尿によるマーキング(スプレー行動)や猫トイレ以外の不適切な場所での排泄行動など、猫のトイレ問題には、困っている飼い主さんが多いと思います。

今回は、猫のトイレ問題が起きる原因と対策を考えていきます。

猫がトイレ以外の場所で排尿してしまう原因

猫がトイレ以外の場所で排尿してしまったら、まずは身体的な疾患がないか、かかりつけ動物病院で診てもらいましょう。膀胱炎などで頻尿や排尿困難を起こしていたり、身体のどこかに痛みがあってトイレに入りづらいなど、様々な身体疾患が原因となっている場合もあります。その場合は、原因となっている疾患の治療がまず第一に必要です。

特に疾患がみつからない場合、その排尿は尿マーキング(スプレー行動)か、不適切な場所での排尿か、どちらかであると考えられます。どちらも同じことのように見えるかもしれませんが、尿マーキング行動は猫にとって正常なコミュニケーション手段として使われるものであり、排尿には含まれません。

不適切な排泄行動とは

不適切な排泄行動とは、膀胱や腸を空にするための猫の正常な排尿・排便行動が、猫用トイレ以外の飼い主の望まない場所でなされることです。

不適切な排泄行動の理由

猫用トイレ自体やそこへ行くまでの間の何かに対する嫌悪感がある場合と、猫用トイレ以外に好みの場所があってそこにしてしまう場合の2つのパターンがあります。

トイレに関連して嫌悪感がある場合

  • 猫用トイレの問題:清潔さ、形、大きさ、砂の種類、位置 など
  • トイレまでの経路での問題:苦手な人・動物がいる、苦手な物がある など
  • トイレの出入りや最中の問題:人や動物に邪魔される、排泄時に痛みがある(過去も含む) など

トイレ以外に好みの場所がある場合

  • 素材、吸収力、清潔さ、家の中での位置 などの好み

現在の猫用トイレには嫌悪感があるけれど、他に好みの場所が特にない猫の場合、トイレのすぐ横で排泄するようなこともあります。

また、不適切な排泄行動が、猫にとっての「嫌な事件」をきっかけに始まることもよくあります。例えば、来客があった、何かに邪魔されてトイレに行けなかった、トイレ掃除がされない期間があった、トイレ砂の種類を変えた、新しい家族(人、動物)が増えた、などの事件です。

また、猫が猫用トイレ以外の好みの排泄場所をみつけた後では、最初のきっかけを取り除いたり解決したとしても、不適切な場所における排泄がなくならないこともあります。

尿マーキング(スプレー行動)とは

尿マーキング(スプレー行動)は、猫の匂いによるコミュニケーション方法の一つです。自分の尿の匂いを残すことで、他の猫に自分の存在を伝えているのです。去勢・不妊手術をしていない猫の場合は、異性の相手に向けた「ラブレター」として尿マーキング(スプレー行動)をすることがあります。

猫は尿マーキングにより、他の猫の存在やマーキングのある場所をいつ通ったのかなどを把握することができるので、生活圏となる場所に尿マーキングを残して自分の情報を知らせ、急な遭遇による争いを避けています。猫同士が平和に場所を共有するために、重要な行動だと言えます。

尿マーキング(スプレー行動)をする理由

猫の匂いによるコミュニケーション方法には、尿マーキング以外にも、顔や身体の臭腺の匂いを物にこすりつける方法や爪と指の間の匂いをつける爪とぎなどもありますが、欲求不満や不安・葛藤状態にある猫では、自己主張や不安・葛藤を軽減する手段として、顔や身体をこすりつけたり爪とぎをする以外にも尿マーキング(スプレー行動)を行うことがあります。

そのため、マーキングは家の中の同居猫同士で折り合いが悪い場合、社会的葛藤の結果として生じることがあります。この場合、攻撃する猫でも被害を受けた猫でも、どちらもマーキングをする可能性があります。

ドアなどの出入口や窓のまわりはスプレーされやすい場所ですが、これは野外にいる猫に対して反応したマーキング行動の可能性があります。

また、新しい物(例えばスーパーの袋や新しい家具など)に対する反応もマーキング行動に繋がりやすいため、これらもスプレーされやすい場所となっています。

尿マーキング(スプレー行動)なのか不適切な排泄行動なのか

尿マーキング(スプレー行動)なのか不適切な排泄行動なのかについては、猫の行動をよく観察して判別します。下表に判別のめやすをまとめましたが、必ずしもこの通り当てはまるわけではないため、猫がなぜそうしたいのか、気持ちや動機もあわせて考えてみることが大切です。

