子犬の噛み癖と一言で言っても、複数の原因があります。構ってほしくて噛む行動と、触られるのが嫌で噛む行動、どちらも同じ噛み癖ですが、その内容は全く違います。
子犬の噛み癖を直すには、噛む原因=動機づけ(犬が噛む動機は何か?)を理解して、動機づけごとに異なる対応をする必要があります。構ってほしくて噛む場合は、そもそもの生活環境や、犬とのかかわり方を見直す必要があります。触られるのが嫌で噛む場合は、触られることに馴らす対応や触り方を気を付ける必要があります。
この記事では、子犬が噛む動機づけを7種類に分け、その動機づけごとの対策について、解説しています。
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噛み癖のオンライン相談
犬のしつけ教室ONELife/ぎふ動物行動クリニック(岐阜県岐阜市)では、子犬の噛み癖のオンライン相談に取り組んでいます。
犬歯が刺さって血が出るレベルの強度の噛みつきの場合、預かりによるトレーニング(社会化合宿)にて対応しています。岐阜に近い方はパピークラス(初回無料)を実施しております。
動画でも解説しています
犬に噛まれない飼い主になる4か条を、動画で解説しています。
子犬の噛み癖の7つのタイプ
当方のパピークラスで相談で特に多いのが噛みつきです。一方で、噛みつきの相談はおおよそ以下の7タイプに分けることができます。
- 飼い主さんが相手していないときに噛む(靴下・スリッパ・袖に噛み引っ張る)タイプ
- ケージから出すと一人で走り回って興奮して噛みつくタイプ
- ロープ遊びなどで遊んでいるときに興奮して手まで噛みつくタイプ
- 撫でようとすると噛むタイプ
- 抱っこする、ブラシをする、首輪を持つなど、拘束すると噛むタイプ
- フードボウルを守って噛むタイプ
- 拾ったものを守って噛むタイプ
噛みつきのタイプによって、対応が異なります。
噛み癖の原因の考え方
噛む行動=○○をすれば治る!というような解説がなされることがありますが、それは間違いです。噛む原因に対する対応を考えなければ、良くなることはありません。
原因も違えば、噛む程度も違います。易しく歯をあててくる程度の噛み癖なら、少し対応を変えるだけで大きく変化します。一方で、犬歯が刺さる、血が出るような噛み付きについては、専門家の助言を受けることを強く勧めます。下手にネットやyoutubeの情報を信じて対応して、余計に悪化させている例が枚挙に暇がありません。
ネットやyoutubeの情報は、あくまでも一方的な情報提供です。このブログも同じです。
あなたの愛犬に合わせた情報を掲載しているわけではないのです。この記事でも示す通り、子犬が噛むという行動は、大きく分けて少なくとも7パターンあるわけで、さらにこの各パターンの中でも、詳細な原因は違うのです。あなたの愛犬の噛み癖の原因を把握しなければ、原因を取り除くことはできないということを意識すべきです。
子犬の噛み癖7つのタイプ別のしつけ方・対応法
子犬の噛みつきの原因(発生状況)を大きく分けると、以下の7パターン程度に分かれます。
①飼い主さんが相手していない時に噛む
子犬が噛む理由
飼い主さんがスマホをやったり、テレビを見たり、ゴハンを食べていたり、子犬の相手をしていない時に噛みつきが発生します。子犬は関心を引こうとして噛む行動をします。
スリッパや、靴下の指先、ズボンの裾、服などを噛むことが多いでしょう。あるいは、寝転がっていると髪の毛を噛むということも多くあります。
暇な犬を自由にしていて、家族が寝転がっていれば、噛まれない方が不思議と考えたほうが良いでしょう。
対応としつけ方
子犬が飼い主の関心を引こうとするのは、家族が子犬に関心を向けていないからです。そもそも、飼い主が子犬に関心を向けていれば、子犬は関心を引くために噛む必要はなくなります。
