噛む・唸るきっかけとなる刺激が繰り返されている
噛みつきや唸りを発生させるような刺激が繰り返されていると、噛む・唸るという行動はどんどん定着していきます。
犬が噛んだ状況を精査し、毎回撫でようとしたときに噛んでいるのであれば、「撫でる」という刺激が噛むきっかけとなっている可能性が高いでしょう。それがわかっているにも関わらず「撫でる」行為を続ければ、犬は噛む行動を繰り返すことになります。
「撫でても噛むときと噛まないときがある」という話もよく聞きます。しかし、より精査すると、「足元にいる犬を撫でる場合は噛まない」が、「ソファで寝ている犬や床で寝転がっている犬に接近して撫でる場合は噛む」など、噛みつきを発生させる条件が見つかるかもしれません。
犬の噛みつきでは、身体や脳の異常がなければ、飼い主さんが何かのきっかけを作っていることがほとんどです。獣医行動診療科では、第三者の立場から細かく噛む・噛まれる前後関係をお伺いすることで、隠れたきっかけ、噛みつきの発生条件を見つけていきます。
噛むことで、犬にとって良い成果が得られている
噛むことにより、犬が好ましい結果を得ているならば、噛む行動は強化され繰り返されていきます。
一番多いのは、「噛むことで嫌なことが終わる」というパターンです。嫌なことが終わることは、犬にとっては良いことですから、報酬になります。これを攻撃行動の負の強化と呼びます。
別の見方としては、「犬は、噛むことで、飼い主の行動をコントロールしようとしている」という見方もできます。この場合、犬は、「噛むことにより飼い主をコントロールできた」、「飼い主を思うように動かすことができた」という状態が報酬になっていると捉えることができるでしょう。
例えば、飼い主が、犬に唸られたときに、なだめる為におやつを与えている場合、犬はうなることで、おやつを引き出そうとするかもしれません。
獣医行動診療科では、犬が噛むことによりどのような報酬を得ているのか、あるいは、得ていないのかといった行動の状況を分析し、飼い主に伝えることで、飼い主と犬の関係づくりのサポートを行います。