尿マーキング不適切な場所での排尿
姿勢立ってする(座ってすることもある)座ってする
排泄前後の行動尾を立て、垂直面にお尻を向けて
後退することが多い
排泄前後に典型的な行動
(地面をかく、掘るなど)
排泄量少量多量
(トイレでの通常の排泄時と同じように
膀胱を空にしたくらいの量)
トイレの使用通常の排泄時には利用通常は使用しなくなる
対象場所垂直で目立つ場所が多い
(水平面の場合もある)
好みの素材(カーペットなど)
好みの場所(特定の部屋など)
排便行動通常はトイレを使用する通常は不適切な場所で行う

猫の粗相への対応方法・直し方

猫トイレ以外の場所にオシッコを見つけたときは、まずしっかりとお掃除をすること、そして次にしっかりと原因について考えることが大切です。

ここからは、具体的な対応方法について、考えていきます。

匂いを残さない掃除方法

猫は、排泄物の匂いが残っている場所でまた排泄したくなってしまいます。できるだけ匂いを残さないよう、猫が粗相してしまった場所は、匂いを分解・除去できる酵素系洗剤で掃除しましょう。バイオ酵素入り洗濯用粉または液体洗剤を、洗剤量のおよそ10倍の水に溶かした洗剤液を作ってスプレー容器に入れ、排泄物を取り除いた後にこれをスプレーして掃除をすると匂いが取れやすいです。この後、水でもう一度拭き取り、アルコール消毒液を吹きかけておくと良いでしょう。

粗相が再発するのを防ぐためには、布団やマットなど取り替え可能な物であれば、掃除や洗濯するよりも、汚された素材を撤去して新しい物に取り替える方が予防効果が高いでしょう。

オシッコを見つけても叱らないで!

猫がトイレ以外の場所で粗相をするのは、腹いせや仕返しを意図した行動ではありません。トイレの外で排泄していても、絶対に猫を叱らないようにしましょう。

猫の粗相には、不安やストレスが強く関連しています。その状況で飼い主が猫を叱ったり罰を与えることで、猫は飼い主までも恐怖に感じて信頼が崩れてしまい、不安やストレスがさらに悪化してしまいます。その結果、問題行動がさらに重度になっていくという悪循環に陥ってしまうのです。

不適切な排泄行動の場合

基本的な対応としては、次の①②をセットで行います。

  • ①不適切な場所に近づけないような工夫、排泄されても困らないような工夫
  • ②猫が好む適切なトイレを準備

①不適切な場所に近づけないような工夫、排泄されても困らないような工夫

  • その場所の上に物や家具などを置く
  • その場所の上にペットシーツなどを敷く
  • その場所に猫用トイレを配置する
  • その場所に猫の嫌がる物(アルミホイル、両面テープ、とげ付のプラスチックの敷物 など)を置く
  • その場所に向けて超音波発生器を設置する
  • 布団などの布製のものはビニールシートなどで覆う
  • ケージ内で正しいトイレを教える(短時間のみ)

②猫が好む適切なトイレを準備

猫に好まれることの多いトイレは下記の通りですが、猫によって好みが違うため、まず、その猫に適切なトイレはどんなものか特定しましょう。

≪猫に好まれることの多いトイレ≫

  • 大きさ:少なくとも体長の1.5倍
  • 形:カバーなし
  • トイレ砂:粒子の細かい砂、香りのないもの
  • 砂の深さ:3cmくらいから様子をみて調整
  • 数:少なくとも猫の頭数+1個
  • 場所:猫の好む場所に設置(あまり出入りや通行の多いところは好まれない)
  • 維持管理:トイレ掃除は1日1~2回以上、トイレの洗浄と砂の全交換は1~4週間に1回(トイレの大きさや数による)
  • その他:すぐ近くに芳香剤などを置かない

