柴犬の特性とは?
柴犬は葛藤状態に陥り、攻撃に転じやすい
柴犬が噛む原因として、葛藤に弱いという側面があります。
特に、トレーニングを受けていない犬が葛藤が処理できにくいのは、人間の子どもと同じです。人間は成長に伴い、子どもに見られるような感情的な行動は少なくなっていき、協調的な行動をとることができるようになります。しつけやトレーニングは、葛藤を処理し、飼い主と協調的な行動がとれるようにする力を向上させます。
柴犬は、独立心が強く、自己主張が強い
また、柴犬をはじめとした日本犬は、人に頼ったり、依存する傾向が低く、独立心の強い犬種です。それが魅力でもあり、自分が決めたことを曲げにくい性質から、攻撃行動も起こりやすくなっています。
柴犬は、ゴハンに関連した攻撃行動が多い
また柴犬では、食事に関連して発生する攻撃行動が多くありますが、食事の与え方などによっても葛藤が強くなります。フードを目の前に置くと、そのフードを自分の所有している資源と認識します。安心して食べられる状況が欲しいにも関わらず、飼い主家族が近づいてくると落ち着いて食べられず、それが葛藤を生じて攻撃に転じることがあります。
遺伝的に攻撃を生じやすい個体も
あまりに強い攻撃、突発的な攻撃は、遺伝的な素因により、脳が葛藤状態を処理しにくい気質を持っていると考えられます。柴犬はもともとオオカミに最も近い犬種であり、家畜化の程度が低いです。家畜化の程度が低いということは、人への親和性が低い遺伝子が残っているという意味でもあります。葛藤に弱い個体がいる、人に合わせるのが苦手な個体がいるのは、そうした行動特性に関連する遺伝子が、遺伝子プールの中に残っているということです。
脳機能の異常(異常行動)による攻撃行動
噛む行動は、本来、犬自身の身を守るため、犬自身の利益を守るために行われるの正常な行動です。しかし、そうした意図・目的にそぐわない場面で噛む行動が発生することもあります。
それは、犬が正常な判断を欠いており、正常な脳機能ではない状態にある可能性があります。
例えば、人間でも、うつ病のような精神疾患を発症します。犬でも、持続的なストレス環境下に置かれることで、そうした精神状態になる事があります。うつ病は脳内の神経伝達物質の枯渇や不均衡、脳神経細胞の死滅・萎縮などによって発生しますが、犬でも同様の変化が起こりえます。そのような場合、犬は正常な判断ができず、異常な行動をとる可能性があります。
正常行動か、異常行動かを判断することは容易ではありませんが、特に以下のような特徴がある場合、注意が必要です。
- 日によって表情が違い時に目が座ったような表情をする
- 普段は出てくるのに、たまにケージから出てこない日がある
- フードを出すとフードに対して唸る
- 寝ている時や、深夜に、突然唸りだす
- 尻尾に向かって唸る、尻尾を噛んで血が出る
- なんのきっかけもないのに、突然唸りだす
もちろん、噛む犬の中では、こうした異常のない犬の方が多いわけですが、それでも、以上のような異常があるかもしれません。あらゆる可能性を考慮に入れて、原因を考えていく必要があります。
心身の疾患に対しては、獣医師の出番
こうした問題に対しては、一般的なしつけだけでなく、獣医師による心身の疾患の診断と治療が必要となります。そうした心と行動の治療を専門的に行う診療科が「獣医行動診療科」です。
獣医行動診療科では、問題行動の診察を進める際に、第一に身体疾患の除外からスタートします。
例えば、お腹が痛くてケージから出てこないという状況があり、その時に飼い主が触ろうとすると噛むということがあります。関節などの痛みでも同様に、痛みから噛みつきが起こります。また、何のきっかけもないのに突然唸りだすなどの状況では、てんかんなどの神経疾患の関与があるかもしれません。
『噛み癖』=『しつけの問題』と考えがちですが、必ずしもそうではなく、まずは心身の問題を検討するということが大切です。
詳しくはこちらをご覧ください。
https://tomo-iki.jp/shiba-problem/1582/
獣医師への相談は、一般の動物病院ではなく、行動学を専門に学んでいる、行動診療を行っている動物病院にご相談ください。