子犬が狂ったように噛むとのこと、ご苦労されていることと存じます。

噛みつきの対応を行うためには、何が原因で噛まれているかを行動の発生状況から推測する必要がございます。噛む行動に対して罰を与えることで止めようとするのは、あまりうまく行く方法ではありません。噛む前の状況、噛む原因を精査し、原因を取り除くことが大切です。

子犬の噛みつきを大きく分けると、以下の7パターン程度に分かれるかと思います。

  • ①ケージから出て、自由にしている時に、飼い主さんが構っていない時(携帯やテレビを見ている時など)に噛む
  • ②ケージから出て、自由にしている時に、ひとりで走り回って興奮した後に噛む
  • ③ケージから出て、飼い主と遊んでいる時(ロープ遊び)に、興奮が強くなって噛む
  • ④ケージの中や外で、飼い主が撫でようとしたときに噛む
  • ⑤ケージから出て、飼い主が抱っこしようとしたときや、ブラッシングをしようとしたときに噛む
  • ⑥フードを与えた際に唸り、手を出すと噛む
  • ⑦靴下やティッシュなどの食べてはいけない物を守って噛む

くらいのパターンがあります。

ケージから出て、自由にしている時に、飼い主さんが構っていない時/ひとりで走り回って興奮した後に噛む

もし、①②場合、飼い主さんが見ていない時にケージから出て、自由にしていることで、興奮が起こってきます。そもそも、子犬は、ケージから出して遊ぶ際には興奮するのが普通です。興奮した際に咬みついてくるかどうかには個体差はあります。

ケージから出す際に何も目的を与えずに「どうぞ、あなた(犬)の自由にしていいですよ」という形で出してしまうと、犬の方は「面白いことがないから興奮して走り回ろう!」と考えます。そうするとリビングの中で運動会が始まってしまい、興奮することで、咬みつきが助長されます。

噛みつきをおさえるためには、子犬に集中するものを与える必要があります。ケージから出た際に、何か目標となる事であったり、子犬が関心を向けるものがあれば、走り回って興奮するのではなく、集中して落ち着きます。多くの子犬は、フードに関心を持っていますから、フードをうまく使うことが大切です。

一つは知育トイを与えることです。知育トイとは、フードを入れることができ、転がすとフードが出てくるオモチャのことです。これに集中させることで、興奮や噛みつきを抑えることができます。

また、飼い主さん自身が手にフードを持っておくことも大切です。フードをお皿から与えるのではなく、1粒ずつ手から与えるようにすれば、そちらに集中するため、興奮は弱くなります。

さらに、その中でトレーニングしていくことで、犬が勝手に興奮しないようにして、飼い主さんと関わりながら、落ち着いて行動できるようにすることが大切です。

犬を出している時にスマホをやる、テレビを見るという暇はないと思ったほうが良いでしょう。そうした他ごとをする場合は、一旦ハウスに戻します。飼い主さんが集中していられる場合に出すようにしましょう。

またハウスリードを装着することで、ハウスから出た際に走り回って興奮することを防ぐことができます。家の中でもリードを着けるというのは、あまり馴染みがないかもしれませんが、リードをつけることで行動範囲を狭くすることができ、走り回って興奮するという状態を減らすことに繋がります。首輪やリードに馴れ、散歩の練習にもつながります。早く散歩に行けるようになれば、散歩時に発散させることもできるでしょう。

ケージから出て、飼い主と遊んでいる時(ロープ遊び)に、興奮が強くなって噛む

③の場合は、咬まれたら遊びを中断するようにすると良いでしょう。その場合は、強く咬まれた場合だけ遊びをやめようとするとなかなか伝わらないので、遊びをやめる判定は厳密にすべきです。耐えられなくなったら遊びを中断するという形だと、犬は、飼い主さんが耐えられなくなるまでは噛んでもいいと覚えてしまいます。そもそも、犬が遊びの中で手を咬むこと自体は、子犬の行動としては正常です。正常な行動であるという認識を持ったうえで、飼い主さんとしては噛むのはやめてほしいということを伝えていくことが大切です。噛んだら遊びが終わってしまったという状況にすると、遊びの中で噛みついてくる行動は減らすことができます。

