犬の認知症、高齢性認知機能不全(犬の痴呆)とは?【柴犬しつけ&噛み癖研究所】 | ONELife~犬のしつけ教室&雑貨屋~ 

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犬の認知症、高齢性認知機能不全(犬の痴呆)とは?【柴犬しつけ&噛み癖研究所】

投稿日:2016.06.23|柴犬しつけ&噛み癖研究所

柴犬や日本犬では、高齢性認知機能不全(犬の痴呆・認知症)の発生確率が高く、動物エムイーリサーチセンターの調べでは、高齢性認知機能不全発生頭数の48%が日本犬系雑種、34%が柴犬であったと報告されています。動物の医療が発達し、予防が徹底され、フードの質が改善されてきている昨今、高齢性認知機能不全の発生頭数は増加しています。高齢性認知機能不全を発症した犬は、様々な行動障害が発生するため、犬だけでなく、飼い主のQOLも下げる結果となってしまいます。病気が治るということはありませんが、様々な対処によって緩和することはできます。共に暮らし、介護していくために、どのような対処が出来るのか、飼い主も学び、支援者もしっかりと学び続けなくてはなりません。

高齢性認知機能不全(犬の痴呆・認知症)の概要と定義

高齢性認知機能不全とは、夜中に起きてしまう、宙を見つめる、家や庭で迷う、トイレのしつけを忘れるなど、加齢によって生じる認知障害を指します。高齢性認知機能不全の症状は、見当識障害、人あるいは他の動物との関わり合いの変化、睡眠と覚醒の周期の変化、トイレのしつけや以前に覚えた学習を忘れる、活動性の変化あるいは不活化という5つの兆候(DISHAの5兆候)がよく表れます。

DISHAの5兆候

Disorientation(見当識障害)
コーナーに入って出て来れなくなる(後ずさりできない)、家の中で迷う、庭で迷うなど。

Interaction(相互反応の変化)
飼い主さんや同居動物との関わり合いの変化。飼い主が帰ってきたときに喜んでいたのに喜ばなくなったなど。

Sleep 睡眠と覚醒の変化)
昼夜逆転、夜に起きて活動する(夜泣き・夜吠えるなど)、昼ずっと寝ているなど。

Housetraining(家庭でのしつけを忘れる)
トイレのしつけを忘れる、台所など入ってはいけない場所に入らなかったのに入るようになった、など家庭内のしつけを忘れてしまう。

Activity(活動性の変化)
臭いを嗅ぐ、毛づくろいをする、食べることにすら関心がなくなってしまう。目的もなく歩き回る常同障害を併発することもある。

高齢性認知機能不全(犬の痴呆・認知症)の診断

行動学的な変化が5兆候にあてはまるかどうか、他に行動異常を起こす疾患が存在しないかどうかによって診断します。対象は老齢の動物になるため、血液検査、尿検査、内分泌検査、神経学的検査など必要に応じて実施します。

高齢性認知機能不全(犬の痴呆・認知症)の治療

環境修正/行動修正

・簡単なトレーニングを実施する。飼い主との関わりによって、リラックスすることが出来る
・人との遊びや関わり合いによって活動性を維持することが出来る
・グルグル回ってしまったり、コーナーから出て来れなくなることがよくあるので、丸いサークルを用意し、その中で飼育するようにする
・排泄の失敗が増える様であれば、なるべく庭に出す回数を増やしたり、おむつの使用を考える
・失敗しても絶対に叱らないようにする

食餌療法

食餌療法によって、フリーラジカルによる酸化的損傷をある程度
・抗酸化作用のあるサプリメント
   → ビタミンE、ビタミンC、セレン、果物・野菜など
・ヒルズのb/dの使用
   → 抗酸化作用のある処方食

薬物療法

塩酸セレギリン:
MAO-B阻害薬。モノアミンオキシターゼ(MAO)を阻害するっことによって、モノアミン=ノルアドレナリン・セロトニン・ドーパミンなどの神経伝達物質の量を増やして、神経伝達を活発にします。

塩酸ドネペジル:
コリンエステラーゼ阻害薬。神経伝達物質であるアセチルコリンの分解を阻害することで神経伝達を活発にします。

フルオキセチン:
不安が強い場合に使用する。セロトニンの再取り込を阻害し、抗不安作用を示す。

抑肝散:
近年、人の領域で、認知症やアルツハイマー病に効果があることが報告されています。薬理作用としては、グルタミン酸トランスポーターやセロトニン1A受容体、2Aに作用します。抑肝散は『肝』を抑えるということで、肝に障る=怒りの感情が強い場合に効くとされています。実証向きの方剤であるため、吠えがあるなど活動性が高い症例に用いるべきと考えられます。虚証の場合は、抑肝散加陳皮半夏を用いることができます。

柴犬の認知症相談例

ご相談の主旨

今年の初めごろから、ぐるぐる回る、行き止まりで立ち往生してしまう、食欲がないなどの症状に問題を感じご相談いただきました。

本日お知らせいただいた内容(行動の経歴)

Mちゃんは15歳の柴犬の女の子で、高齢からか、最近徐々に認知機能が衰えてきており、特に今年の春以降、ぐるぐる回り続ける、行き止まり(テレビ台の裏など)で立ち往生してしまう、などの症状がみられるようになったとのことでした。

生活はリビングが中心で、家具などはほとんど置いていないものの、テレビ台があり、しばしばその裏に迷い込んでしまい出れなくなってしまうということでした。出れなくなった場合はその場で寝ていることがほとんどであるとのことでした。

夜に急に起き出すこともあり、しばらくぐるぐる回っているとのことでした。しかし、吠えることはないため、飼い主さんが寝不足になったり、近所迷惑になるということはまだ起こっていないとのことでした。

外でしか排泄をしないため、1日4回さんぽに行っており、腰を支えてあげることで排泄ができているとのことでした。

食欲が弱く、ドッグフードをふやかしたり、カステラやチーズを与えているとのことでした。

<診断とお話し>

今回の問題行動は、犬の認知症(高齢性認知機能不全)と考えられます。かかりつけ動物病院にて血液検査を実施しており、腎臓が悪いとのことでしたので、そちらのケアも継続的に実施していく必要があるでしょう。

今回の症状は、いずれも高齢性認知機能不全の症状(DISHAの5兆候)に該当します。犬の認知症は、治療で回復することは現在の医学では難しく、症状を緩和したり、犬と飼い主さんのQOLを上げるために何が出来るかを考えていくという形になります。以下に対処法を列挙いたします。

<今後の治療法・対処法>

1. 環境の改善
    グルグル回っても大丈夫なように、円形のサークルを用いるようにしましょう。あるいはリビングの角にドッグガードを置くなどして、角を作らないようにしましょう。

2. 散歩に行く
    足腰が立つうちは、散歩に行くようにしましょう。刺激を与えることで、脳機能の活性化につながります。

3. 手からゴハンを与える
    手からでなければ食べないと思いますが、手から与えて飼い主さんとのコミュニケーションをはかるようにしましょう。声掛けしながら与えると良いでしょう。

4. 食べられるものを与える
    食欲がないようなら、ドッグフードにこだわらず、食べられるものを与えるようにしましょう。臭いの強いものを与えることで脳が刺激されます。

5. 補助器具の使用
    足が立たなくなってくると思いますので、徐々に腰を浮かせる補助器具を使用するようにしましょう。