つまり、ケージから出る際は、犬だけで自由に遊ばせるというのではなく、飼い主さんと一緒に遊ぶようにすることが大切です。そのためには、フードを使ったり、オモチャを使ったりすることが必要です。決してスマホ片手に相手をするというのはよくありません。
また、家事をしたり、食事をしたり、犬の相手をできない時は一度ケージに戻すことが大切です。きちんと相手ができるタイミングで出すようにしましょう。
②ひとりで走り回って興奮した後に噛む
子犬が噛む理由
②場合、走り回ることで、興奮が起こってきます。そもそも、子犬は、ケージから出して遊ぶ際には興奮するのが普通です。ケージから出す際に何も目的を与えずに「どうぞ、あなた(犬)の自由にしていいですよ」という形で出してしまうと、犬の方は「面白いことがないから興奮して走り回ろう!」と考えます。そうするとリビングの中で運動会が始まってしまい、興奮することで、咬みつきが助長されます。
対応としつけ方
興奮を抑えるためには、子犬に集中するものを与えることが大切です。ケージから出た際に、子犬が関心を向けるものがあれば、走り回って興奮するのではなく、集中して落ち着きます。子犬が注目するフードをうまく使うことが大切です。
一つは知育トイを与えることです。知育トイとは、フードを入れることができ、転がすとフードが出てくるオモチャのことです。これに集中させることで、興奮や噛みつきを抑えることができます。
また、飼い主さん自身が手にフードを持っておくことも大切です。フードをお皿から与えるのではなく、1粒ずつ手から与えるようにすれば、そちらに集中するため、興奮は弱くなります。
またハウスリードを装着することで、ハウスから出た際に走り回って興奮することを防ぐことができます。首輪やリードに馴れ、散歩の練習にもつながります。早く散歩に行けるようになれば、散歩時に発散させることもできるでしょう。
③飼い主と遊んでいる時(ロープ遊び)に、興奮が強くなって噛む
子犬が噛む理由
③の場合は、飼い主さんとの遊びの中で発生している状況です。動機づけとしては、遊び行動としての噛む行動です。②は飼い主が遊びに誘わなくても勝手に興奮して噛みついてくるのに対し、③は、遊びの中で興奮して噛みついてくるという違いがあります。
対応としつけ方
遊び方の工夫をすることが大切です。噛まれたら、「痛い!」と言って、遊びを中断し、その場を離れるようにすると良いでしょう。犬がまたげないサークルを用意しておいて、その外に出るようにしましょう。サークルがないと、犬はどこまでも追いかけてきてしまいます。
手を噛んだら遊びが終わってしまうことを明確に伝えると、犬は、手を噛まないように気をつけるようになります。
注意点としては、手に歯が当たったら遊びを中断すると明確に線引きを行うことです。強く噛んだ時だけ中断するとなかなか伝わりません。遊びをやめる判定は厳密にすべきです。
④飼い主が撫でようとしたときに噛む
子犬が噛む理由
飼い主さんの手が近づくことに対して興奮している、あるいは、手の接近に対して嫌悪感があり、手の接近に対してドキドキしている可能性が高いです。
犬は撫でられるのが好きと思わがちですが、必ずしもそうではありません。撫でられることをくすぐったいと感じていたり、うざいと感じていることもあります。
特に、「お利口だねー」と言いながら、ハイテンションで頭をワシャワシャするような褒め方をしている場合、手の接近に対する嫌悪感を関連付けていきます。当然、犬は褒められていると思っていません。
また、手を噛ませて遊んでいる場合も、手の接近で興奮するようになります。
対応としつけ方
犬の顔には、感覚器官が集中しています。ワシャワシャ撫でることは、過剰な刺激となり興奮を呼びますので、正面から撫でるというコミュニケーションは控えたほうがいいでしょう。
撫でる場合は、ハンドリングと言って、撫でることに馴らす練習が必要です。基本は、オヤツを手に持って、オヤツを食べさせながら撫でることで馴らしていく方法ですが、これは犬によってやり方や強度がまちまちですから、トレーナーや行動学を学んだ獣医師のの指導を直接受けることをお勧めします。
