爪切りや足ふき、ブラシなどの日常ケアが苦手、というわんちゃんは多いのではないでしょうか?
わんちゃんにとっては日常ケアの必要性や重要性は理解ができないので、足を触られて嫌だとか、もつれた毛が引っ張られて痛いとか、単なる嫌な刺激と受け取ってしまうことが多いです。最初は一生懸命我慢できていても、最終的には「やめて」という意思表示として、手を咬んでしまう、なんてことも…
何でも甘やかして許す、というのはやりすぎですが、わんちゃんにも気持ちがありますから、我慢をさせすぎていないか、攻撃行動に出るまで追い詰めてしまっていないか、ということは気を付けながらケアしていけると良いですね。
また、中高齢以上の子が突然抱っこや触られることを嫌がるようになった場合、もしかしたら体の病気が隠れているサインかも!?
明らかに様子がおかしい、と思ったら、獣医さんに相談してみてくださいね。
<ご相談の主旨>
- ご家族に対する攻撃行動
<基本の情報>
- マルチーズ、8歳4ヶ月、雄(去勢手術実施予定)、体重約3.1㎏
- 入手経路:知人から
- 1歳3ヶ月のときに迎え入れた
- 他の犬を見ると吠えるのは昔からとのこと
健康状態について
- 2週間ほど前に、別件で受診したところ僧帽弁閉鎖不全症 Stage B2と診断された
- 1週間ほど前からフォルテコールプラスを内服中、その頃から調子が戻ってきた
既往歴について
- 特になし
生活環境
- 一戸建て
- 家族構成:父・母・子2人+時々もう1人お子さんが帰ってくる
- 同居動物:なし
- ハウス:なし
- 生活スペース
- 基本的には家全体をフリーにしている
- リビングの一角にケージあり、お気に入りの座布団の上にいることが最近ある
- ケージも置いてあるが普段使わない
2週間前に調子が悪かった時に、数分こもった
- 排泄
- 排尿は内外両方
- 排便は外が多い
生活習慣
- 食事:1日2回
- おやつはまあ好き、くらい
- 散歩:
- 1日1回15分くらい
- 散歩の様子
- 他の犬、自転車、車、人などに反応する
- 飛びつこうとするが、さっと歩いていく
<問題となっている行動について>
これまでの経緯・問題行動の発生状況
- 攻撃のシチュエーション
- 嫌なことをされたときと、興奮した時
- 嫌なこと
- 尻尾を触られること
- バスタオル
- 歯磨き
- お父さんが叱りながら押さえて我慢してやっている感じ
- 前肢を触られること
- くつろいでいる時は平気
- 何かされる気配を察知した時
- オテはできる
- いずれも最初は我慢するが、唸ったり鼻に皺が寄ったりして、徐々に我慢できなくなって咬みつく。咬んだ後はしばらく警戒態勢になって、近づいたり触ったりしようとすると咬もうとするような印象。
- 興奮する時
- 来客時
- マウンティングするときもある
- 来客はそれほど多くない
- 2階に上げてしまうと比較的落ち着く
- 郵便屋さん・宅配業者
- 毎回吠えて、その場で走り回る。いなくなるとすぐ落ち着く
- いずれも大興奮状態なので、この時に触ろうとしたら咬んでくると思う。
- 来客時
- 嫌なこと
- くつろいでいる際、移動させようとした時にも咬んできた時があった。普段は少し撫でたりする程度であれば大丈夫。
- 2週間ほど前に、抱っこしようとするとキャンと鳴いて咬むようになった。
そのうち、撫でるだけでも咬むようになった。- 現在は比較的落ち着いてきているが、当時は明らかに様子がいつもと違かった。近寄らない、人と離れたところでじっとしているなど。
- 思い返せば、数か月前から抱っこしようとして胸に手を添えた時に、唸る時があった。
- 対象
- 興奮時は誰に対しても攻撃する
- 咬む予兆:鼻に皺が寄る、歯を剥く、唸る、などがある
