしです。
5.経験による噛む行動の強化(負の強化)
「無理やり○○しようとしたが、噛まれて断念した」という場合、犬は「噛めば嫌なことが終わる」と学習して、より強く、より頻繁に噛むようになります。
犬は、嫌なことを避けようとして噛みます。「噛めば嫌なことが終わる」という状況は、犬にとっての成功体験を積ませることになります。
こうした、噛むという行動をとることで、結果として嫌なことを避けることができた場合に、噛む行動が増えていくことを、「攻撃行動の負の強化」と言います。
6.強い葛藤状態
- 目の前に価値の高いフードがあるのに、飼い主に見られて安心して食べられない
- 飼い主に理不尽に叱られ、ハウスに入ることを強要された
などの場面では、犬は「食べたいけど食べられない」「ハウスに入りたくないけど、入らなければならない」といったどっちつかずの葛藤状態に陥ります。強い葛藤は攻撃行動の引き金になります。
飼い主だけ噛む理由
トリマーさんや、獣医さんには噛まないのに、飼い主にだけ噛むパターンでは、飼い主に対する嫌悪感から噛んでいると考えるべきでしょう。飼い主との関係性がよければ、飼い主だけ噛むということは起こりにくいでしょう。
飼い主が犬から嫌われる主な理由は以下の通りです。
1.ボディランゲージを読み取れていない
先日相談では、小型犬の飼い主さんが膝の上であおむけに抱っこした状態で前足を拭いていたら噛まれたというもので、飼い主さんとしては「突然噛んできたのでなぜ噛まれたか分からない」とおっしゃっていました。
カウンセリング中に同じ姿勢をとっていたので、様子を見ると、同じ姿勢で、犬は明らかに顔を逸らし、身体を硬直させ、嫌悪感を抱いているボディランゲージを示していました。犬にとっては、「変な体勢で抱っこされたくない、逃げたい」という理由で、噛んでいたわけです。
ボディランゲージが読めない、読み間違うことは、犬に噛むきっかけを与えます。また、繰り返しそうしたことが繰り返されると「この飼い主とは付き合いにくい、嫌なことをしてくる」という認識を犬に抱かせることになります。
2.飼い主の思い込み
- 犬は、撫でられてもおとなしくしているもの
- 犬は、抱っこされるのが好きなはず
- 犬は、従順な生き物
- 犬が人に噛むなんて、犬が一方的に悪い
- オヤツで釣るなんてもってのほか、犬は従って当たり前
こうした意識を持っていると、意図せず抑圧的に接してしまい、犬の気持ちを無視した対応をとってしまうことになります。犬は、必ずしも抱っこが好きではないですし、必ずしも従順でもありません。そうした犬の本来の姿を認めることが、関係性改善の第一歩です。
3.撫ですぎ
飼い主の思い込みの中でも根深いのが「犬は撫でられたいと思っているに違いない」というものです。
本当は飼い主がスキンシップをとりたいという欲求があるにも関わらず、「犬を撫でであげなきゃかわいそう」と思って、撫ですぎるのはよくありません。犬は飼い主に撫でられる、抱っこされることが鬱陶しく感じ、噛むようになります。
4.適切なおやつを用いていない
噛む行動に対して、何かしらのしつけを行おうとするときに、価値の低いオヤツを用いることは、噛む危険性を高めます
「あまり、いいオヤツを使うべきじゃない」
という思い込みによって、価値の高いオヤツを用いることを控えると、トレーニングは進んでいきません。
逆に「こんなにいいオヤツがもらえるんだ!」「もっと飼い主さんと一緒に何かしたい!」と思ってもらえるようなオヤツを用意することは大切です。
5.ニーズを満たせていない
運動のニーズや、遊びのニーズ、関わりのニーズを満たせていないと、犬は落ち着きにくくなり、結果として攻撃的になる場合があります。
6.体罰的なしつけ
言わずもがなですが、体罰的なしつけは、飼い主との関係性を崩壊させます。
噛むリスクを高める生活習慣
1.運動が足りない
噛む行動の直接的な原因ではないものの、運動量が足りないことは、噛む行動を発生させやすくする要因になります。
十分に運動して、しっかり休むというリズムを作ることは、自律神経のバランスを整えます。特に朝日を浴びながら運動することは、概日リズムを作るうえで重要な要素です。
