3/26 は 「パープルデイ(てんかん啓発キャンペーン)」
アイキャッチ画像の紫色のリボンはパープルデイを表したものを使用しました。
今回は、Rowenaらが2018年に発表した下記論文をご紹介します。
”Cognitive dysfunction in naturally occurring canine idiopathic epilepsy”
(自然発症の犬特発性てんかんにおける認知機能障害)
Abstract
てんかんは、世界的にみても一般的な重篤な脳疾患である。
てんかんは、発作のほかに、発症時に存在する静的な認知機能障害、発作によって誘発される進行性の障害、認知症の併発などの認知機能障害と関連している。
てんかんは家庭犬にも自然に発生するが、犬認知機能障害(CCD)は認知症の自然発症モデルとして認められているにもかかわらず、その認知機能への影響についてはまだ研究されていない。
本研究では、「年齢を考慮しながら特発性てんかん(IE)と診断された犬」と「対照犬」の認知機能障害を比較するために、犬認知機能障害評価(CCDR)スケールのデータを使用します。
オンライン横断研究の結果、4051頭の犬サンプルが得られ、そのうちn=286頭がIEと診断された。
CCDの診断(診断カットオフ値 CCDRのスコア:50以上)には、4つの因子が有意に関連していた。
(1)てんかんの診断:IEのある犬はリスクが高い
(2)年齢:高齢の犬ほどリスクが高い
(3)体重:体重の軽い犬が高リスクである
(4)トレーニング歴:トレーニングを多く行った犬ほどリスクが低い
記憶力の障害は「IE群」に最も多く見られたが、「対照群」と比較して障害の進行は見られなかった。
また、「IE群」は若年でCCD発症のリスクが高く、「対照群」は中年期を通じて低リスクで、老年期にはリスクが指数関数的に増加するという予想されたパターンに従っていた。
「IE群」では、群発発作の既往があり、発作頻度が高い犬ほどCCDRスコアが高かった。
今回のIE発症犬における認知機能障害の発症年齢、性質、進行は、古くからCCDで見られる性質とは異なっているように思われた。
このような認知機能障害の特徴をさらに明らかにするためには、発作発生から長期にわたる認知機能のモニタリングが必要である。
※www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳し、微修正しました。
本文献からわかること
てんかんと認知機能に関する研究で、直接的には犬の認知症とは関係ない論文ですが、非常に興味深い内容です。
認知症は加齢とともに認知症スコアが増悪することは知られていますが、IEにおいては若齢で認知機能不全が高く発生していることには驚きです。
ただし、若齢で高度の認知機能不全に陥っている症例は、寿命が短くなる可能性があるので、IE群の中で中年齢~高年齢の犬においてCCDRスコアが高くなかった要因の1つかもしれません。
また、てんかんの認知機能不全は進行性の経過を辿るわけではなさそうで、かといって抗てんかん薬を使用していても使用していなくてもCCDRスコアに有意な差はなかったと記されていることから、基礎疾患としてのてんかんの有無は脳神経の発達(特に記憶力)に関わる重要な疾患であることがわかります。
さらには、トレーニングを行っている群の方が、行っていない群に比べ、優位にCCDのリスクが低いことが示されていました。
過去の論文にも、トレーニングは神経を保護するように作用することが示唆されており、てんかんにおけるCCDにおいても有意にはたらくようです。
なので、てんかんであっても加齢に伴う認知機能不全であっても、トレーニングを行って頭を使うことは、病状進行の予防やQOLの改善につながる可能性がありますね!