子犬の噛みつきは『原因』を明らかにすることから。

子犬の噛みつきに対して、叱ったり叩いたりすることは、百害あって一利なしです。体罰的なしつけの方法を用いても、余計に興奮させたり、恐怖心・不信感を植え付けるだけで、解決にはなりません。

もちろん、叱ることで、噛む行動が止まる犬も、一部にはいることは事実です。しかし、それは理解力が高い犬、興奮性が高くない犬の場合であって、そもそもそうした犬の場合、噛む問題に困らない場合が多いはずです。

噛む問題に困っている場合、叱っても効果がないから、困っているともいえるでしょう。むしろ、叱ることで興奮性を高め、噛む問題を悪化させてしまっているのかもしれません。

では、噛む行動を無視すればいいのか?というと、そうでもありません。

例えば、子犬が飼い主さんの関心を引こうとして咬んでいる場合、噛むことで飼い主のリアクションを引き出そうとしている状態です。無視したとしても、犬はより強く咬んで、飼い主の関心を引こうとします。飼い主の方もあまり強く咬まれれば無視できないため、「痛い!」「やめて!」と言いながら、子犬の噛みつきに対応してしまうことになります。

結果として、犬は「弱く噛んでも相手をしてもらえないけど、強く噛めば相手してもらえる」と学習し、より強い噛みつきを学習させることになります。

あるいは、撫でようとすると噛むという行動がある場合を考えてみましょう。撫でようとすると噛む時、犬は、飼い主の手の接近に対して嫌悪感を抱いていて、噛むことで、手から逃げようとしていることが多いです。これに対し、飼い主が「痛い!」といって、その場を離れるという対応をしたとしても、犬としては「噛めば嫌なことが終わる」と学習し、余計に咬むようになるでしょう。

噛む行動にどのように対応するかではなく、噛む行動がどのような原因で起こっているか明らかにし、噛む行動が起こらないように予防するという考え方が大切です。

「噛んだ後にどう叱ったらいいですか?」「噛んだ後にどう対応したらいいですか?」と聞かれることは多いのですが、噛んだ後の対応を考えている時点で後手に回っているのです。そうではなく、噛む行動がどのような状況で、どのような動機づけによって発生しているかを考え、噛む行動の必要性をなくす(動機づけをなくす)ことの方が重要です。

子犬の噛みつきの『原因』の7つのパターン

子犬の噛みつきの原因(発生状況)を大きく分けると、以下の7パターン程度に分かれます。

  • ①ケージから出て、自由にしている時に、飼い主さんが構っていない時(携帯やテレビを見ている時など)に噛む
  • ②ケージから出て、自由にしている時に、ひとりで走り回って興奮した後に噛む
  • ③飼い主と遊んでいる時(ロープ遊び)に、興奮が強くなって噛む
  • ④飼い主が撫でようとしたときに噛む
  • ⑤飼い主が抱っこしようとしたときや、ブラッシングをしようとしたときに噛む
  • ⑥フードを与えた際に唸り、手を出すと噛む
  • ⑦靴下やティッシュなどの食べてはいけない物を守って噛む

それぞれに対応法が違いますから、その原因がどれにあたるのかを考えられるようになることが大切です。また、複数の原因が絡み合って発生していることもありますから、それを分析して、一つずつ別々に対応することで、噛む行動を抑えることができます。
(下段に続く)

子犬の噛みつきの原因を理解し、対応するための支援策

ぎふ動物行動クリニックでは、全国で子犬の噛みつきに悩む飼い主さんに向けて、以下の支援策をご用意しております。

1.パピークラス(グループレッスン/プライベートレッスン)

併設するドッグ&オーナーズスクールONELife(岐阜県岐阜市)にてグループレッスンとプライベートレッスンを行っています。噛む行動の原因や対策について、お話し、実践を通じてレクチャーいたします。詳しくはこちらからご確認ください。

2.パピークラス|オンライン

全国どこからでもレッスンを受けられるように、オンラインでのレッスンも実施しております。個別のカウンセリングも行っております。詳しくは以下のバナーをクリックしてください。

3.動物の精神科医が教える、犬の咬みグセ解決塾

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①ケージから出て、自由にしている時に、飼い主さんが構っていない時に噛む

①の場合、ケージから出て自由にしているにもかかわらず、飼い主さんがスマホをやったり、テレビを見たり、ゴハンを食べていたり、子犬の相手をしていない時に噛みつきが発生します。子犬は、自由にしているのに、構ってもらえないので、関心を引こうとして咬みついてきます。

スリッパや、靴下の指先、ズボンの裾、服などを噛むことが多いでしょう。あるいは、寝転がっていると髪の毛を噛むということも多くあります。暇な犬を自由にしていて、家族が寝転がっていれば、噛まれない方が不思議と考えたほうが良いでしょう。

子犬が飼い主の関心を引こうとするのは、家族が子犬に関心を向けていないからです。そもそも、飼い主が子犬に関心を向けていれば、子犬は関心を引くために噛む必要はなくなります。