どんな犬種でも、健康な犬なら、1日2回、1回あたり30分程度の散歩は必須です。運動量の多い犬種では、1日2回以上、1回あたり60分程度の運動が必要でしょう。
獣医行動診療科では、ヒアリングにより、運動量・活動量が足りているかどうか調べ、適切な運動量や活動の仕方について指導します。
2.噛まれやすい生活環境
噛む行動の直接的な原因ではないものの、噛む行動を発生させやすい環境があるかどうかを確認することは、噛む行動の原因を考え、治療プランを考える上で重要な要素です。
例えば、犬の寝床が定まっておらず、ソファや床で寝ている場合、犬は安心した寝床がなく、家族が近くを通ると唸るという行動を示しやすくなります。この場合、サークルを設置して、犬の行動範囲と、飼い主の行動範囲を分けることで、噛まれにくい環境を作ることができます。
獣医行動診療科では、ヒアリングにより、噛まれやすい環境がないかどうか調べ、犬も飼い主も落ち着いて過ごせる環境づくりについてアドバイスします。
3.生活が不規則/夜が遅い
生活が不規則であったり、夜寝る時間が遅い家庭では、犬の生活リズムが崩れやすく、犬が休みたい・眠りたいと考えている時に、飼い主さんが犬をかまってしまうことで噛むリスクが高まります。
相談の中でよくあるのは、犬が噛む時間帯がだいたい決まっているという状況です。時間帯が決まっているパターンでは、夜9時以降、あるいは、夜10時以降に噛まれるということが多いです。
大抵は、犬が寝ている時に触ろうとした、犬が寝ているソファに近づいた、犬がサークル内にいるときに撫でようとしたといった、犬が休みたいと思っている状況で、人が手を出そうとして噛まれているという状況になっています。
どんな動機で噛むのか
獣医師が治療を行う上では、当然診断を行う必要がありますが、問題行動の診断には、問題となっている行動の動機づけが何か?という、「動機づけ分析」がその中心となります。「動機づけ」とは、行動を始発、方向付け、推進、持続させる過程や機能の総称のことです。要するに、犬が噛む行動を起こす目的です。
この記事では、どのような動機づけで噛む行動が発生するのか、11種類の分類を紹介します。
葛藤性攻撃行動
葛藤性攻撃行動は、主に飼い主や家族など身近な人との関りの中で生じる葛藤状態を起因として発生します。ぎふ動物行動クリニックでは、血が出る程噛む犬では、葛藤性攻撃行動と診断する犬が最も多い状態です。
葛藤とは、両立しない複数の欲求が存在する際に、そのどちらも選ぶことができない立ち往生状態のことを指します。例として、犬がくつろいで寝ているところに飼い主が接近し犬を撫でようとしたとき攻撃が発生したという場面であれば、「このままくつろいで寝ていたいが、寝たままでいて撫でられるのは嫌だ」という両立しない欲求による葛藤が生じています。
葛藤性攻撃行動が発生する一般的な場面は、犬を見つめる、寝ている犬に近づく、犬を長時間撫でる、犬を叱る、犬が行きたい場所に行かせないようにするといった場面です。飼い主との関りの中で葛藤を生じ、飼い主の動きを攻撃によって制御することによってその葛藤から逃れようとして発生します。
出血するほど強く噛む場合は、特に強い葛藤状態にあり、犬自身自分の情動をコントロールできていない状況で、噛みつきの力が抑制されない状況で起こります。
葛藤を生じる場面で発生するため、尻尾を追って回る、首を搔く、左右にペーシング行動をするといった他の葛藤行動と併発することもあります。飼い主や家族による一貫性のない関わり方や、不適切な罰の使用、犬の要求的な態度に応え続けることは、葛藤性攻撃行動を助長します。
また、噛むこと、唸ることで、飼い主を追い払うことができるなど、葛藤を生じるような状況を打開できると学習することで、より攻撃行動が強くなることもあります。
恐怖性/防御性攻撃行動
恐怖性/防御性攻撃行動は、恐怖対象となっている家族や他人が近づく場面や、家族や他人が犬を捕まえようとする場面など、犬が威嚇されている状況を確認した際に発生します。
血が出る程噛むような状況になる例としては、知らない人に対する恐怖心がある外飼いの犬に対し、知らない人が触ろうとして、その恐怖心から噛まれるということが多くあります。