⑤飼い主が抱っこしようとしたときや、ブラッシングをしようとしたときに噛む
子犬が噛む理由
リードを着けようとすると噛む、捕まえようとすると噛むなどがこれにあたります。つまり拘束を嫌がって噛むということです。
このパターンは、噛めば嫌な事が終わると学習するため、特に深刻化しやすく、繰り返せば、触れなくなるほど噛むようになるパターンでもあります。かなり強い噛みつきに発展する可能性が非常に高い噛みつきで早急な対応が必要です。
対応としつけ方
まずは、無理やり押さえつけてブラシをかける、無理やり押さえつけて足ふきをするなど、無理やり○○をするということは一切控えてください。
改善するためには、「触られても大丈夫」「触られることは嫌じゃない」ことを教える必要がありますが、飼い主さんが素人判断で対応を行うと悪化する場合が多いです。是非、早急にお近くの専門家に、実際に相談に行っていただく事をお勧めします。
⑥フードを与えた際に唸り、手を出すと噛む
子犬が噛む理由
柴犬などの日本犬に発生しやすい深刻な攻撃行動です。フードに対する執着が非常に強く、フードを守ろうとして唸ったり噛んだりします。
対応としつけ方
この場合、フードをお皿に入れて、床に置いて与えるという方法は止めた方がいいでしょう。
可能であれば、フードを手から与えるようにすると、唸ることがなくなることがあります。但し、手から与えても、その手に噛みついてくる場合があるため、慎重に実施すべきです。
散歩中に与える、庭で与える、といった場所を変える方法もあります。1粒~数粒ずつ、おやつ感覚で与えていくと、攻撃しない場合もあります。
いずれの場合も、強い危険の伴う攻撃行動ですから、実施には慎重を期し、安全第一で行うべきです。悪化すると、手から与える方法でも、強い葛藤を生じて攻撃的になる事があまります。早急に専門家に相談すべきです。
⑦靴下やティッシュなどの食べてはいけない物を守って噛む
子犬が噛む理由
このパターンは、深刻な噛みつきとして多くの犬種でよくみられるものです。ティッシュや靴下を持って行き、守ろうとする行動です。
無理やりに取ろうとすると、奪われまいとする意図から、より強い攻撃に発展し、また唸る事で守れた経験から、攻撃行動が繰り返し発生するようになります。
対応としつけ方
対応としては、第一に、守るようなものを置かないことです。物を取れなければ守る事はありません。
第二に、守ってしまった場合は、オヤツと交換することです。一方的に奪われるのではなく交換であれば、犬も納得しやすくなります。
第三に、放してを教えることです。価値の低いおもちゃを与えて、「放して」と言って話したらオヤツを与えるということを行います。オヤツを与えたあとは、必ずそのおもちゃでもう一度遊ばせます。徐々に価値の高いおもちゃでも放せるようにして、しだいに、ガムなどすぐに食べられない価値の高いオヤツでも放せるようにしていきます。
噛み癖は、飼い主に原因あり!
犬が噛むんだから、犬に問題がある、犬を直したいと考えがち。しかし、これまで7タイプ別に原因を解説してきたように、犬は犬だけで噛み癖を覚えることはありません。飼い主がいて初めて噛み癖を覚えていきます。
犬が飼い主を噛むのは、何らかのコミュニケーション手段です。「嫌」を伝えるためかもしれないし、「やめろ!」かもしれないし、「かまって」と伝えるためかもしれないわけです。
その噛みつきに対して、飼い主がどのように反応するかによって、犬は余計に噛む行動をするのか、噛む行動をやめるのか決めます。
靴下を引っ張る犬
例えば、靴下を引っ張る犬がいたとします。そこで飼い主が「やめなさい!」と言いながら靴下を引っ張り、引っ張り合いになってしまったとします。さらにそこから犬が靴下を奪って走り回り、飼い主が追いかけまわした。この時犬がどのように感じるでしょう?