つまり、ケージから出る際は、犬だけで自由に遊ばせるというのではなく、飼い主さんと一緒に遊ぶようにすることが大切です。そのためには、フードを使ったり、オモチャを使ったりすることが必要です。決してスマホ片手に相手をするというのはよくありません。

また、家事をしたり、食事をしたり、犬の相手をできない時は一度ケージに戻すことが大切です。きちんと相手ができるタイミングで出すようにしましょう。

②ケージから出て、自由にしている時に、ひとりで走り回って興奮した後に噛む

②場合、ケージから出たあとに、走り回ることで、興奮が起こってきます。そもそも、子犬は、ケージから出して遊ぶ際には興奮するのが普通です。興奮した子犬は、遊びの一環として飼い主に噛むという行動を示します。但し、興奮した際に噛みついてくるかどうかには個体差はあります。

①と同様に、ケージから出す際に何も目的を与えずに「どうぞ、あなた(犬)の自由にしていいですよ」という形で出してしまうと、犬の方は「面白いことがないから興奮して走り回ろう!」と考えます。そうするとリビングの中で運動会が始まってしまい、興奮することで、咬みつきが助長されます。

噛みつきをおさえるためには、噛む原因となっている興奮を抑える必要があります。そのためには子犬に集中するものを与えることが大切です。ケージから出た際に、何か目標となる事であったり、子犬が関心を向けるものがあれば、走り回って興奮するのではなく、集中して落ち着きます。多くの子犬は、フードに関心を持っていますから、フードをうまく使うことが大切です。

一つは知育トイを与えることです。知育トイとは、フードを入れることができ、転がすとフードが出てくるオモチャのことです。これに集中させることで、興奮や噛みつきを抑えることができます。

また、飼い主さん自身が手にフードを持っておくことも大切です。フードをお皿から与えるのではなく、1粒ずつ手から与えるようにすれば、そちらに集中するため、興奮は弱くなります。

さらに、その中でトレーニングしていくことで、犬が勝手に興奮しないようにして、飼い主さんと関わりながら、落ち着いて行動できるようにすることが大切です。

犬を出している時にスマホをやる、テレビを見るという暇はないと思ったほうが良いでしょう。そうした他ごとをする場合は、一旦ハウスに戻します。飼い主さんが集中していられる場合に出すようにしましょう。

またハウスリードを装着することで、ハウスから出た際に走り回って興奮することを防ぐことができます。家の中でもリードを着けるというのは、あまり馴染みがないかもしれませんが、リードをつけることで行動範囲を狭くすることができ、走り回って興奮するという状態を減らすことに繋がります。首輪やリードに馴れ、散歩の練習にもつながります。早く散歩に行けるようになれば、散歩時に発散させることもできるでしょう。

③飼い主と遊んでいる時(ロープ遊び)に、興奮が強くなって噛む

③の場合は、飼い主さんとの遊びの中で発生している状況です。動機づけとしては、遊び行動として噛む行動が出ているという状況です。この点については②と同様です。違いとしては、②は飼い主が遊びに誘わなくても勝手に興奮して噛みついてくるのに対し、③は、遊びの中で興奮して噛みついてくる形になります。

遊びの中で噛む行動が発生していますから、どのように遊ぶかによって、噛む行動を減らすことができます。遊びの中で興奮することは当然のことですから、興奮させないということはできないでしょう。興奮しても噛まずに遊べるように教えていく必要があります。

そのためには、噛まれたら、遊びを中断し、その場を離れるようにすると良いでしょう。オモチャを噛んでいるうちは遊んでくれるけど、手を噛んだら遊びが終わってしまうということを明確に伝えると、犬は、遊びを継続したいため、手を噛まないように気をつけるようになります。

注意点としては、強く咬まれた場合だけ遊びをやめようとすることはせず、手に歯が当たったら遊びを中断するという形にすることです。強く噛んだ時だけ中断するという形だとなかなか伝わらないので、遊びをやめる判定は厳密にすべきです。耐えられなくなったら遊びを中断するという形だと、犬は、飼い主さんが耐えられなくなるまでは噛んでもいいと覚えてしまいます。

そもそも、犬が遊びの中で手を咬むこと自体は、子犬の行動としては正常です。正常な行動であるという認識を持ったうえで、飼い主さんとしては噛むのはやめてほしいということを伝えていくことが大切です。噛んだら遊びが終わってしまったという状況にすると、遊びの中で噛みついてくる行動は減らすことができます。

④飼い主が撫でようとしたときに噛む

④のパターンの場合、飼い主さんが触ろうとしたときに咬むという状況です。飼い主さんの手が近づくことに対して興奮したりしている、あるいは、手の接近に対して嫌悪感があり、手の接近に対してドキドキしている可能性が高いです。

なぜそうなるかというと、撫で方が激しかったり、元々撫でられるのが苦手だったりすることが挙げられます。犬は撫でられるのが好きと思わがちですが、必ずしもそうではありません。撫でられることをくすぐったいと感じていたり、うざいと感じていることもあります。

