猫を飼っている人、飼っていないけれど猫好きの人なら、猫とのふれあいが好き!触りたい!という人がほとんどだと思います。

一方で、猫を触っている時に突然咬まれてしまった経験のある方も多いのではないでしょうか。猫をなでなでして癒されていたはずが、急に咬まれてしまうのはショックですよね。

今回は、猫を撫でている時に急に咬まれてしまった場合、猫はどんな気持ちで咬んでいるのか?について考えてみたいと思います。

[1]もうやめて、という意思表示の咬みつき

猫には「愛撫誘発性攻撃行動」と呼ばれるパターンの攻撃行動があります。

ちょっと触れただけですぐ攻撃される場合もあれば、しばらくは気持ちよく撫でられていてくれたのに、急に咬まれる場合もあります。撫で続けられるうちに急にイライラしてきたり、撫でる場所や撫で方や強さが嫌だったりすることで起きるのではないかと推察されています。

もともと猫は、手のひらを使って体全体を大きく撫でられるのが好きではないことが多いため、指を使って軽く撫でるとよいでしょう。撫でる場所についても、猫の受け入れやすい頭や顔だけにしておきましょう。表情やボディランゲージをよく観察し、小さな変化に気づいて早めに撫でるのをやめてあげることが大切です。

猫のボディランゲージ

<耳>

  • ぴんと立つ:警戒していたり、何かの刺激に意識を集中している状態です。
  • 耳を横に回す:耳介の内側を横にむけているとき。相手の出方によっては攻撃するかもしれなかったり、これから攻撃しようと積極的に自己主張している状態です。
  • 耳を下に回す:耳が横下や下に向けられているとき。恐怖があり防御している状態や、あなたに服従しますと伝えている状態です。

<目>

  • 黒目が大きい:闘争するときや恐怖により逃げるときの反応です。
  • 直接じっと見つめる:強く自信のある猫がする行動で、威嚇している状態です。一方、親兄弟などごく親しい相手では、威嚇の意味はなく、親愛の気持ちから見つめ合うこともあります。
  • ゆっくり瞬きする:敵意はないということを伝えています。

<尾>

  • 直立:遊びやあいさつの気持ちを表しています。
  • 水平:相手に友好的に接している状態です。
  • 凹型:不安などから防御的になっている状態です。
  • 低い位置:硬直していれば攻勢的攻撃、弛緩していれば守勢的攻撃を表していますが、弾性があればリラックスしています。
  • 後ろ足の間に入れる:恐怖があり、あなたに服従しますと伝えている状態です。
  • むちを打つように動かす:何かに不満のある状態です。

身体の痛みや不快感が原因の場合も

身体の一部に痛みや不快感があることが、「もうやめて」の原因である場合もあります。また、以前に痛かったり不快感があったことがあり、その部分を触られることに不安や恐怖を覚えている場合もあります。

撫でられて急に咬むことが頻繁にあるのであれば、かかりつけ動物病院での診察も受けておくとよいでしょう。

[2]まだやめないで、という意思表示の咬みつき

対照的に、撫でていて止めようとすると咬む場合もあります。こういった場合には、自分の期待したとおりにならなかったフラストレーションによる咬みつきである可能性があります。このような猫では、期待どおりにいかなかったり、欲求が満たされない場合には、過剰に鳴く、尿マーキングをするなどの行動もみられる場合があります。

欲求不満による問題行動が起きる状況の例

  • 撫でていて欲しかったのに止めてしまった
  • お腹が空いているのにごはんが出てこない
  • 遊びたいのに飼い主が出かけてしまう
  • テーブルの上に居たかったのに降ろされた

これらの問題行動は、その猫に「ストレス耐性」が不足・欠如していることから発生するのではないかと言われています。

「ストレス耐性」は、子猫の頃に母猫による授乳から離乳を経て、独立した成猫となる過程で養われるものです。そのため、幼いうちに保護されて人工哺乳で育った場合、授乳や離乳があまりにもスムーズであるために本来必要な程度のストレスが与えられず、「ストレス耐性」が養われないまま育ってしまい、こういった問題行動が多くなると言われています。

[3]びっくりして身を守るための咬みつき

猫が、自分にとって天敵となる存在などに対して恐怖を感じることは、自分が傷つくことを防ぐために非常に重要な、生まれ持った働きです。何らかの刺激に対して、恐怖を感じたり驚いたりすると、猫は身を守るために、対象とある程度の距離があれば逃げる反応、逃げきれない近距離であれば闘う反応を示します。

猫を撫でようと手を伸ばして触れた時に、猫がびっくりしてしまったり、それがあまり人に馴れていない猫で怖がらせてしまったりした時に咬みついてきたとしたら、このように猫が自分の身を守るための「闘う反応」でしょう。恐怖により身を守るための攻撃を「恐怖性/防御性攻撃行動」といいます。

普段から、猫が飼い主さんにとって都合の悪いことをした時に、飼い主さんがその猫を叱ったり叩いたりして「罰」を与えていると、猫にとっては飼い主さんに「威嚇されている」と感じられ、いつも飼い主さんに対して恐怖を感じるようになってしまいます。脅威を感じながら生活することで、ちょっとした刺激でも「恐怖性/防御性攻撃行動」が起きやすくなってしまいますので猫に「罰」を与えるのは絶対にやめましょう。

[4]遊びの延長の咬みつき

猫は、遊びの一環として比較的弱い力で咬むことがあります(いわゆる「甘噛み」)。もともとは、子猫の頃に猫同士の身体を使った遊びの中で咬み合ったり取っ組み合ったりしながら、猫同士のコミュニケーションや狩りの動きの練習をする時の咬み方です。

おもちゃではなく人間の手でじゃらして遊ぶことが習慣となっている猫の場合、撫でている手に対してもじゃれて咬みついてくることがあります。

このような遊びの範疇での咬みつきだったとしても、その「遊び咬み」が常態化してしまった場合には、日に日に咬む強さが強くなり、最終的には大ケガをするほどの強さで咬むようになることもあります。これは、猫にとって遊びは狩りの一環であり、人間が考えるような「遊び」とは異なるためです。

猫は、猫じゃらしなどのおもちゃにじゃれて遊ぶのが大好きというイメージがあると思いますが、猫にとってこれは、獲物を捕獲する練習、捕食行動の一環であり、「遊び」ではないのです。ですから、子猫が人に甘噛みをしたりじゃれたりする行動は、人を獲物として捕獲しているのだということになります。そして、飼い主が手を使って子猫とじゃれあったり、走って逃げて子猫に追いかけさせたりする遊び方は、「人は獲物だ!」と教えていることになり、これを学習した猫は飼い主に本気で咬みついたり飛びついたりするようになってしまいます。

飼い主さんが猫の捕食行動を理解し、正しい遊び方で猫の狩猟本能を十分に満たしてあげるとともに、絶対に人間の手や身体を使った遊びはしないことを徹底すれば、問題を解決することができるでしょう。

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