家族、他人、他の動物、物など様々なものが恐怖対象となりえます。例えば、棒などの物で叩かれる恐怖体験を経験した犬では、恐怖体験に関連づいた物を見るだけで、攻撃行動を示すことがあります。
恐怖性/防御性攻撃行動は、頭を低くする、身体をかがめる、尾を巻き込む、耳を後ろに引く、物陰に隠れる、逃げる等の、恐怖や服従を示す行動を伴って発生します。また、脱糞・脱尿・震え・頻呼吸・頻脈といった、交感神経興奮に関連した生理学的徴候を伴います。
攻撃行動が恐怖対象を退けるために有効であることを学ぶことで、恐怖や服従を示す姿勢から、より攻勢的な姿勢に変化することがある。
縄張り性攻撃行動
縄張り性攻撃行動は、犬が縄張りと認識している領域に、身近な家族と認識している者以外の人や動物が侵入した際に発生します。犬が縄張りと認識している領域は、生活している家屋とその周辺だけでなく、飼い主の車の中や、犬自身や飼い主の周囲の空間を縄張りとして認識する場合もあります。
縄張り性攻撃行動の場合、攻撃対象が近くに来る前に吠えることで追い払おうとすることから、必ずしも血が出る程噛むような状況にはなりにくいです。
見晴らしの良い窓際など、家の近くを通る人・動物・物が良く見える位置に自由に行き来できる状態で生活している犬に発生しやすいです。多くの場合、犬が吠えることで侵入者を追い払うことができるため、強化学習が生じて、行動が定着していく傾向にあります。若年期から性成熟を迎えるころにかけて発症し定着することが多く、未去勢のオス犬に発生しやすいといわれています。
所有性攻撃行動
所有性攻撃行動は、犬が所有・占有している物が奪われると認識した際に発生します。所有性攻撃行動の原因となる物は、おもちゃ、飼い主の衣類、ティッシュなどのゴミ、ケージ、犬が寝床にしているマット等が挙げられます。犬にとって価値の高い物であればある程、攻撃が発生しやすいといえます。
噛みつきの相談の中で、「はじめて血が出る程噛んだ状況」をお伺いすると、「5か月の頃に物を守って噛んだ時に血が出たと思う」というような回答が多く、初めて強く噛む原因となりやすい攻撃行動です。
所有性攻撃行動のある犬では、大切な物を持っている時に、飼い主や他人が近づくと、口で咥える、前足で抑える、牙を見せる、唸るといった行動を示します。飼い主や他人が犬に近づくだけで、跳びかかり咬むこともあります。さらに、取り上げようとすると、歯を当てる、咬むなど、より強い攻撃行動に発展します。犬が攻撃行動を示すことで物を守る事が出来た経験をすると、負の強化の学習から攻撃行動が強化されます。
食物関連性攻撃行動
食物関連性攻撃行動は、犬の近くに食物がある状態で、犬がその食物を奪われると認識した場面、もしくは、その食物を奪わなければならないと認識した場面で発生します。
具体的には、フードを入れたフードボウルに飼い主が近づく場面、犬用ガムを与えている時に飼い主が近づく場面、飼い主が食物を持っている場面、犬の近くの床に落としたフードを拾おうとした場面などで発生します。犬にとっての食物の価値の高さが攻撃行動の頻度や程度に影響します。食物を口で咥える、前足で抑える、牙を見せる、唸る、跳びかかる、牙を見せる、歯を当てる、咬むといった攻撃行動を示します。
食物関連性攻撃行動は、柴犬での発生が圧倒的に多く、生後4~6か月の頃から生じていることが多くあります。お皿からこぼれたフードを渡そうとした場面や、すぐに食べきれないガムなどのおやつを与えた場面で発生し、攻撃が発生すれば流血することも少なくありません。
食物関連性攻撃行動を示す犬では、食物の存在に対して緊張がみられることが多くあります。特に飼い主や同居犬などが近くにいる際は、緊張が強くなります。フードボウルに入ったフードをすぐに食べようとせず、しばらく唸ってから食べ始めるという行動がしばしばみられます。また、攻撃行動と併発して尾追い行動をはじめとした葛藤行動がみられることがあります。食物を食べたいけど、唸ってないと奪われるかもしれないといった葛藤が生じていると考えられます。
同種間攻撃行動