「靴下を引っ張ったら、引っ張り合っこしてくれた!そのうえ、靴下をとったら追いかけっこもしてくれた!楽しかったからもっとやろう。」
そう思うに違いありません。
がんばって無視する飼い主
逆に、飼い主が頑張って無視しようとした場合はどうでしょう?噛み癖には無視しましょうとは言い古された助言ですね。
手を噛んできても、足を噛んできても、飼い主は頑張って無視します。ちょっと痛くても無視します。
犬の方は
「あれ?もうちょっと強く咬んだら相手してくれるのかな?」
と思い、もう少し強く咬みます。犬の方もじれったくなって、徐々に噛む強さを強くしていきます。
やがて、飼い主は「もう限界!痛い!やめて!!」と犬の噛みつきに反応します。
犬の方は
「なんだ、弱く噛んでも相手してもらえなくて、強く噛まないと相手してもらえないんだ。これからは、初めから強く噛むようにしよう」
と学習し、徐々に強く噛むようになっていくでしょう。
子犬の噛み癖の多くは、興奮を伴う
興奮するから噛む/落ち着いているときは噛まない
子犬は落ち着いている時には噛みません。興奮したときに噛みます。
子犬は興奮しなければ、指をハムハムする程度です。興奮することで、本能的な狩り遊びのから強く噛むようになります。大切なことは、噛むような興奮状態を抑えることです。
興奮の2大原因
子犬の興奮の2大原因は、「放任」と「撫ですぎ」です。
放任=「興奮していいですよ」と言っているようなもの
「放任」とは、ケージから出して、犬を自由勝手にさせることです。犬は自由を得れば走り回り興奮します。
子犬は放置すれば興奮する生き物です。犬はベッドで丸まって寝ている生き物とイメージしているようなら、それは老犬の話です。
子犬は年齢的に、飼い主が意図的に落ち着かせようとしないと、興奮してしまうと思った方がよいでしょう。自由にさせるとは「あなたの好きにしていいよ、好き勝手興奮していいよ」と言っているようなものです。
「撫でる」=「良いコト」ではない
「撫ですぎ」は、犬を撫ですぎることです。顔の周りをワシャワシャ撫でることを繰り返す飼い主さんは、総じて犬に噛まれやすい傾向にあります。
子犬と人間のサイズを比べてみてください。手は顔より大きく、力も圧倒的に強いわけです。子犬が人間のサイズだったら、キングコングに頭をなでられているというイメージですね。
にもかかわらず、「お利口だねー!」と言いながら、わしゃわや顔を撫でるのは、強い圧迫感があり、不快になるのも無理はありません。繰り返すことで、手が近づくだけで「またやられる!」と思い、ドキドキして興奮するようになります。
それに加えて、手をおもちゃにして噛ませてしまっている場合、手が近づいた瞬間に、興奮のスイッチが入りやすくなり、手の接近に対して噛むということが多くなります。
落ち着きのしつけ&発散のしつけ
噛み癖のしつけとは、
①落ち着きのしつけ「興奮させないよう、落ち着くためのしつけ」
を行うと同時に
②発散のしつけ「適切な興奮・活動を行うための、適切なものを噛むしつけ」
を行う必要があります。
落ち着きのしつけも、発散のしつけも共に、できるだけ小さなうちから始めるのが正解です。
噛み癖を直す、落ち着かせる練習
子犬を興奮させないようにする、「落ち着きのしつけ」こそ、噛み癖を直すための本丸となるしつけです。
子犬の噛み癖・甘噛みの対応(興奮させない接し方)
噛み癖は、子犬だけでは発生しません。子犬に噛まれる飼い主がいて初めて発生します。
