愛犬が認知症になった時に、獣医師や愛玩動物看護師からの助言を受けることは、とても重要です。犬の認知症も犬の介護も初体験という方は少なくないでしょう。ベテラン飼い主さんであっても、認知症の子を何頭も見送ってきたと言う方はごく少数だと思います。犬の認知症を介護する飼い主はいつだって情報不足。専門的な知識と経験を持ち合わせた専門家からの助言は、犬と飼い主さんの穏やかな生活とQOLの向上に必要不可欠な要素です。

 「愛犬の認知症の相談は、どんな動物病院にすれば良いのだろう?やはり、行動学を専門にする動物病院の方が良いのかなぁ?」そんな疑問を持つ飼い主さんも少なくないでしょう。

 基本的には、一番愛犬のことを分かってもらっている、かかりつけの動物病院に相談するのがおススメです。やはりどのような基礎疾患があるのか、その子が過去にどのような病歴があり、どのような相談歴があるのかという情報を一番持っているのはかかりつけの動物病院です。家からの距離も近いでしょうし、高齢になれば、認知症以外の部分での相談も多くあるでしょう。日常的に負担なく通えることはとても重要です。最近は犬の高齢化により認知症になる犬も増えています。基本的に必要なことは、かかりつけの動物病院で対応してもらえますので、まずは、一番信頼できるかかりつけの動物病院で相談してみてください。

 その上で、より専門的な見地からの診断を受けたい、別の先生の見解を聞きたい、治療やケアの選択肢を増やしたいと考える方については、行動診療科のある動物病院での相談をお勧めします。行動診療科とは、内科、外科、循環器科などの診療科の一つで、動物(主に犬猫)の問題行動の診断・治療を行う診療科です。

 行動診療科を行っている動物病院は、『獣医行動診療科 地域別一覧』で検索すると出てきます(https://vbm.jp/region/)。このリストは、一般社団法人日本獣医動物行動学会が認定する有資格者が載っており、安心して行動診療を受診することができます。地域的には都市部の診療施設が多く、地方では少ないのが現状です。このリスト外の行動診療科を検索する場合、『獣医行動診療科 地域名』で検索すると病院がヒットする地域もあります。ぜひ試してみてください。

 日本獣医動物行動学会では、行動診療を行っている獣医師の中でも、特に行動学に精通し技術と経験を有している獣医師『獣医行動診療科認定医』を認定する制度を運営しています。2025年1月現在、全国で17人の認定医が認定されています。著者である私奥田も、獣医行動診療科認定医の資格を取得しています。しっかりと専門的な診断・治療を受けたい場合は、獣医行動診療科認定医の診察を受けるようにすると良いでしょう。

【獣医行動診療科認定医とは?】獣医動物行動学(動物行動学および臨床行動学)に精通し,行動診療を行うために必要な専門知識と技術,十分な診療経験を有しており,獣医行動学分野における最新知識の取得に務め,行動診療を通して動物と飼い主の幸福増進に貢献するとともに,獣医動物行動学分野の発展に寄与し,わが国における同分野の啓発と普及に貢献するための努力を惜しまない獣医師