同種間攻撃行動は、身近な犬同士、あるいは見知らぬ犬に対して発生する攻撃行動です。犬に対して、吠える、唸る、跳びかかる、牙を見せる、歯を当てる、噛むといった攻撃行動を示します。
身近な犬同士の攻撃行動は、飼い主からの関心や休息場所など、競合する資源を奪い合うことで発生します。攻撃を繰り返すことで、互いの存在と嫌悪感が関連付けられ、競合する資源がなくても、互いの姿を見るだけ、あるいは、互いの声を聞くだけで攻撃行動が発現するようになることもあります。
見知らぬ犬同士の攻撃行動は、散歩中に発生する他の家族の犬とすれ違い等、見知らぬ犬に出会う場面で発生します。特定の大きさの犬、特定の犬種の犬のみに攻撃行動を示す場合も少なくありません。追いかけられる、吠えられるなどの、見知らぬ犬から攻撃行動を受けた経験をすることで、見知らぬ犬に対して嫌悪感が関連付けられ、攻撃行動を示すようになります。
転嫁性攻撃行動
転嫁性攻撃行動は、ある攻撃対象を攻撃できない時に、犬の近くにいる無関係な人や動物や物に対して発生する攻撃行動です。例としては、家の中で飼育されている犬が、窓越しに家の前を通る他人に対して縄張り性攻撃行動を示している時、近づいた飼い主や同居動物に対して攻撃行動を示すといった状況が挙げられます。
血が出る程噛むような状況は、散歩中に、犬がほかの犬に吠えている(同種間攻撃行動)ところを、飼い主が制止しようとして、足を噛まれて出血するというパターンが多いです。
このように、転嫁性攻撃行動には原発的な攻撃行動が存在します。窓やフェンスといった攻撃対象が見えるものの直接攻撃できない生活環境や、散歩中のリードによる行動範囲の制限がある場合に発生しやすいです。それらの制限がなければ本来の攻撃対象を攻撃してしまうでしょう。
遊び関連性攻撃行動
遊び関連性攻撃行動は、主に子犬~若齢の犬で発生する、遊びに関連した攻撃行動です。遊び欲求が満たされていない犬が、飼い主の関心を引くために、服やスリッパを引っ張る、跳びつく、唸る、歯を当てる、咬むといった行動を示します。また、引っ張り遊びなどの遊び行動がエスカレートし、飼い主に対する攻撃行動に発展することもあります。
攻撃行動に対して飼い主が犬を興奮させるような対応をとると、攻撃行動によって、より刺激の強い遊びができたと学習して、攻撃行動が強化されます。一方、飼い主が無視しようとしても、完全に無視することは難しいでしょう。犬が弱く咬んでいる時は無視できるものの、咬む強さが強くなるにつれて無視できなくなり何らかの反応を返してしまうという対応を取ると、犬は弱く咬んでも無視されるが強く咬めば反応が得られることを学習し、咬む力が強くなっていきます。
遊び関連性攻撃行動でも、噛む力が強くなった場合や、子犬の歯がとがっている場合には、血が出る程噛むようなことも少なくありません。
捕食性攻撃行動
捕食性攻撃行動は、攻撃対象となる動物を捕食するために行われる攻撃行動です。捕食行動であるため、注視、流延、しのび寄る、低い姿勢などを伴って発生します。他の攻撃行動とは異なり、唸る、吠えるといった威嚇的な行動や、他の情動的変化は見られないのが特徴です。
鳥や猫といった小動物や赤ちゃんを対象に発生します。捕食性攻撃行動では、必ずしも捕食行動の連鎖すべてが発生するわけではなく、多くは一部のみが発生しています。つまり、攻撃が成功して攻撃対象を捕まえた場合、攻撃対象に止めを刺す場合もあれば、刺さない場合もあり、捕まえるだけということもあり得ます。また、時には、対象を食べることもあります。
捕食を前提とした攻撃行動であるため、攻撃対象を血が出る程噛むことはよくあり、場合によっては殺してしまうこともあります。
母性攻撃行動
母性攻撃行動は、妊娠中、偽妊娠中、哺乳中の雌犬が、子犬や子犬と認識している物に脅威が迫ったと認識した際に発生する攻撃行動です。
母性攻撃行動は、出産前や偽妊娠時のホルモン変化によっても発生するため、子犬がいなくても発生すします。そのため、ぬいぐるみやクッションなど子犬でない物を守る場合や、守る物がなくても発生する場合もあります。偽妊娠時に発生する母性攻撃行動に伴って、巣作りに関する行動や、息みなどの分娩行動、乳汁の分泌などの、正常妊娠と同様の反応が見られることがあります。
