留守番時のみ、吠え・破壊行動・排泄の失敗などの問題行動が認められた症例を紹介します。

ぎふ動物行動クリニック(岐阜・浜松・埼玉)の問題行動診療

犬のしつけ教室ONELife/ぎふ動物行動クリニック(岐阜本院・浜松分院)では、獣医行動診療科認定医の奥田順之が院長を務め、行動診療専属の獣医師が2名、CPDT-KA資格を持つトレーナーが2名在籍し、犬の噛み癖、自傷行動(尻尾を追って噛む、身体を舐めすぎて傷ができるなど)、過剰な吠えなどの問題行動の相談・治療に取り組んでいます。
岐阜本院では岐阜・愛知など東海地方を中心に、浜松分院では静岡県西部周辺地域(浜松、磐田、掛川、豊橋、新城など)を中心に診察・往診を行うとともに、全国からの相談に対応するために、オンライン行動カウンセリング預かりによる行動治療を実施しています。埼玉を起点とした関東近郊の往診も行っています。

また、岐阜教室・浜松教室にて対面でのパピークラス(子犬教室(初回無料))を実施しております。

岐阜・浜松・埼玉ともに、岐阜本院での一次受付を行っております。058-214-3442受付時間 9:00-17:00 [ 不定休 ]

お問い合わせ

動物の情報

  • Tちゃん:犬種パグ、3歳4ヶ月、性別去勢雄、体重約11㎏
  • 入手経路:ペットショップ
    • 5ヶ月半のときに迎え入れた

健康状態について

  • 特に問題なし

既往歴について

  • 外耳炎、雛壁皮膚炎

生活環境

  • 集合住宅
  • 家族構成:父・母・子(0歳)
  • 同居動物:なし
  • ハウス:ケージ
    • 180x120cm
    • 日中は自分から入ることもある、中で休んでいることもある

生活習慣

  • 食事:食欲あり
  • おやつ:よく食べる
  • 排泄:内外両方でできる
  • 留守番:今はお母さんが育休中なので少なく、週に2回・数時間程度
  • 散歩
    • 大好き
    • 人にも犬にも寄っていく
    • 電車など大きい音にはびっくりするが、吠えたり攻撃したりしたことはない
    • ぐいぐい引っ張るタイプ

<問題となっている行動について>

これまでの経緯・問題行動の発生状況

  • 留守番中の問題行動
  • 留守番中に観察される行動
    • 吠え続ける(30秒~1分程度のインターバルはある)
    • 破壊行動
      • 木製のベビーサークルはかじって破壊
      • 百均のワイヤーネットも変形するほど破壊
    • 室内フリーだとドアを掻き続ける・壁紙もかじる
    • 排泄の失敗
      • ケージを変えたら失敗するようになった
      • 排泄物を踏み荒らす
    • でかける前の様子
      • 準備から察してそわそわし始める
      • ずっと後追いしてしまう
      • とにかく部屋に誰かいれば落ち着いて過ごせる(家族以外の人、実家の犬でもOK)
      • いざ出かけるときは、吠えて回転が始まり、階段に足を踏み出した瞬間から吠え始める
  • 程度
    • 家に来た時からの症状
    • 徐々に悪化傾向
  • これまでの対応
    • 知育トイ・よく噛むおやつ
      • 30分くらいで終わってしまう
      • 与えていても出かける時には気付く
      • 食べ終わると吠える
    • 現在の鉄製のサークルに変更
    • 4時間以上超える時は実家に預けている
    • 自宅で離れる時間を伸ばす練習をしてみたけど、あまり変わらず

<院内での様子>

  • 入室時は興奮した様子でぐいぐい引っ張って入ってきた
  • 筆者に興味を示し、寄ろうとしたり、診察室内を積極的に探索したりする様子が見られた
  • 知育トイを見せると筆者に飛びつき、オスワリしたり吠えたりして要求する様子が見られた