- 咬んだ後は、何事もなかったかのように元に戻る
- 嫌なことをされたときと、興奮した時
<その他の情報>
- オスワリ・オテ・フセはできる、オイデはおやつあればできる
<お話し>
- 診断名:恐怖性・防御性攻撃行動
- 要因
- 生得的な気質、社会化不足
- 攻撃により嫌なこと(お手入れなど)が終わったという成功体験からの、咬むことは有効であるという学習
- 2週間前の突発的な攻撃行動に関しては、抱っこしたときにキャンと鳴くという症状や、急性発症であること、現在は改善していることなどを踏まえると、身体疾患が原因となって、抱っこや接触に対して拒否反応を示していた可能性が高いでしょう。鑑別疾患としては、頸部痛、背部痛、腰痛、ヘルニアなどが考えられるでしょう。しかし、現在は元通りの行動に戻ったとのことなので、安静にしていたおかげで現在は寛解状況にあると考えて良いでしょう。
- 数か月前から抱っこの時に唸る時があったとのことでしたので、もしかしたら過去にも若干痛いときがあったり、下半身が不安定な体勢になったりすることでなんとなく違和感があったのかもしれません。すでに唸っているので、今の段階で新しく安心できる抱っこの方法を確立しておいたほうが将来的な攻撃行動を予防できるかもしれません。
- また、普段のケアなどにおける攻撃行動に関しては、最初は唸ったり歯を剥いたりして意思を伝えているものの、それでも伝わらないので、最終的に咬むしかなくなっている状況であると考えられます。実際に過去に咬むことによって嫌なことが終わった、という学習も、咬む行動を強化しているでしょう。わんちゃんが受け入れやすいプロセスを確立すること、我慢の限界が来る前にやめること、を意識していきましょう。
- 吠えているときの攻撃に関しては、過去の学習や日頃の習慣から、興奮や感情が一定ラインを超えると「咬む」という行動が出やすくなっていると考えられます。咬もうという強い意志を持って咬むというよりは、思考を介さずに半ば反射的に咬んでしまっているようなイメージです。
- 咬む行動が出るほど興奮をさせないことが必要ですが、かなり習慣化している行動のため、減らして行くには時間がかかりそうです。少しでも改善していくための土壌づくりとして、散歩のときにはまずは外でおやつを食べてみる・外でオスワリなどのコマンドを試してみる、家ではクレートトレーニングをしつつ、反応する刺激に対して少しずつ慣らしていくことなどができるでしょう。あまりにも興奮がひどく、心臓への負担が懸念されるような状況の時には、頓服薬の使用を検討してもいいでしょう。
<具体的な対応策>
- ご家族の対応の注意点・変更点
- 嫌がる前にやめる
- ケアは欲張りすぎず短時間で行う
- 特に苦手なことに関しては、価値の高いおやつを使いながら実施しても良い
- 抱っこの方法の変更
- 胸を支えるのではなく、腰を支えつつすくい上げるような形で抱っこする
- 寝ているときは触らずそっとしておく
- 来客時は2階に移動してもらう
- 嫌がる前にやめる
- 行動療法(トレーニング)
- クレートトレーニング
- まずはクレートを常にリビングにおいてみる
- 中でフードを与えたり、特別なおやつを食べたりして、良い印象付けをしていく
- お外でおやつを食べてみる・オスワリなどのコマンドをかけてみる
- 反応してしまった場合は、とりあえず急いで通り過ぎて、すれ違った後は、上手に切り替えられたことに対しておやつをあげる
- クレートトレーニング
- 薬物療法
- 現時点では必要性は低いと考えられますが、将来的は検討してもいいでしょう
- その他の対応
- 身体疾患の除外
- ヘルニアや腰痛などに関しては、今後繰り返す可能性は高いので、また同様の症状が出たら、鎮痛剤の使用などを検討しましょう
- 身体疾患の除外