子犬を守るための攻撃であるため、攻撃対象を退けるために、非常に強い攻撃となることがあります。攻撃を受ければ、流血となると考えてよいでしょう。
疼痛性攻撃行動
疼痛性攻撃行動は、身体のいずれかの場所に痛みがある場合に、犬が触られることで痛みを感じる、あるいは、痛みの発生を予測して、それを避けようとして発生する攻撃行動です。痛みの発生場所に応じて、爬行が見られる、うずくまって動かないなどの行動が伴うことがあります。
痛みに伴って発生するため、行動学的アプローチを行っても治療にはつながらないことが多く、原発的な痛みを取り除く必要があります。
特発性攻撃行動
あらゆる検査を行っても医学的疾患が見当たらず、攻撃行動の発生が予測不能で行動の文脈が不定で、詳細なヒアリングを行っても行動のきっかけとなる刺激や動機づけが不明であり、他のいずれの攻撃行動にも当てはまらない攻撃行動を指します。イングリッシュ・コッカー・スパニエルやイングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの激怒症候群もこれにあたると考えられています。
噛む行動を増やす学習
噛む・唸るきっかけとなる刺激が繰り返されている
噛みつきや唸りを発生させるような刺激が繰り返されていると、噛む・唸るという行動はどんどん定着していきます。
犬が噛んだ状況を精査し、毎回撫でようとしたときに噛んでいるのであれば、「撫でる」という刺激が噛むきっかけとなっている可能性が高いでしょう。それがわかっているにも関わらず「撫でる」行為を続ければ、犬は噛む行動を繰り返すことになります。
「撫でても噛むときと噛まないときがある」という話もよく聞きます。しかし、より精査すると、「足元にいる犬を撫でる場合は噛まない」が、「ソファで寝ている犬や床で寝転がっている犬に接近して撫でる場合は噛む」など、噛みつきを発生させる条件が見つかるかもしれません。
犬の噛みつきでは、身体や脳の異常がなければ、飼い主さんが何かのきっかけを作っていることがほとんどです。獣医行動診療科では、第三者の立場から細かく噛む・噛まれる前後関係をお伺いすることで、隠れたきっかけ、噛みつきの発生条件を見つけていきます。
噛むことで、犬にとって良い成果が得られている
噛むことにより、犬が好ましい結果を得ているならば、噛む行動は強化され繰り返されていきます。
一番多いのは、「噛むことで嫌なことが終わる」というパターンです。嫌なことが終わることは、犬にとっては良いことですから、報酬になります。これを攻撃行動の負の強化と呼びます。
別の見方としては、「犬は、噛むことで、飼い主の行動をコントロールしようとしている」という見方もできます。この場合、犬は、「噛むことにより飼い主をコントロールできた」、「飼い主を思うように動かすことができた」という状態が報酬になっていると捉えることができるでしょう。
例えば、飼い主が、犬に唸られたときに、なだめる為におやつを与えている場合、犬はうなることで、おやつを引き出そうとするかもしれません。
獣医行動診療科では、犬が噛むことによりどのような報酬を得ているのか、あるいは、得ていないのかといった行動の状況を分析し、飼い主に伝えることで、飼い主と犬の関係づくりのサポートを行います。
噛みつき治す具体的方法
血が出るほど噛む「本気噛み」は、一筋縄ではいきません。
血が出る程、犬歯が刺さる程、何針も縫うほど噛む犬は、正常な精神状態を逸脱している可能性があります。しつけの範疇を超えて、「行動治療」の範疇に入っていると考えたほうがよいでしょう。
「本気噛み」への対処法8選
以下の記事で、噛む犬の行動を治すための方法について、取り組むべき8つの方法をまとめています。
犬の「本気噛み」をやめさせる対処法8選【獣医行動診療科認定医が解説】
本気噛みは、犬歯が刺さり出血を伴う怪我になる場合も。安全対策を最優先しましょう。生活空間を隔て、犬と一定の距離をとった生活を。身体疾患の除外、状況に応じ、薬物…
血が出る程噛むような噛みつきの場合、飼い主だけでどうにかしようとしないことが大切です。専門家の力を借りましょう。悩みを真剣に話し、状況を整理するだけでも改善につながることがあります。お気軽にご相談ください。