<その他の情報>

  • 普段から後追いはあり、トイレや風呂にも、部屋の移動にもついてくる
  • 元々は8時-18時の留守番
    • 室内フリーにしていた
    • やられたい放題だったため、帰宅してから片付けていた
  • 現在は産休中なので留守番がほとんどないが、今後仕事に復帰すると8時間程度の留守番が必須になるため、今から準備していきたい。

<お話し>

  • 診断名:分離不安
  • 留守番中のみ破壊行動や排泄の失敗などの問題行動が見られることや、ご家族が帰宅するまで休むことができず吠え続ける行動が見られることから、分離不安と診断しました。
  • 現在は留守番の機会も少ないので、トレーニングでしっかり外出に慣らしつつ、普段の生活から自立して過ごす練習をしていきましょう。また、時々の外出の機会には、頓服薬を使用したり、ご実家に預けたりしてなるべくストレスがかからないようにしていきましょう。

<具体的な対応策>

  • 環境の整備
    • ラジオやテレビの音など気を紛らわす刺激を与える
      • 大きめで継続
  • ご家族の対応の注意点・変更点
    • 帰宅時の挨拶をやめる
      • 落ち着くまでケージからも出さない
    • 在宅中も、飼い主と離れても過ごせるように練習していく
      • 知育トイ活用
      • 時間を決めてケージで過ごしたり、ケージで過ごしたりする時間を作る
    • 外出前ルーティーンをランダムにする
    • 留守番が得意になるまでは、長時間の留守番時はご実家に預ける/短時間の外出で済ませる/お父さんがいる日にする
  • 行動療法(トレーニング)
    • 短時間の別離・留守番の練習に慣らす練習
      • 知育トイに集中している間に、まずは階段を下ってみる
      • 気付いてもトイに戻れたらOK
      • 徐々にレベルアップしてみる
    • 知育トイについて
      • ブラックコングXLを新たに導入
      • 自宅でも増やしてもらう
      • 朝食分を全て入れて量を増やす
      • アソボーン紹介
    • 外出の手がかりとなる刺激に慣らす
      • フェイントで階段を降りたりカバンを持ったりしてみる
  • 薬物療法
    • 頓服薬使用
      • トラゾドン50mg 1-2錠
      • ジアゼパム10mg 1/2-1錠

再診①(1ヶ月後)

(経過)

  • 薬の反応
    • 5回くらい、3時間超えの留守番があったので、薬をトライしてみた
      • トラゾドン1錠がちょうどいい
      • 薬を飲ませてから外出すると、最初は知育トイで遊んでいたが、30分くらいすると、伏せて吠えずに休む様子が見られた
      • さらに、留守番開始後1時間くらいで寝始めた
      • 3時間半ー5時間半だったが平気
      • 外出の45分前くらいに内服している
    • ジアゼパムも良い感じだった
  • 留守番時以外に、別室で過ごす練習
    • 犬:リビング、お母さん・お子さん:寝室、で練習している
    • 犬が寝ている時だったら離れても大丈夫
    • 起きて、家族が別室にいることに気付いても、30分くらいは一人で吠えずに過ごせている
    • 起きている時に別室に移動するのは、必ずついてくるので難しい
  • 外出時の準備の順番を変える・外出の手がかりに慣らす練習
    • 順番を変えたりしても、常に後追いしている状況なので、行動しているとついてくる
    • 外出時以外にフェイントでカバンを持ったりしてみても、本当の外出ではないとばれている感じがする
  • 知育トイ
    • ブラックコングはまだ試せていない
    • 元々家にあるスライド式の知育トイ+薬を使っている
  • 1時間くらいの外出の時にブラックコングを試そうと思っていたが、まだ試すタイミングがなかった

(評価)

  • 薬への反応が良く、また知育トイへの食いつきも良いので、うまく併用していく
  • お母さんの仕事復帰までまだ時間があるので、長時間の留守番時は薬を使いながら、自宅でのトレーニングも継続して行う
  • 復帰したタイミングで、留守番頻度が増えるので、崩れる可能性はお伝えした

(指導内容)

