猫にとって飼い主はどんな存在?

猫が飼い主などの人間をどう見ているかについては、

  • 普段は人間を自分の親とみなしている
  • 狩りをした獲物を家に持ち帰ってくるときは人間を子猫とみなしている
  • 人間を自分より体の大きな猫として考えている
  • 猫と私たちの関係はいまだに流動的である

…など、様々な意見があります。

猫が日常でみせる仕草の多くは、子猫が母猫とのコミュニケーションで使う仕草と似ていることから、猫が飼い主を母猫とみなしているというのはわかりやすい考え方です。例えば、「ふみふみ」と呼ばれる仕草は、子猫のときに母猫の母乳を出やすくするためにする仕草ですし、飼い主に尾をピンとまっすぐに立てて近づく仕草も、子猫が母猫に構ってもらいたいときにする近づき方です。

母猫とみなす以外にも、猫はその時々によって、飼い主をどう見るかの気分が入れ替わっているとも言われています。例えば、狩猟本能を発揮して遊んだり、警戒心が強く攻撃的になるような野生的な気分のときには、飼い主が狩りや攻撃の対象になってしまうこともあります。狩りをした獲物を持ってきてくれるようなときは、飼い主を子猫とみなして獲物を分け与えてくれているとも考えられています。猫は気まぐれとも言われますが、このように気分を変えられることで、ストレスと上手く付き合っているとも言えます。

猫のコミュニケーション方法

人間同士では、言葉を使った聴覚的なコミュニケーションがメインですが、猫同士では聴覚以外にも視覚や嗅覚を通じて相手とコミュニケーションをとっています。

[猫同士のコミュニケーション]

  • 視覚:表情、ボディランゲージ
  • 嗅覚:マーキングなど
  • 聴覚:鳴き声

猫はもともとは単独で生活し、仲間とコミュニケーションをとることは少ない動物です。そのため、相手に出会ったその場で直接伝える方法である、鳴き声や表情・ボディランゲージを使ったコミュニケーションについては、集団で生活し社会的な動物である犬などに比べて地味でバリエーションも少ないという特徴があります。

一方、マーキングなどの嗅覚的なコミュニケーションは、より細かくたくさんの情報を、長期に渡って残すことができる方法であり、直接出会うわけではない相手に自身の存在を伝え、また相手の情報を得ることもできる、猫にとってとても重要なコミュニケーションツールとなっています。

①視覚的なコミュニケーション:ボディランゲージなど

猫は単独生活であるがゆえに、自分の身は常に自分で守らなければならず、闘争して傷つき、動けなくなることは命にかかわる事態です。そのため、普段の表情やボディランゲージは地味でも、危機を感じたときに相手を追いやる威嚇の表現は大変派手です。できるだけ争いを避け、敵を自分に近づけないようにするためです。

飼い猫の視覚コミュニケーション(ボディランゲージ)では、目、耳、口、尾、被毛が使われます。体全体の姿勢を使ったシグナルよりも、顔のシグナルのほうにより速い変化がみられます。

[猫のボディランゲージ]

<耳>

  • ぴんと立つ:警戒していたり、何かの刺激に意識を集中している状態です。
  • 耳を横に回す:耳介の内側を横にむけているとき。相手の出方によっては攻撃するかもしれなかったり、これから攻撃しようと積極的に自己主張している状態です。
  • 耳を下に回す:耳が横下や下に向けられているとき。恐怖があり防御している状態や、あなたに服従しますと伝えている状態です。

<目>

  • 黒目が大きい:闘争するときや恐怖により逃げるときの反応です。
  • 直接じっと見つめる:強く自信のある猫がする行動で、威嚇している状態です。一方、親兄弟などごく親しい相手では、威嚇の意味はなく、親愛の気持ちから見つめ合うこともあります。
  • ゆっくり瞬きする:敵意はないということを伝えています。

<尾>

  • 直立:遊びやあいさつの気持ちを表しています。
  • 水平:相手に友好的に接している状態です。
  • 凹型:不安などから防御的になっている状態です。
  • 低い位置:硬直していれば攻勢的攻撃、弛緩していれば守勢的攻撃を表していますが、弾性があればリラックスしています。
  • 後ろ足の間に入れる:恐怖があり、あなたに服従しますと伝えている状態です。
  • むちを打つように動かす:何かに不満のある状態です。

②嗅覚的なコミュニケーション:マーキングなど

マーキングには、自分の尿の匂いを付けるスプレー行動のほか、顔や指の間から分泌されるフェロモンをこすりつける行動もあり、爪とぎもマーキングの一種です。

鼻で感じる匂いのほか、猫には口の中、前歯の裏側付近にもにおいを感じる器官が存在します。ヤコブソン器官(鋤鼻器)と呼ばれるもので、フェロモンの匂いはここで感じ取っています。猫が口を半開きにしてまるで笑っているような表情をすることがありますが、これを「フレーメン反応」といい、ヤコブソン器官で匂いを感じ取っているときの現象です。

しかし、残念ながら私たち人間は、猫が発するこれらの情報を受け取る嗅覚などの感覚を持ってないため、猫にとっては重要なこれらのコミュニケーションは多くの人に正しく理解されていないのが現状です。

③聴覚的なコミュニケーション:鳴き声など

単独生活をする動物である猫は、野生では仲間を呼ぶ必要もなく、鳴き声で気付かれて狩りに失敗したり、天敵にみつかって襲われることもあるため、滅多に鳴き声を出しません。

[猫が鳴き声を出す時]

  • 子猫の時期
  • 発情期
  • 縄張りのための闘争の時

一方、飼われている猫がよく鳴き声を発するのは、子猫が母親にして欲しいことを鳴いて伝えるのと同じように、飼い主にも声で伝えようとしているためであると言われています。

[猫の鳴き声いろいろ]

  • ゴロゴロ音:母猫と子猫のコミュニケーションから始まったと言われており、安心感、甘えの気持ちを表現しています。一方、体の調子が悪い時、傷ついている時にも、自分を落ち着かせたり、励ましたりするために発することがあります。
  • 「チャー」:母猫がそばを離れた子猫を呼ぶときに出す声です。仲の良い猫同士が、相手を呼ぶときにも使われます。
  • 「ニャオ」:ここにいるよ、と人間などの注意を引くときや、欲しいものが得られず不満を訴えるときに発する声です。
  • うなり声:うなる、歯をむいてうなる、「シュー」「シャー」などの声は、全て口を開けた状態で発せられる、警告や威嚇の意味のある声です。
  • 歯をカチカチ鳴らす:いわゆる「カカカ鳴き」と呼ばれる鳴き方は、自分が捕まえられない獲物を見ているときに発せられることが多く、転移行動と考えられています。
  • 発情中のメスが発する声:口にこもった大きな声で、口を閉じた状態で発せられます。交尾を求めるメスのほか、メスをめぐって闘争中のオスも発することがあります。

【まとめ】猫と上手にコミュニケーションをとるには?

猫は人間の言葉は話しませんが、表情、ボディランゲージ、鳴き声、そして人間には受け取ることのできないフェロモンなどの匂いを使って、たくさんのことを伝えようとしています。また、猫は飼い主を自分の母猫のようにとらえており、母猫に伝えるのと同じように飼い主に伝えようとしているというのも大切なポイントです。

これらのことを私たち飼い主が理解して、猫をよく観察しながら、優しい母猫になったつもりで生活することで、より良い猫とのコミュニケーションができるのではないでしょうか。

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