行動診療の受診(問題行動カウンセリング)
ぎふ動物行動クリニックでは、問題行動の相談・治療を行っております。
家族の身に危険がある、犬の身に危険がある(尻尾を咬みちぎってしまっている)等、緊急であれば、一度お電話(058-214-3442)ください。
お気軽にお問い合わせください。058-214-3442受付時間 9:00-17:00 [ 不定休 ]
お問い合わせオンライン行動カウンセリング
緊急でない場合は、メールでお問合せください。オンライン行動カウンセリングも実施しておりますので、しっかり時間を取って相談したいという場合にご活用ください。内容については、詳しくはお問合せください。
往診
ぎふ動物行動クリニックでは、基本的には来院型で診察を行っていますが、犬を移動させることができない、触れない、リードがつけられないといった場合には、往診による対応を行っています。
ぎふ動物行動クリニック
ぎふ動物行動クリニックは、血が出る程噛む、吠える、ひっかく、自傷行為など、問題行動の診察を専門に行う動物病院です。日本で唯一、獣医行動診療科認定医が2名在籍して…
長期預かりによる行動治療
ぎふ動物行動クリニックでは、遠距離で定期的な診察を行えない場合や、深刻な噛みつきで飼い主さんご家族の身の危険がある場合など、預かりによる行動治療を行っています。
臨床行動学に基づき、動物の福祉に配慮した、預かりでの行動治療を行います。詳しくはお電話もしくはメールにてお問合せください。
犬の預かりトレーニングによる問題行動治療|ぎふ動物行動クリニック
ぎふ動物行動クリニック/ドッグ&オーナーズスクールONELifeでは、家族への攻撃行動をはじめとした、強度の問題行動に関して、預かりによるトレーニング(行動治療)を実…
薬物療法
非常に強い、危険度の高い噛みつきの場合や、異常行動を伴う攻撃行動は、薬物療法も選択肢の一つとなります。
犬の本気噛みの治療‐薬物療法の利点としつけとの関係|獣医行動診療科認定医が解説
Contents 身体疾患や脳機能の異常が疑われる噛みつきの例子犬が噛む理由成犬が噛む理由犬の噛みつきの相談事例血が出る程噛む理由飼い主だけ噛む理由噛むリスクを高める生…
動物の精神科医が教える、犬の咬みグセ解決塾
私の著書『動物の精神科医が教える、犬の咬みグセ解決塾』は、犬の噛む行動の全体像を把握することに役立つ一冊です。是非ご一読ください。
私共は、岐阜に拠点がありますが、通常の診察では、京都、滋賀、石川、三重、愛知、静岡からお越しいただき、ご相談いただいています。少し遠くても、ご相談いただければ、オンラインや預かりによるご支援も相談させていただきます。一刻も早くということであれば、まずは、お電話でも構いませんので、ご相談ください。
噛まれたときの初期対応
噛まれてしまった場合には、まずはそれ以上噛まれないことを考えて、逃げるようにしましょう。
無理に立ち向かって、叱ろうとすると余計に噛まれて飼い主さんの傷が重症化してしまう危険性もありますし、犬に余計な恐怖を与えて、飼い主と犬の関係性を悪化させてしまいます。
まずは距離をとる
噛まれた後は、飼い主も犬も気が動転してパニック状態になっていることが多いでしょう。互いに触れ合うことのない距離まで離れるようにしましょう。リードがついていれば、リードで係留し、距離をとりましょう。リードがついていない状況であれば、犬がいる部屋から出て、犬と触れ合わないようにしましょう。
応急処置
噛まれてしまった場合、傷に犬の口腔内の細菌が入り込むことで化膿してしまう危険性があります。応急処置としては、傷をしっかり洗い、アルコール等の傷に用いる消毒剤があれば消毒を行ってください。ガーゼなどで止血し、すぐに病院を受診し適切な処理を受けるようにしてください。
噛まれない環境づくり
一度噛ませてしまうと、同じ状況で同じように噛むようになることが多くあります。飼い主さんを守るためにも、犬を守るためにも、不用意な接触を繰り返さないような生活環境を作ることが大切です。