特に、「お利口だねー」と言いながら、ハイテンションで頭をワシャワシャするような褒め方をしている場合、手の接近に対する嫌悪感を関連付けていきます。こうした対応で犬が手に嫌悪感を募らせている場合、当然、犬は褒められていると思っていません。

あるいは手が出てくると遊びが始まると思って興奮する犬もいます。手を噛ませて遊ばせることが多い家庭では、手が接近してくると激しい遊びが始まると感じ、興奮します。

これに加えて、マズルを掴んでキャンと言うまで離さないとか、犬を床に押さえつけて叱るとか、手を用いた体罰を行っている場合、手の接近に対して恐怖感を関連付けます。

これらの要因が複合的に関連して、場合によっては、手の接近に対して、遊びと恐怖という相反する感情が関連して葛藤状態となって興奮し噛む行動が発生していることもあります。

さらに、手の接近に対し嫌悪感がある場合は、噛むことで手の接近から逃れられた経験をすることで、手に噛む行動を強化していきます。

この場合、まずは撫で方を考え直す必要があります。大抵は撫で方が、その犬にとって激しすぎるということがあります。正面から撫でることは興奮を呼びますので、正面から撫でるというコミュニケーションは控えたほうがいいでしょう。撫でる場合は、ハンドリングと言って、撫でることに馴らす練習が必要です。基本は、オヤツを手に持って、オヤツを食べさせながら撫でることで馴らしていく方法ですが、これは犬によってやり方や強度がまちまちですから、トレーナーや行動学を学んだ獣医師のの指導を直接受けることをお勧めします。

⑤飼い主が抱っこしようとしたときや、ブラッシングをしようとしたときに噛む

リードを着けようとすると噛む、捕まえようとすると噛むなどがこれにあたります。よつまり拘束を嫌がって噛むということです。ブラッシングをしようとすると噛むということも同じで、拘束されることを嫌がって噛んでいる状態と言えます。④のパターンから発展して、⑤のパターンになる事がよくあります。また、体罰的な方法(マズルを掴んでキャンと言うまで強く握る/仰向けにして大きな声で叱る)といった方法を取ると、拘束に対する恐怖感が強くなり、⑤のパターンが現れやすくなります。

これは、かなり強い噛みつきに発展する可能性が非常に高い噛みつきで早急な対応が必要です。口を押えて叱るという方法など、手に対する嫌悪感を繰り返し教えている状態にある場合、飼い主様と愛犬の関係をより悪化させる対応ですから、絶対に実施しない方が良いですし、すぐに中止すべきです。

⑤のパターンは、噛めば嫌な事が終わると学習するため、特に深刻化しやすく、繰り返せば、触れなくなるほど噛むようになるパターンでもあります。是非、早急にお近くの専門家に、実際に相談に行っていただく事をお勧めします。体罰的な方法で押さえつけるのではなく、犬の不信感をなくしていくためのトレーニングを行う専門家の方に相談されると良いでしょう。

フードを与えた際に唸り、手を出すと噛む

柴犬などの日本犬に発生しやすい深刻な攻撃行動です。フードに対する執着が非常に強く、フードを守ろうとして唸ったり噛んだりします。フードを守らなければならないという緊張感から、すぐに食べることができず、飼い主さんが離れると食べるという犬もいます。

この場合、フードをお皿に入れて与えるという方法を行うと、唸ることが増えていく傾向にあります。可能であれば、フードを手から与えるようにすると、唸ることがなくなることがあります。但し、手から与えても、その手に噛みついてくる場合があるため、慎重に実施すべきです。手から与えて問題ないようなら手から与えましょう。

また、家の中で与えると守りやすいということもあります。散歩中に与える、庭で与えるといった形で、常に同じ場所でフードを与えないようにする、少しずつ与えるようにするという対応で、守りにくくなることがあります。

いずれの場合も、強い危険の伴う攻撃行動ですから、実施には慎重を期し、安全第一で行うべきです。フードを守って唸る噛むという行動は悪化しやすい傾向にありますから、早急に専門家に相談すべきです。

悪化すると、手から与えるという方法を用いると、強い葛藤を生じて攻撃的になる事がありますので注意が必要です。

靴下やティッシュなどの食べてはいけない物を守って噛む

このパターンは、深刻な噛みつきとして多くの犬種でよくみられるものです。ティッシュや靴下を持って行き、守ろうとする行動です。

無理やりに取ろうとすると、奪われまいとする意図から、より強い攻撃に発展し、また唸る事で守れた経験から、攻撃行動が繰り返し発生するようになります。

対応としては、第一に、守るようなものを置かないことです。物を取れなければ守る事はありません。

第二に、守ってしまった場合は、オヤツと交換することです。一方的に奪われるのではなく交換であれば、犬も納得しやすくなります。

第三に、放してを教えることです。価値の低いおもちゃを与えて、「放して」と言って話したらオヤツを与えるということを行います。オヤツを与えたあとは、必ずそのおもちゃでもう一度遊ばせます。徐々に価値の高いおもちゃでも放せるようにして、しだいに、ガムなどすぐに食べられない価値の高いオヤツでも放せるようにしていきます。

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