犬の本気噛みに悩む飼い主さんは、どうにかしたいと思い、様々な情報を検索されていると思います。特に直接サポートしてくれるトレーナーを見つけられるかどうかは、生活を立て直していくうえで非常に重要な要素です。

しかし、本気噛みはなかなかよくなりません。トレーナーにみてもらったからといって、改善するかどうかは、普段の生活を共にする飼い主さんの対応能力に大きく影響を受けます。

それに加えて、本当に「しつけの問題」だけで起こっているのか?という視点も必要です。犬が本気噛みをするとき、体の痛みが関係することが良くあります。脳の過敏性が非常に高い(人間でいえば発達障害のような脳機能を持つ)犬では、小さな刺激に過剰に反応することがあります。

痛みがあったり、過敏性が高かったりすれば、通常のトレーニングではうまくいきませんし、そもそも、痛みや過敏性という基礎的な問題をクリアしなければ、トレーニングによる学習が効果を発揮できません。

そこで重要なのが、血が出るような、犬歯が刺さるような、本気噛みについては、トレーナーだけに相談するのではなく、行動学を勉強している獣医師にも相談するということです。

本気噛みに対してトレーナーができること

飼い主の接し方の見直し(きっかけをつくらない)

本気噛みに対して、トレーナーができることとしては、第一に飼い主さんの接し方に問題があれば、それを修正していくという部分が挙げられます。

本気噛みが起こる原因は多様ですが、特定の犬が本気噛みする原因はそれほど多岐にわたるわけではありません。

例えば、しばらく撫でていると本気噛みする、首輪を触ろうとしたら本気噛みする、ゴハンを食べているときに手を出すと本気噛みする、リードのつけ外しで本気噛みするなど、本気噛みするパターンはおおよそ決まっています。

このような本気噛みのパターンがどのような組み合わせで発生しているかということを分析することはトレーナーの役割の一つです。

また、リードのつけ外しや、ゴハンの与え方については、いつも行っているリードのつけ外しの方法や、いつも行っているゴハンの与え方が攻撃のきっかけになっているとしたら、いつものパターンが悪い学習につながっているかもしれません。

このように、本気噛みが発生するきっかけやパターンを分析し、それが飼い主の接し方に起因しているようなら、その関わり方を修正していくことで、本気噛みの発生を防ぐことができます。

こうした対応は、トレーナーの役割です。

本気噛みに対してトレーナーができないこと

トレーナーではできないことは、①身体疾患の鑑別、②薬物療法、③外科療法です。

身体疾患の鑑別

痛みがあると本気噛みが発生しやすいということは先に述べたとおりですが、実際に痛みがあるのかどうか、骨格に異常があるのか、痛み止めを使ったときに行動に変化が現れるのかなどを調べるのは獣医師の役割です。

痛みだけでなく、慢性的な痒み、ホルモンの疾患や、神経疾患、消化器系の疾患が攻撃行動を悪化させていることはよくあります。こうした身体の問題を調べ治療することで、問題行動が改善することがあります。

薬物療法

犬の過敏性が非常に高く、ちょっとでも刺激すると強い攻撃を生じるような状態ではトレーニングはかなり難しく、特に、普段接する飼い主さんが対応することはほぼ不可能であるということも少なくありません。そもそも、本気噛みの場合、飼い主さんに危険が及ぶので、積極的なトレーニングがそもそも難しいという側面もあります。

そんな時に、薬物療法を実施することで、犬の過敏性・衝動性を下げることができます。より具体的には、情動の高ぶりを抑えることができます。

本気噛みに対して、薬物療法を行うと、噛む頻度や程度を減少させることができます。飼い主さんからよく聞く言葉が「今までなら、犬歯が刺さるくらい噛まれていたけど、今回は、みみず腫れくらいで済んだ」「いつもなら繰り返し3回咬みついてくるのに、今回は1回で済んだ」「いつもなら、近くを通るだけで唸るのに、最近はそれがなくなった」というものです。

薬物療法は、本気噛みの対応において、非常に重要な意味があります。これを行うには、トレーナーと獣医師の連携は必要不可欠です。

外科療法

外科療法とは、去勢手術や避妊手術、犬歯抜去術を指します。本気噛みでは、去勢手術や犬歯の抜去が行われることがしばしばあります。

去勢手術は直接的に攻撃行動を減少させるわけではありませんが、マーキング行動など、雄性ホルモンが関係した行動を減少させます。犬同士の攻撃行動など、雄性ホルモンの影響の大きい行動では、去勢手術が推奨されます。

犬歯抜去術については、攻撃行動が繰り返されている家庭では、選択肢の一つになります。犬歯を削るもしくは犬歯を抜くことで、攻撃が発生した際の攻撃力を下げ、飼い主家族の負担を軽減させることができます。とはいえ、犬歯を削っただけだと、噛まれれば打撲になりますし、血が出ることもあことに注意が必要です。犬は犬歯がないと物を持つことが難しくなることがあります。

このような外科療法も、本気噛みの治療では必要となることがあります。そうした面でも、トレーナーと獣医師の連携は不可欠です。

相談できるトレーナーを探す

獣医師の連携は不可欠としても、相談できるお近くのトレーナーを探す必要があります。しかし、どのトレーナーに相談したらいいのかわからないという方も多いと思います。

各トレーナーの団体がトレーナーリストを公開しておりますので、参考にされるとよいかと思います。

日本ペットドッグトレーナーズ協会(JAPDT)

日本動物病院協会(JAHA)

https://www.jaha.or.jp/owners/dog-class

日本ドッグビヘイビアリスト協会(JDBA)

https://www.j-dba.com/cetificate

トレーナーと連携できる獣医師の探し方

トレーナーと連携し、行動学的な知見からサポートができる獣医師として、行動診療科の獣医師が挙げられます。行動診療科は、本気噛みを含む、問題行動の治療を行う診療科です。

日本獣医動物行動研究会

日本獣医動物行動研究会は、行動診療を行う獣医師の集まりです。研究会から、行動診療科の獣医師リストが公開されていますので、ぜひ参考にしてください。

行動診療を行う施設(地域別一覧) | 日本獣医動物行動研究会

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