子犬が狂ったように噛むという相談はよく寄せられます。コントロールできない子犬の噛みつきは、飼い主さんご家族を大いに悩ませます。中には流血が絶えない家庭もあるでしょう。

この動画は、まさに、そうした症例です。当院(ぎふ動物行動クリニック)でサポートした、7か月の柴犬です。

子犬が狂ったように噛む(動画)

Before

行動修正前の動画

After

行動修正後の動画

子犬が狂ったように噛む原因

子犬が狂ったように噛む原因を大別すると、

の3種類に分かれます。

遊びの中でも非常に強くかむことはありますし、身を守るため、資源を守るための噛みつきは、かなり強くかまれて、出血することも少なくありません。

狂ったように噛むと感じているということは、飼い主さんにとって、噛みつきの原因や理由が理解できない、犬が狂っているようにしか見えないということだと思います。しかし、いくら狂ったように噛んでいたとしても、そこには『ほぼ必ず』原因があります。その原因を理解することが、噛みつきを抑制するためには必要です。

子犬なのに縫うほど噛んでいる場合

子犬が狂ったように噛むのは『ほぼ必ず』原因がありますが、原因がわからない、あるいは、あまりにも攻撃の強度が強すぎて、正常な行動を逸脱している場合があります。

正常行動を逸脱した攻撃行動の場合、以下のような症状がみられる場合があります。

  • 力の加減が全くなく、その子犬の100%のあごの力を使って噛む(力が加減されていないパターン)
  • さっきまで遊んでいたと思ったのに、特に何も刺激していないのに、急に怒り出して噛む(行動の脈絡がないパターン)
  • 目つきがおかしく、緑色に見えることが多い(瞳孔が異常に散大している/異常な状態)
  • 身体がガクガクしたり、よだれを出したりして、表情がおかしい(異常な状態)
  • 食餌の前後で人格が変わったように攻撃する

このような攻撃行動が子犬のウチから出ている場合は、てんかん等の脳機能の疾患や、先天性代謝異常などが絡むケースがあります。放置してしまうと、悪化していく場合も少なくありませんので、早めに行動学を学んだ獣医師(獣医行動診療科)を受診するようにしましょう。

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関心を引くため/遊びでの興奮

子犬の噛みつきの多くが、飼い主さんの関心を引こうとしたり、遊びの中で発生する攻撃です。興奮は激しいものも含まれますし、場合によっては血が出ることもあるでしょう。しかし、噛みつく原因、関心を引くため、遊びで興奮してということであれば、遊び方を工夫したり、フードを持ちながら遊ぶようにすることで、大幅に軽減することができます。

遊びや関心を引くための噛みつきの学習パターン

遊びや関心を引くための噛みつきは、以下のような学習が起こっています。

「飼い主が相手してくれない(スマホ見ている)」⇒「飼い主に噛みつく」⇒「飼い主が反応する」

これの学習を繰り返すことにより、噛めば相手してもらえると学習し、噛む行動が増加していきます。

しかし、これに対して飼い主の方も何か対策を考えます。一番初めに行うのは大抵無視です。

A「飼い主が相手してくれない」⇒「弱くかむ」⇒「無視される」

B「飼い主が相手してくれない」⇒「強くかむ」⇒「飼い主が痛い!と反応する」

この場合、Bのパターンが選択的に強化されていき、結果として、無視してもむしろ噛みつきの強さが強くなるだけという結果に陥ります。

身を守るため/嫌なことをされないため

動画の柴犬がまさにこのパターンですが、嫌なことをされないため、嫌なことを避けるために攻撃することがあります。このパターンでは、自分の身を守る防衛のための攻撃であり、場合によっては、犬歯が刺さり大けがをするレベルで噛みつきます。

足を拭こうとすると噛む、ブラシをしようとすると噛む、抱っこしようとすると噛む、リードを付けようとすると噛むなどはこのパターンです。

身を守るため/嫌なことをされないための学習パターン

このパターンに陥っているときは、飼い主さん自身で対処しても多くの場合悪化し続けます。

「足を拭こうとする」⇒「犬が攻撃する」⇒「拭けなかった(拭くのをやめた)」

ということが繰り返されれば、犬は余計に攻撃的になっていきます。攻撃すれば飼い主が嫌なことをやめてくれるとどんどん学習していきます。

自分で何とかしようとするのではなく、専門家の助言、支援を受けることを強く強くお勧めします。悪化してからだと、普通のトレーナーでは対処できず、特定の一部の専門家でないと対応できないということにもなりかねません。

資源を守るため(フードを守る/拾ったものを守る)

特に柴犬では、フードを守って唸る、噛む、攻撃するということが良く起こります。フードをお皿で与えているときに、近づくと唸るという状態は、継続すべきではありません。できる限り早く解消すべきです。

フードはフードボウルに入れられて目の前に置かれた時点で、「犬が守らなければならない資源」になります。飼い主さんがフードボウルを手に持っている状態であれば、それは「飼い主の所有している資源」であり、「犬の資源」ではありません。フードを守って唸る場合は、フードボウルをおいて与えるのではなく、手に持ってあたるようにした方がいいでしょう。

拾ったものを守る行動の学習パターン

拾ったものを守って唸るという行動は、初めは遊びの一環で起こるかもしれません。気になるものを口にくわえたら、飼い主さんが焦って、取り上げてくるということが起こります。それに対して、犬は追いかけっこを始めることがあります。

「ものが落ちている」⇒「ものを拾う」⇒「飼い主が追いかけてくる&飼い主と追いかけっこをする(楽しい)」

という学習が起こり、ものが落ちていると積極的に拾って逃げるようになります。

さらに

「飼い主がものを奪おうと近づいてくる」⇒「取られそうになった時に唸る」⇒「飼い主が手を引く/諦める」

という学習が起こり、とられそうになったら唸る、噛むという行動を強化させていきます。

専門家への相談を

上記3パターンに当てはまらない場合、別の可能性もかんがえていきましょう。子犬の噛みつきには、ほぼ必ずパターンがあります。発生パターンが分かれば、発生させないようにすることができます。以下のリンクも参考にしてください。

【リンク】子犬のひどい噛み癖の7タイプ別、原因としつけ方

飼い主さん自身では、噛みつきのパターンを理解できないこともあるでしょう。その行動がどのように発生しているか分析し、噛まれないプロセスをデザインすることは、専門家がサポートすべき部分です。ぜひ、専門家に相談されるとよいでしょう。