今回はMajaらによって2021年に発表された下記論文をご紹介します。
”Treatment of canine cognitive dysfunction with novel butyrylcholinesterase inhibitor”
(新規ブチリルコリンエステラーゼ阻害剤によるイヌの認知機能障害治療)

Abstract

犬の認知機能障害(CCD)は、高齢の犬に多く見られ、アルツハイマー病と多くの類似点がある。
残念ながら、CCDはアルツハイマー病と同様に完治することはできない。
今回、我々は新たに開発したブチリコリンエステラーゼ阻害剤(BChEi)を用いてCCDを持つ犬を治療した。

方法
17頭の犬を2群(BChEi投与群と未投与群)に無作為に分け、6ヶ月間の定期検診で経過を観察した。
犬の認知状態は、Canine Dementia Scale(CADES)質問票と2つの認知テストによって決定された。

結果
中等度の認知機能障害を有する犬において、治療により、未治療群と比較して、認知能力の臨床的評価および認知機能の主観的評価テストに有意な改善が認められた(p<0.001)。
BChEiを投与された犬では、認知機能の顕著な改善とQOL(生活の質)の向上が認められた。
また、中等度の認知機能障害を有する犬において、副作用は認められなかった。

結論
この予備的研究の結果によれば、新規のBChEiは犬のCCDの治療薬として有望であり、ヒトのアルツハイマー病の治療薬として興味深い候補である可能性が示唆されます。
しかし、これを確認するためには、さらなる臨床試験が必要である。

※www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳し、微修正しました。

本文献からわかること

本論文は新しいタイプの犬の認知症治療薬の検討を目的としており、その効果が認められたとしています。
人のアルツハイマー型認知症にて、脳内のアセチルコリンの不足が指摘されており、代表的なコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジルがアルツハイマー型認知症の治療薬として認可されております。

一方で、アルツハイマー型認知症が進行することでアセチルコリンエステラーゼ活性が下がり、代わりにブチリルコリンエステラーゼ活性が上がるといわれています。
そのため、ブチリルコリンエステラーゼを阻害することで、脳内のアセチルコリンを増加させられる可能性があるという理論が根拠になっております。

本研究においては、リバスチグミンを認知機能不全を呈した犬に投与した際、優位に認知機能評価の改善がみられたとのことでした。
ただし、重度の認知機能不全症例に投与した際に、副作用にて強い嘔吐がみられたため、中等度の認知機能不全の症状との比較になったようです。

効果、副作用、薬物動態など様々検討すべきことはあるようですが、それでも本研究にて認知機能の改善がみられたことは、犬にもブチリルコリンエステラーゼ阻害薬の可能性を示せた結果となったのではないでしょうか。

ちなみに、人の方で認知症治療薬として認可されているブチリルコリンエステラーゼは リバスチグミン のみで、経皮吸収型のパッチタイプのみです。