症例 タロウ(仮) 柴 13歳齢 雄
最近、少しぼーっとすることが増えました。壁を見つめて立ち尽くしているところをよく見ます。なるべく声掛けをしているのですが、声をかけてもあまり反応しないので、手を叩いたり、身体を撫でたりすると、ハッと気づく感じです。先日、動物病院で相談したら認知症の初期化かも…と言われました。ぼーっとしている時はどうしてあげたら良いのでしょうか?
回答:声掛けやコミュニケーションは増やしていこう
認知症の初期症状として、飼い主や同居動物との社会的交流の減少が見られることがあります。ただ、ぼーっとすると飼い主さんが感じている行動が、「声をかけても反応しない」というような行動である場合、認知機能は正常でも、聴覚機能が下がっており、聞こえていないために、ぼーっとしているように見えるということも考えられます。認知症症状として、壁や床を見つめてぼーっとするという症状も出るので、認知症症状と聴覚障害が同時に起こっている可能性もあります。また、立ち尽くすと言う症状が、実は関節などの問題でオスワリしにくくなっていると言う可能性も否定できません。13歳になってくると、認知機能に限らず、様々な身体機能が衰えてきますので、本当に認知機能の低下なのか?という点については、総合的に判断していく必要があります。
高齢犬であっても、通常の睡眠であれば、わざわざ起こすようなことは必要ありませんが、立ち尽くしてしまっている時には意識がはっきりしていない状態の可能性があります。声掛けではなく、身体をさするといった刺激を与えることで気づき、元の状態に戻るのであれば、身体を触って刺激を与えてあげるのが良いと思います。認知症症状の緩和と言う側面においても、刺激を与えていくことは大切です。耳が聞こえにくくなっているようなら、視覚・触覚・嗅覚と言った別の刺激を与えてあげましょう。また、音への反応が弱くなっている場合、飼い主さんとのスキンシップは、良いコミュニケーションになりますから、犬が好意的に受け止めてくれるようなら是非増やした方が良いでしょう。一方で、感覚器官が衰えることや、痛みが生じることで、頭を撫でたり、身体を触ったりすることに敏感になっている場合は、無理にスキンシップを増やす必要はありません。あくまでも犬とのコミュニケーションは、犬が安心できる状態で行うことが大切です。
認知症症状が生じている状態では、身近な人を認識できなくなることもあります。だからこそ、今まで以上にコミュニケーションを大切にしてもらうと良いと思います