犬は必要があって噛んでいる

ウチの犬はなぜ噛むのか?と疑問に思う方も多いと思います。意味もなく噛んでくるんです、突然噛んでくるですと言われる飼い主さんも多くいます。しかし、ほとんどの場合、犬は何かしらの理由があって噛んできています。

特に強く噛んでくる原因で一番多いのが、防衛的な行動です。先日相談を受けた噛みつきでは、小型犬の飼い主さんが膝の上であおむけに抱っこし(頭が飼い主の膝頭側、足が飼い主の腹側)た状態で前足を拭いていたら噛まれたというもので、血が出るくらい噛まれたとのことでした。飼い主さんとしては「突然噛んできたのでなぜ噛まれたか分からない」とおっしゃっていました。そしてカウンセリング中も同じ体勢で犬の足を揉んでいたのです。

その状況を見たところ、犬が明らかに顔を逸らして嫌な表情をしていました。さらにカウンセリングを進めていくとトリミングサロンでも前足を触ると嫌がることがあるということが分かりました。つまり、飼い主さんにとっては突然で何が理由か分からなかったとのことですが、明らかに犬にとって嫌な状況、変な体勢で抱っこされることと何かしらの理由で触られることが嫌な前足を触られていることが、噛みつきの原因だったわけです。

飼い主さんには、犬にとって嫌な体勢をわざわざとらないようにアドバイスして納得していただきましたが、このように飼い主さんにとっては「突然噛んだ」と思っている状況でも、犬にとっては正当な?理由があって噛みついているということがほとんどなのです。

噛むとは犬の意思表示

噛むという行動は、何かしら犬の意思表示である場合がほとんどです。

大切なものを取られたくない、ゴハンを守りたい、触られるのが嫌、ブラッシングをされたくない、拘束されたくない、リードを奪いたい、自分の安心できる居場所を守りたい、侵入者への威嚇、など様々な理由が考えられます。心当たりがある方もいらっしゃるかと思います。

「犬なんだから我慢して当然でしょ?」と思っていると、こうした理由に気付いていても、それを犬の意思表示と捉えずに、屈服させるべきものとして捉えてしまうかもしれません。しかし、犬は意思のある生き物ですから、怖いという感情や、嫌だという感情もしっかりと存在します。まずは、噛むということは、この犬は何らかのメッセージを伝えようとしていることを理解しなければなりません。

例えば、飼い主さんがソファーに座っている時に、隣で寝ている愛犬をなでると噛むというパターンはどうでしょうか?「寄り添ってきて撫でてほしそうだから撫でたのに噛まれた」と言う形で相談されそうなパターンですね。しかし、単純に考えてソファーの上で寝ている犬をなでたら噛まれたという部分だけ取り出してみますとどうでしょうか?おそらく触られたくなかったのでしょうね。なぜ触られたくなかったのか?それは、居心地の良いソファーと言う居場所を奪われたくなかったからかもしれません。

このように犬がどのような意思表示をしているか分かれば、対処もできる様になります。ソファーの件では、まずソファーに乗せないようにすることで守ることを防ぐことが出来ます。同時にソファーと同じかそれ以上に居心地の良い居場所を作ってあげることも必要でしょう。犬は居心地の良い場所が欲しいわけですから、その意思を尊重する形で、共生できる方法を探っていく必要があるわけです。

犬の攻撃行動の種類

では、犬の攻撃行動の種類を動機づけの観点から分類するとどうなるでしょうか?列挙していきましょう。

・恐怖性/防衛性攻撃行動
飼い主や知らない人から、何かされることに対して、恐怖心を抱いたり、防衛のために攻撃行動を取ること。触ろうとすると噛む、ブラッシングをしようとすると噛む、首輪を持つと噛むというのは恐怖性/防衛性攻撃行動であることが多い。

・所有性攻撃行動
自分の大切に思っているものを取られまいとして攻撃行動を取ること。大切なおもちゃを守ろうとしたり、飼い主の持ち物を奪って守ろうとしたりして、唸ったり噛んだりする。普段は得られないけれど、不意に獲得したものの方が価値が高い傾向にあり、価値が高いものであればあるほど攻撃行動が強く出ることになる。

・縄張り性攻撃行動
自分の縄張りを守るために攻撃行動を取ること。外飼いの犬でゲージやサークルの近くを知らない人が通ると唸るなどのパターンは、縄張り性攻撃行動であることが多い。室内飼育でも警戒心が強くなっている場合に、家族がゲージのそばに近づくと唸る手を出すと噛むということもあり、恐怖性/防衛性攻撃行動と併発する形で縄張り性攻撃行動が出現することがある。

・食餌関連性攻撃行動
フードボウルを守ったり、フードそのものを守って攻撃行動を取ること。フードが1粒でも落ちていると守ろうとすることもある。フードボウルを守る場合は、空のフードボウルでも守る場合もある(所有性攻撃行動と併発)。

・同種間攻撃行動
犬同士の攻撃行動。犬に対する恐怖心によって攻撃行動が発生する。社会的地位を巡る争いによっても発生します。