具体的にどうすればいいのか。獣医行動診療科では、大まかに以下の流れに沿って行動を減らしていきます。
身体疾患の除外
- 身体疾患がある場合は、身体疾患の治療を優先
問題行動の分析
- 噛む行動のきっかけや状況の分析(噛む前の状況)
- 噛む行動を増やしている対応・要因の分析(噛んだ後の状況)
- 噛む行動や付随する行動が異常行動か正常行動かの分析
問題行動への対応(環境修正・行動修正)
- 安全に暮らせる生活環境の設定
- ストレスとなっている生活習慣の改善
- 噛むきっかけとなる刺激の除去
- 噛む行動を増やしている要因の除去
- 飼い主が犬を安全に扱えるようになるためのトレーニング
- 噛む行動以外の行動を誘導するトレーニング
- 噛むきっかけとなる刺激に馴らすトレーニング
問題行動への対応(薬物療法・その他の療法)
- 異常な程度頻度・異常行動である場合、薬物療法
- ホルモンが関係している場合避妊去勢手術
飼い主自身で今すぐできること(当座の対応)
噛む唸るといった攻撃行動、中でも成犬で血を見るような攻撃行動では、素人の飼い主さんがネットの情報を信じて対応しても、改善の見込みは少ないと思います。お金はかかりますが、早い段階で専門家を探すのが最善だと思います。お近くの専門家をお探しの方は、以下のリンクをご確認ください。
お近くで行動診療をやっている獣医さんの探し方
相談できる専門家を探すには? 出血を伴い犬歯が刺さる程度の咬みつきでは、半数以上の症例で薬物療法の適応になります。何が原因で発生しているかによって対応は異なり、…
第一に、飼い主と家族の安全対策
とはいえ、何かできることはあるでしょうか。
飼い主自身で対策を行う場合、安全対策が何より重要です。安全対策とは、攻撃行動を発生させない対応を取るということです。そして、飼い主自身の判断で行う安全対策はあくまでも一時しのぎであって、できるだけ早く専門家に相談してください。その前提で以下のような対策が考えられます。
撫で方の再考
撫でるときに噛むという犬では、撫で方を客観的に考えてみると良いでしょう。犬にとって嫌な撫で方になっていないかどうかが重要です。噛まれるということは、犬の嫌だという意思表示です。
「撫でてあげているのに噛まれる」と考えているのであれば、それは飼い主側の欲求の押し付けです。撫でたいのは飼い主さんで、犬は撫でられたいのかを考えてみましょう。
犬が低い姿勢で飼い主の下に入ってくるような場合や、すぐにお腹を見せる場合、撫でてほしいんだろうと考える飼い主が少なくないわけですが、実はこうした姿勢は劣位行動と言って、脅威を感じる相手に自分を小さく弱い存在であると見せる犬でよくみられる行動である可能性があります。
生活環境内に仕切りを設ける
ケージに近づくと唸る、フードを食べている時に近づくと唸るといった攻撃行動では、自分の居場所に飼い主が近づいてくること、フードを食べている時に飼い主が近づいてくることに対して警戒心を抱き、唸っている可能性が高い状況です。
人の動線と、犬の生活環境の間に間仕切りを設けることで、犬が脅威を感じる場面を減らし、攻撃行動を発生させにくくすることができます。
ハウスリード
リードの付け外しの際に噛まれる場合、リードを着けられて拘束されることに対して、嫌悪感を抱いている可能性が高いです。この場合、もしリードを着けることができるのであれば、つけっぱなしにしておくと、付け外しの必要がなくなり、噛まれる可能性が低くなります。
常にリードを着けておいて、散歩用と家用を散歩に行くときに付け替えるという対策も良いでしょう。リードが既についている状態であれば、付け替えの際に噛まれる可能性は低くなります。リードを付け替えた際は必ずおいしいオヤツを与えるようにしましょう。
一緒に寝ない
いっしょに寝ていて、寝がえりを打った時に噛まれるという状況があるようでしたら、やはり一緒に寝るのは控えたほうが良いでしょう。犬は犬の寝床で寝られるように、ハウスのトレーニングをする必要があります。ハウスのトレーニングは、専門家の指導を受けながら進めることをお勧めします。
守るものを与えない
ガムなど嗜好性の高いオヤツや、フードを守って、唸る噛むということも少なくありません。こうした場合、いくらその犬がガムやフードを好きであっても、守れるように与えてしまうと、危険を生じます。ガムであれば与えない、フードであれば手で与えたり投げて与えるなど安全に与えられる方法を模索してい