症状が進行する前からサプリメントを与えるというのは少しハードルが高いと感じる飼い主さんもいらっしゃると思います。そこで、日々食べる食事で認知症の予防ができたら、それに越したことはありませんよね。
ヒトでも犬でも、食事の内容は、認知症の予防に大きな影響があります。炭⽔化物の多い食事、過剰なカロリー摂取、⾼⾎糖、肥満、オメガ3⽋乏症、ビタミンB⽋乏症は、ヒトでも犬でも認知症を進行させます。逆に、ココナッツオイル等の、中鎖脂肪酸(MCT)を豊富に含む食品や、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を多く含む魚類は、認知機能低下のリスクを下げることが知られています。また、天然の抗酸化物質であるカロテノイドやフラボノイドが含まれる果物や野菜は、犬の認知機能維持に影響していることが分かっています。新鮮な魚、果物、野菜を含んだ、バランスの取れた手作り食を与えることは、犬の認知症予防に有益であると言えます。
とはいえ、手作り食はなかなかハードルが高いという方も少なくないでしょう。その場合、魚、果物、野菜を、総合栄養食(ドッグフード)にトッピングするという方法もあります。トッピングを行う場合には、毎日魚ばかりトッピングするというような、特定の食材に偏らないように気を付けましょう。今日は魚、明日は果物、明後日は野菜といったような形で、様々な物を与えることで、栄養の偏りを防ぐことができます。
ドライフードだけを与える場合、酸化したフードを与えるのか、新鮮なフードを与えるのかという部分は特に気を付けるべきです。ドライフードの中には、『不飽和脂肪酸が多く含まれた赤みの肉をたっぷり使ったフードです』と記載されているものがありますが、「不飽和脂肪酸が入ってるから安心!」と、その部分にだけ注目して、不適切な保存方法を取ってしまえば、全く意味がなくなります。
不飽和脂肪酸自体は、抗酸化物質であり、摂取すれば酸化ダメージを軽減する作用が期待できます。しかし、封を切って、高温多湿・日のあたる場所で放置してしまえば、急激に酸化が進行して行きます。不飽和脂肪酸の酸化は、食品が置かれている温度が高い方が早く、水分が多い方が早い傾向にあります。ドライフードを開封した場合、空気と触れ合うことで、空気中の水分を吸って湿気ってしまいますし、特に夏場は温度が高く、不飽和脂肪酸の劣化スピードが早くなります。封をあけてから1か月も空気中で放置するというのは適切ではありません。なるべく早く食べきる小さな袋で購入することや、大袋であれば、密閉できる袋に小分けにして、冷暗所に保存するといった形で、できるだけ酸化を防ぐようにした方がいいでしょう。