  • トラゾドン50mg 1錠 頓服で良好
  • 目標の8時間も達成できるかもしれない
    • 出かける直前に内服
    • 元々もっていた知育トイ+ブラックコングで1時間もたせる
    • 1時間半-2時間後に眠くなって休む
  • 今後も油断せず自宅での練習は継続
    • フェイントで外出の手がかりに慣らす練習
    • 短時間別室で過ごす
    • ルーティーン変更
    • 留守番中の環境づくり(大きめテレビ)
    • 帰宅直後は挨拶しない

再診②(3ヶ月後)

(経過)

  • トラゾドンを2錠飲むと、ケージでおとなしく待てるようになった
  • だいぶ調子が良いので、フリーで留守番してみたが、問題なかった
  • 1錠だと、おとなしい時と落ち着きない時とがあった
    • 天気と関係あったかも?
    • 天気が悪くてあまり散歩に行けず、疲れていなかった時は、効きが悪かったかもしれない
  • 2錠飲むと、帰宅後も眠そうな感じはあるが、ふらつきなどはない感じ
  • 留守番の様子
    • 出発の1時間半~1時間くらい前には内服させている
    • コングか知育トイを入れるようにしていて、30分くらいは集中している
    • 留守番が始まって1時間くらいは吠えずに起きている
    • 留守番開始後1時間半~2時間くらいで、伏せて寝る
    • たまに起きるが、基本的にはずっと寝ている
  • 10回は薬ありの留守番があった
    • 1錠で飲ませたのが2回
    • 2錠で飲ませたのが8回くらい
  • 5-10分くらいのごく短時間の留守番だったら、できるようになってきている
    • どこ行くの?って感じで少し気にする様子はあるが、吠えたり破壊したりしないで待てている
  • 日中の後追いが減り、別室でも過ごせるようになってきた
    • お子さんの成長に伴って、強制的に別室で待機しないといけないことが増えた
      • お子さんのお昼寝スタイルが変わり、寝室で眠るようになった
      • 寝室は犬は立入禁止なので、必然的にリビング待機になる
      • お昼寝の長さによるが、1時間半~3時間は一人で過ごしている
      • なんだかんだ別室に移動してからも30分くらいはお子さんの泣く声やお母さんのあやす声などが聞こえるので、ちょうどいい刺激なのかもしれない
    • 最近は、お母さんの入浴やトイレにもついてこない
  • 散歩は朝晩40分行っている、今後涼しくなったら長くなるかも

(方針)

  • 引き続き、長いお留守番の時はトラゾドン使用
    • 長めのお散歩に行けた日などは減量(1錠~1錠半)
  • 薬なしの短めのお留守番練習をする
    • まずは10分~15分程度から(お子さんの散歩に合わせて)
    • 知育トイを与えておいてもらう
  • 涼しくなったら、散歩を少し長くしたり、留守番直前に散歩に行くようにしたりして、入眠をしやすくしてみる

(処方)

  • トラゾドン50mg 1-2錠 頓服
  • トラゾドン1錠半も試してみる

コメント

分離不安の子の普段の生活の様子を伺うと、「自宅でもストーカー状態です」「常に後追いしてきます」「トイレまでついてきます」といったことをよく耳にします。

後追いしてくる愛犬の姿はとても愛らしいものですが、普段からご家族にべったりであればあるほど、留守番(=ご家族の不在時)とのギャップが大きくなり、犬にとっては苦痛が大きくなります。
そのため、留守番の練習だけすれば改善するというものではなく、普段の生活から、犬が一人で休む・家族と離れても落ち着いて過ごす、といった自立した行動を育んでいく必要があります。

今回は、「お子さんのお昼寝」という毎日絶対的なルーティーンがあったため、その時間をトレーニングにしやすかったこと、その時の刺激の強さもちょうどよかったこと(離れてから30分はご家族の声が聞こえる)、長時間の留守番を避けやすい状況だったこと、が影響し、比較的早い段階で改善が見られたと考えられます。

今後も引き続き、長時間の留守番の時には頓服薬の力を借りながら、一方で普段は薬なしでの短時間の留守番練習を続けながら、本番に備えていく予定です。