飼い主への攻撃性の高い犬種として、チワワ、ウエルッュ・コーギー・ペンブローク、ミニチュア・ピンシャー、柴、パピヨン、ヨークシャー・テリアが挙げられる。これらの犬種の中で、ウエルッュ・コーギー・ペンブローク及び柴は体格が比較的大きく、攻撃行動が発生した際の被害が大きくなる傾向がある。柴は飼育頭数が多く、攻撃行動の相談が寄せられやすい犬種である。
子犬の時期は、遊び関連性攻撃行動が発生しやすいが、適切な対応を取れば、年齢に応じて減少していく。しかし、間違った認識から体罰的なしつけを行うことで、恐怖性/防衛性攻撃行動をはじめ、攻撃行動全般を増やしてしまうことにつながる。また、子犬の生活範囲を制限せず、噛んではいけないもの(ティッシュ、スリッパ、洗濯物等)が散乱した環境で飼育することで、それらを拾い、守ろうとする機会が増えることで、所有性攻撃行動が発生しやすくなる。
性成熟に伴って、攻撃行動が増加する傾向がある。雄犬では体内のテストステロンが攻撃行動に影響を与えており、去勢手術によって、家族に対する攻撃行動、見知らぬ犬に対する攻撃行動、侵入者への攻撃行動が減少する。雌犬では、妊娠あるいは偽妊娠時に母性攻撃行動が発生しやすい。
野犬出身の犬では、胎生期~社会化期を野外で人と関わることなく生活していることが多い。社会化期に人や人間社会の生活環境と関わらずに成長することで、人間との生活において恐怖を感じやすくなる。野外から保護された時期が、早ければ早いほど人間との生活に順応しやすい傾向にはあるが、元々人間の管理下で繁殖された犬に比べれば、攻撃行動が全般的に発生しやすい。
攻撃行動の発生には、飼い主の飼育方法が大きく影響する。飼い主の手に咬むといった子犬の不適切な行動に対して、マズルを掴んでキャンと言うまで押さえつけるといった体罰的な方法を用いることで、飼い主の接近や手による拘束に対して、恐怖心を覚え、攻撃行動が発現する例は少なくない。
一方で、子犬の頃からしつけ教室に通い、飼い主が人道的で動物の福祉に配慮した適切な飼育方法を取っている場合、攻撃行動の発生を予防することができる。攻撃行動の予防には、社会化だけでなく、飼い主との関係構築が重要な要素である。そのため概ね6か月程度までに行われる子犬教室(パピークラス)だけでなく、6か月以降もトレーナーからトレーニング法や関係構築法を学ぶ継続的なトレーニングクラスに参加することが推奨される。
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(ぎふ動物行動クリニック 獣医行動診療科認定医 奥田順之)
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