「子犬が一人で勝手に噛んでくる」という捉え方をするのではなく、「飼い主が興奮させ、噛まれるような接し方をしているから、犬に噛まれる」と捉えるべきです。
噛ませるような接し方をやめる
人間の動きをよく観察すれば、噛まれるような接し方が生じていることに気づくはずです。例えば、犬が自由にしている時に、飼い主さんが床で寝転がっているというような状態です。犬は飼い主の顔がすぐそばにあり、耳でも鼻でも髪の毛でも噛み放題の状態です。
あるいは、噛まれたときに「イタイイタイ!」と騒ぎながら、逃げ回っていませんか?飼い主が、噛めば走り回るおもちゃになってしまえば、犬は噛むことをやめることはないでしょう。
刺激的な状況を作れば、犬は当然興奮し、飼い主さんは噛まれ続けます。
飼い主さん自身の行動に目を向け、興奮させるような対応になっていないか確認しましょう。
犬を落ち着かせる対応法、4選
犬を興奮させず、落ち着かせるために、今すぐできる対応として、以下の4つの対応がお勧めです。
①フードを手に持つ
フードを手に持つだけで、子犬はフードに集中します。フードをお皿から一気に与えるのではなく、フードを手から少しずつ与えるようにしてみてください。フードを手に持っているときは、犬はフードの集中して、落ち着き、噛みにくくなります。
②ハウスリード
家の中でもリードをつけることをハウスリードといいます。ハウスリードをつけ、リードを持っておいてください。そうすると、犬は走り回って興奮することが少なくなり、噛みつきを減らせます。
③椅子に座る
床に座っていると、人の顔、頭、耳、髪の毛、手が犬の目線の近くになり、噛まれやすくなります。興奮した犬を払いのけようと手を出せば余計に興奮させます。椅子に座ることで、犬の目線と人の目線に高低差をつけると、興奮させにくくなります。
④ワシャワシャ撫でない
犬の顔付近は、目、耳、鼻、口と感覚器官が集中しています。その顔をワシャワシャ撫でることは、犬を過剰に興奮させることにつながります。そもそも犬は顔付近を激しくなでてほしいなどとは思っていません。
噛んだ時の「正しいしつけ方」はない!
「噛んだ時の正しいしつけ方」はありません。
噛み癖を「叱る」はNG!
そもそも、その噛みつきが健全な遊び関連の噛みつきであれば、子犬が噛むこと自体は問題ではありません。手を噛まれて困っているのであれば、手を噛ませず、適切なものを噛ませるしつけを行う必要があります。
もし、防衛的な噛みつきであれば、防衛的な状況に追い込んでいることに問題がります。無理やりブラシをする、無理やり足ふきをする、無理やり首輪を持つといった、無理やり○○するという対応を行うことをやめなければなりません。
手の接近に対して過剰な興奮をしている場合、ワシャワシャ撫でているなど、手に対する興奮性を高める接し方があるはずです。体罰的にマズルをキャンというまで握るといった、不適切なしつけが行われているかもしれません。
噛まれている時点で、噛む前の予防的なしつけができていないと考えたほうがよいでしょう。
子犬の噛みつきに対して、叱ったり叩いたりすることは、百害あって一利なしです。余計に興奮させたり、恐怖心・不信感を植え付けるだけで、解決にはなりません。
噛む問題に困っている場合、叱っても噛む行動を止めないことが多いでしょう。むしろ、叱ることで興奮性を高め、噛む問題を悪化させてしまっていることもあります。
マズルを掴むは大問題!