ケージの中や外で、飼い主が撫でようとしたときに噛む

④のパターンの場合、飼い主さんが触ろうとしたときに咬むということですから、飼い主さんの手が近づくことに対して、ドキドキしたり、興奮したりしている可能性が高いです。その場合、なぜそうなるかというと、撫で方が激しかったり、元々撫でられるのが苦手だったりすることが挙げられます。犬は撫でられるのが好きと思わがちですが、必ずしもそうではありません。撫でられることをくすぐったいと感じていたり、うざいと感じていることもあります。あるいは手が出てくると遊びが始まると思って興奮する犬もいます。複合的に、くすぐりっこ遊びが始まると感じて興奮する犬もいます。

この場合、まずは撫で方を考え直す必要があります。大抵は撫で方が、その犬にとって激しすぎるということがあります。正面から撫でることは興奮を呼びますので、正面から撫でるというコミュニケーションは控えたほうがいいでしょう。撫でる場合は、ハンドリングと言って、撫でることに馴らす練習が必要です。基本は、オヤツを手に持って、オヤツを食べさせながら撫でることで馴らしていく方法ですが、これは犬によってやり方や強度がまちまちですから、トレーナーや行動学を学んだ獣医師のの指導を直接受けることをお勧めします。

ハウスから出て、飼い主が抱っこしようとしたときや、ブラッシングをしようとしたときに噛む

リードを着けようとすると噛む、捕まえようとすると噛むなどがこれにあたります。よつまり拘束を嫌がって噛むということです。ブラッシングをしようとすると噛むということも同じで、拘束されることを嫌がって噛んでいる状態と言えます。④のパターンから発展して、⑤のパターンになる事がよくあります。また、体罰的な方法(マズルを掴んでキャンと言うまで強く握る/仰向けにして大きな声で叱る)といった方法を取ると、拘束に対する恐怖感が強くなり、⑤のパターンが現れやすくなります。

これは、かなり強い噛みつきに発展する可能性が非常に高い噛みつきで早急な対応が必要です。口を押えて叱るという方法など、手に対する嫌悪感を繰り返し教えている状態にある場合、飼い主様と愛犬の関係をより悪化させる対応ですから、絶対に実施しない方が良いですし、すぐに中止すべきです。

⑤のパターンは、噛めば嫌な事が終わると学習するため、特に深刻化しやすく、繰り返せば、触れなくなるほど噛むようになるパターンでもあります。是非、早急にお近くの専門家に、実際に相談に行っていただく事をお勧めします。体罰的な方法で押さえつけるのではなく、犬の不信感をなくしていくためのトレーニングを行う専門家の方に相談されると良いでしょう。

フードを与えた際に唸り、手を出すと噛む

柴犬などの日本犬に発生しやすい深刻な攻撃行動です。フードに対する執着が非常に強く、フードを守ろうとして唸ったり噛んだりします。フードを守らなければならないという緊張感から、すぐに食べることができず、飼い主さんが離れると食べるという犬もいます。

この場合、フードをお皿に入れて与えるという方法を行うと、唸ることが増えていく傾向にあります。可能であれば、フードを手から与えるようにすると、唸ることがなくなることがあります。但し、手から与えても、その手に噛みついてくる場合があるため、慎重に実施すべきです。手から与えて問題ないようなら手から与えましょう。

また、家の中で与えると守りやすいということもあります。散歩中に与える、庭で与えるといった形で、常に同じ場所でフードを与えないようにする、少しずつ与えるようにするという対応で、守りにくくなることがあります。

いずれの場合も、強い危険の伴う攻撃行動ですから、実施には慎重を期し、安全第一で行うべきです。フードを守って唸る噛むという行動は悪化しやすい傾向にありますから、早急に専門家に相談すべきです。

悪化すると、手から与えるという方法を用いると、強い葛藤を生じて攻撃的になる事がありますので注意が必要です。

靴下やティッシュなどの食べてはいけない物を守って噛む

このパターンは、深刻な噛みつきとして多くの犬種でよくみられるものです。ティッシュや靴下を持って行き、守ろうとする行動です。

無理やりに取ろうとすると、奪われまいとする意図から、より強い攻撃に発展し、また唸る事で守れた経験から、攻撃行動が繰り返し発生するようになります。

対応としては、第一に、守るようなものを置かないことです。物を取れなければ守る事はありません。

第二に、守ってしまった場合は、オヤツと交換することです。一方的に奪われるのではなく交換であれば、犬も納得しやすくなります。

第三に、放してを教えることです。価値の低いおもちゃを与えて、「放して」と言って話したらオヤツを与えるということを行います。オヤツを与えたあとは、必ずそのおもちゃでもう一度遊ばせます。徐々に価値の高いおもちゃでも放せるようにして、しだいに、ガムなどすぐに食べられない価値の高いオヤツでも放せるようにしていきます。