現在、使用しているトイレはそのまま使用し続け、他に数種類、様々なタイプのトイレ(トイレの種類、砂の種類や深さなど)を並べて、猫に好きなトイレを選んで使ってもらいましょう。猫用トイレ以外の用途のプラスチック容器(衣装ケースなど)も、使いやすい場合がありますので、大きさや形状のバリエーションを豊富に揃えて選べるようにしてみましょう。場所についても、何箇所かを試し、使いやすい場所を選ぶとよいでしょう。猫の好みを探ることができたら、最終的には猫が好んで使うものだけを残しましょう。

また、猫の多頭飼育をしている家庭では、全ての猫がトイレに行きやすいよう、トイレは多数(最低でも頭数+1個)必要です。全ての猫がスムーズにトイレを使えているかどうか、猫同士の関係をよく観察しましょう。

なお、猫用トイレを複数用意した場合も、各トイレの清掃はまめに行うことが重要です。

尿マーキング(スプレー行動)の場合

尿マーキング(スプレー行動)は猫の正常な行動ですが、その頻度を抑えるには、次の2点を考慮します。

  • ①去勢手術・不妊手術の実施
  • ②生活環境の中のストレス軽減

①去勢手術・不妊手術の実施

去勢手術や不妊手術を行うと、オスでは90%、メスでは95%でスプレー行動が減少すると言われています。これは、去勢手術や不妊手術をしていない猫の場合、スプレー行動が異性の猫に対するコミュニケーションとして生じている確率が高いためです。

②生活環境の中のストレス軽減

生活環境の中で、葛藤やストレスの原因となっている物事をできるだけ取り除くことが大切です。

多頭飼育している家庭で、猫同士の緊張関係が生じていることが明らかな場合には、その社会的葛藤のある猫同士を少なくとも1日のうち数時間隔離・分離するとよいでしょう。隔離場所にも、食事、水、トイレなどを用意し、リラックスして過ごせる場所にしましょう。

野外の猫に反応してスプレー行動をしているようなら、野外の猫が見えにくいよう、視界を遮る物を置いたり、窓を覆ったり、窓枠に登れないようにしてみましょう。

尿マーキング(スプレー行動)への薬物療法

「不安」は、猫における尿マーキング(スプレー行動)の大きな要素となるため、「不安」を軽減する薬物(抗うつ剤など)を使った薬物治療が有効な場合もあります。

ただし、スプレー行動が減少してきた後も長期間の投薬の継続が必要となりますし、減薬や中止によりスプレー行動が再発することもあり、無期限で投薬し続けなければならないこともあります。

場所を作って尿マーキングをさせるという方法も…

尿マーキングは猫の正常な行動なので、猫のためにスプレーをしてもよい場所や部屋を作っておくのも、ひとつの方法です。

管理しやすいよう、猫にとって尿マーキングの対象となっている場所に空のプラスチックの箱を立てかけてトイレを作ったり、あらかじめペットシーツを貼り付けておくという方法です。

また、猫の合成フェイシャルフェロモン製剤(フェリウェイ)を噴霧したり環境中に拡散させたりして、こすりつけや爪とぎなど尿以外の匂いによるコミュニケーションを促すことで、尿によるマーキングを軽減できる可能性もあります。

何よりも大切なのは猫にとって快適な環境づくり

猫のトイレ問題は、単純にトイレだけの問題ではなく、猫の生活環境全体の複合的な問題で、快適な環境を整えることは、粗相に関するいずれの原因(尿マーキング・スプレー行動、不適切な排泄行動)においても重要です。再発し、繰り返しやすい問題行動でもあり、何よりも大切なのは、「猫にとって快適な生活環境を常日頃から整えておくこと」だと言えます。

そのためには、下記5項目を満たすことができるよう努めましょう。

  1. 安全で安心できる場所を用意すること
  2. 猫にとって重要な必要物資(トイレ、フード、水、爪とぎ、おもちゃ、休息/寝床)を複数用意し、環境内に複数箇所、それぞれ離して設置すること
  3. 遊びや捕食行動の機会を与えること ※1
  4. 好意的かつ一貫性のある、予測可能な人と猫の社会的関係を構築すること
  5. 猫の嗅覚の重要性を尊重した環境を用意すること ※2

※1 猫の遊びや捕食行動については、こちらの記事もご参照ください。

問題行動解決のためにも大切な猫の「遊び」

※2 嗅覚を含めた猫とのコミュニケーションについては、こちらの記事もご参照ください。

猫と上手にコミュニケーションを取るには?

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