体罰を用いたしつけは、犬に恐怖感を与え、防衛的な噛みつきを増やしてしまいます。
「キャン!」というまでマズルを強く握るというような体罰的な方法が知られていますが、これは、手に対する恐怖感や葛藤を高め、手に対する噛みつきを増やしてしまいます。
手の接近や飼い主に恐怖が関連づいてしまうと、恐怖から、血が出る程の噛みつき、犬歯が刺さる程の噛みつきに発展していきます。
噛んだら「無視」は、余計にひどく噛むように
噛む行動を無視すればいいのか?というと、そうでもありません。
例えば、子犬が飼い主さんの関心を引こうとして咬んでいる場合、無視しても、犬はより強く噛みます。飼い主の方もあまり強く咬まれれば無視できなくなり、「痛い!」「やめて!」と言いながら、噛みつきに反応してしまいます。
結果として、犬は「弱く噛んでも相手をしてもらえないけど、強く噛めば相手してもらえる」と学習し、より強い噛みつきを学習させることになります。
「痛い!」も逆効果になることも
子犬を撫でようとすると噛む場合、多くの子犬は飼い主の手と遊びや興奮を関連付けています。しかし、飼い主の手の接近に対して嫌悪感を抱いて逃げたくて噛んでいる場合もあります。これに対し、飼い主が「痛い!」といって、その場を離れるという対応をしたら、犬は「噛めば、手が逃げていく、嫌なことが終わる」と学習し、余計に咬むようになるでしょう。
噛まれる前に「予防」する
噛まれたら止めさせるのではなく、噛む行動がどのような原因で起こっているか明らかにし、噛む行動が起こらないように予防することが大切です。
噛む行動がどのような状況で、どのような動機づけによって発生しているかを考え、噛む行動の必要性をなくす(動機づけをなくす)ことの方が重要です。
噛み癖の「しつけ」いつから?
子犬の噛み癖に対するしつけは、早すぎるということはありません。今すぐに始めるのが正解です。
犬にとって噛むことの意味を大切にする
噛むからといって、すべてが悪い噛みつきではありません。犬はもともと、兄弟犬や母犬と噛みあってコミュニケーションを図る動物です。当然、噛むというコミュニケーションを人に対しても行うため、それが人には「噛み癖」と認識されてしまいます。
犬にとって、噛む行動は、発達に必要であり、人との生活においても、噛む行動を十分に行わせ、噛む欲求を満たすべきです。これが「発散のしつけ」です
適切な物を噛ませるしつけ
しかし、子犬の噛む行動を人の手に対して行わせてしまうと、人の手は傷だらけになってしまいます。噛み癖で困っている人の多くが、手や足など人の身体の一部を噛まれて困っていると思います。
犬が噛みたい欲求を満たしながら、人の手や足を噛まれないようにするためには、「適切な物を噛ませる」ことが大切です。
適切な物とは、引っ張りっこをするロープや、ボール、コング・ガジィといった知育トイなどをしっかり活用し、適切な物を十分に噛ませるようなしつけを実践すべきです。
適切な物を噛むしつけは今スグ始める
噛む欲求を満たすだけでは、噛み癖を直すことはできません。
噛み癖を直すためのしつけは、「噛ませないために叱る」しつけではありません。そうではなく、犬が人と落ち着いたコミュニケーションをとることができるように「教える」ことです。
犬に適切な行動を教えていないと、犬は適切な行動がわからず、本能的な行動が優位になり、噛む行動が増える結果となります。
子犬には、人との生活の仕方を教えなければなりません。それは早いに越したことはありません。今すぐしつけを始めましょう。
噛み癖はいつまで続くのか?
理由により時期は異なる
噛み癖は、噛む理由によって、いつまで続くか変わります。子犬がなぜ噛んでるかに目を向けることが大切です。
歯の生え変わりで痒い場合
歯の生え変わりで歯茎が痒く、物や家具をかじる行動が強い場合、およそ5~6か月で歯の生え変わりが落ち着くころまで続きます。
興奮して遊び噛みをする場合
子犬の時期は、遊び欲求が高く、遊び噛みをすることも多くなります。
年齢に合わせて徐々に遊び噛みの程度は少なくはなりますが、個体差があり、6か月で徐々に減る場合も、2~3歳でも遊び噛みが多い場合があります。
飼い主のリアクションが面白く、遊び好きの場合、なかなか直りません。
関心を引くために噛む場合
関心を引くために噛む場合、噛むことで飼い主の関心を引けている限り、2~3歳になっても噛み続けるでしょう。噛まれない適切な対応をすれば、減っていきます。
触られるのが嫌で噛む場合
適切な対応を行わなければ、徐々に悪化していく噛みつきです。血が出る程噛むようになるのはおよそ10か月~2歳ごろが多いですが、どんな年齢でも強く噛む可能性はあります。適切な対応をせずに放置しても、収まることはないでしょう。