例えば、家族が落とした物(ゴミ、ティッシュ、食べ物等)を守って噛んだ場合、同じような状況を作らないためには、犬の行動範囲を制限したり、人が犬の生活スペースに物を持ち込まないようにするといった、「そもそも、守るものを与えない」状況を作る必要があります。
専門家への相談
非常に強い噛みつきが発生した場合、自分たちだけで解決しようとせず、獣医行動診療科の獣医師をはじめとした専門家に、必ず相談するようにしてください。
対策は、それぞれの状況、それぞれの家庭によって違います。インターネットでは、一方的に発信されている、一般的な情報しか手に入りません。専門家に相談する意味は、それぞれの状況、それぞれの家庭に合わせた対策を立てる為です。しっかりと相談するようにしてください。
獣医行動診療科認定医紹介 | 日本獣医動物行動研究会
獣医行動診療科認定医とは 獣医動物行動学(動物行動学および臨床行動学)に精通し,行動診療を行うために必要な専門知識と技術,十分な診療経験を有しており,獣医行…
本気噛みに対する薬物療法
本気噛みの発生は、脳機能の異常や、身体疾患、飼い主との関係、学習など、様々な要因により、発生しています。中には、正常から逸脱した心身の状態により、異常な敏感性、異常な衝動性、異常な不安感を示す場合もあります。
そのような、異常な状態で「しつけ」を行ったとしても、犬に対して強い負担になるだけでなく、しつけを行う家族やトレーナー等が怪我のリスクを負うことになります。
本気噛みの対応としては、第一にこれ以上の噛みつきを発生させないことが挙げられます。普通に生活する事すら難しいケースも少なくありません。日々の生活を送るためにも、薬物療法による症状の緩和は治療の選択肢に入れておくべきです。
薬物療法とは
犬の噛みつき/攻撃行動に対する薬物療法は、犬が噛む原因となる情動(感情の揺れ動き)の緩和を行うことを目的に、抗うつ薬や抗不安薬を用いて行われます。
動物にも不安、恐怖、葛藤などの情動があり、こうした情動の変化が行動に影響を与えます。強い不安や恐怖は、交感神経を活性化させ、覚醒状態をもたらし、小さな刺激に対しても過敏に反応するようになります。
薬物療法により、犬自身が、自分の情動をコントロールしやすい状態にすることができ、結果として、犬が噛む、飼い主が噛まれるリスクを下げることができます。
使用する薬剤
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(フルオキセチン/セルトラリン)
- セロトニン遮断再取り込み阻害薬(トラゾドン)
- 三環系抗うつ薬(クロミプラミン)
- ベンゾジアゼピン系抗不安薬(ジアゼパム/アルプラゾラム)
- 抗てんかん薬(フェノバルビタール/ガバペンチン)
- 漢方薬(抑肝散/大柴胡湯/柴胡加竜骨牡蛎湯/黄連解毒湯) 他
薬物療法を実施するためには?
薬物療法を実施するためには、問題行動の診察を行っている獣医師の診察を受診することが必要です。日本獣医動物行動研究会では、行動診療を行っている獣医師の認定医制度を行っています。獣医行動診療科認定医の診察を受けることが一番確実な選択になります。
獣医行動診療科認定医紹介 | 日本獣医動物行動研究会
獣医行動診療科認定医とは 獣医動物行動学(動物行動学および臨床行動学)に精通し,行動診療を行うために必要な専門知識と技術,十分な診療経験を有しており,獣医行…
ただ、数が少ないということもあり、認定医でなくても、行動診療を行っている獣医師はいますので、そうした獣医師の診察を受けることも有効な選択肢です。
「獣医行動診療科 ○○県」
などで検索いただくと、近くに動物病院があればヒットします。
近くに行動診療科がない場合
近くに行動診療科がない場合は、一般の動物病院に協力してもらって、治療を行う必要があります。
当院ではオンライン行動カウンセリングを行っていますが、法律上、直接診察していない動物に診断と処方を行うことはできません。そこで、当院のオンライン行動カウンセリングを行いながら、当院から地元の動物病院に連絡を入れ、協力を得て、治療を行っていくという形も考えられます。
一度、往診で直接診察できれば、診断と薬の処方は可能です。以後の診察はオンラインで継続することができます。