こんにちは!

こちらのQ&A記事では飼い主さんから実際に寄せられたご相談をご紹介します。

今回のご相談はこちら!

「愛犬が執拗に手をなめます。アレルギーかもと言われ、痒みの治療はしているのですかなかなかよくなりません…。」

飼い主さんから寄せられるご質問として、犬でも猫でも意外と多いのが、「執拗に続く舐める行動」です。

[飼い主さんが困っている「舐め行動」の例]

  • 自分の身体をずっと舐めていて、毛が薄くなったり、脱毛している。
  • 美味しい匂いがするわけでもないのに、家具や床、布などをずっと舐めたり噛んだりしている。
  • 執拗に飼い主の手などを舐めてくる。

執拗に舐める行動、病気の可能性も!

執拗に舐める行動は、自分の身体をなめるのか、床や飼い主さんなど、自分の身体ではないものをなめるのかによって原因は大きく異なります。

自分の身体をなめる場合

痒みによる原因

自分の身体をなめる場合、痒みや不快感が原因になっていることが多くあります。アレルギーなどで身体に痒みがある場合、前足・後足の先、股、脇、耳、口の周り、などがかゆくなり、執拗に掻いたり、舐めたりします。

特に、前足・後足の先、肉球の間がかゆい、指の間がかゆい場合や、股がかゆい場合に、その場所をなめ続けることがあります。

痒み以外にも、感覚神経の異常でその部分に不快感があるときや、関節が痛い場合にもなめたり、毛をむしったりする行動がみられることがあります。

心理的な原因(ストレス)

自分の身体をなめる理由は、痒みや不快感だけではありません。実は心理的なストレスによっても、自分の身体をなめ続ける行動が発生します。心理的なストレスが原因の場合、いくら痒みをとっても治らずなめ続けることになってしまいます。

「身体をなめる=痒み」と安易に考えず、心理的なストレスについても検討した方がよいでしょう。飼い主さんとの関係や、同居動物との関係、人間の気づかない臭いや音、刺激が少なく単調な生活、家族や同居動物との別離など、様々な心理的要因が、舐める行動につながることがあります。

執拗に舐める行動の程度が強くなり、完全に無目的な行動を繰り返し、脱毛や肌がただれるなどの問題が生じる状態を常同障害といいます。常同障害の状態では、薬物療法(心理的な影響のある薬物)も併用した治療が効果的です。痒みに対する治療を続けてきたけど、なかなか良くならないという場合、行動面・心理面からのアプローチが有効である場合もあります。

当院、ぎふ動物行動クリニック(院長:獣医行動診療科認定医奥田順之)では、犬猫の行動や心の問題に専門的に取り組んでおり、全国どこからでも、オンライン行動カウンセリングを実施しておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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①自分の身体をずっと舐めていて、毛が薄くなったり、脱毛している。

犬や猫が自分の身体のどこかの部分または全身的に舐め続け、毛が薄くなったり、脱毛したり、さらには皮膚が傷ついてしまったりしている場合、原因として考えられることは以下のとおりです。

  • 痒みがある
    • アトピー性皮膚炎:皮膚バリア機能が低下し、環境中の抗原に敏感に反応する慢性疾患です。もともとの炎症による痒みのほか、細菌などが二次的に増えやすくなるため、細菌による膿皮症や酵母菌によるマラセチア皮膚炎により掻痒感が悪化してしまいます。
    • 食物アレルギー:食べ物に含まれるアレルゲンに対する免疫反応で、皮膚や消化器の症状を起こす疾患です。特定のアレルゲンを含まない食事で症状が改善するかを確認する「除去食試験」及びその後そのアレルゲンを含む食事に戻して症状が再燃するかを確認する「食物負荷試験」により診断を行います。
    • 細菌などの増殖や感染による皮膚炎:膿皮症(ブドウ球菌などの細菌が増殖)、マラセチア皮膚炎(酵母菌であるマラセチアが増殖)、皮膚糸状菌症(真菌の感染)、ニキビダニ症(毛包に常在するニキビダニが増殖)、疥癬(ヒゼンダニの感染)、ノミアレルギー性皮膚炎(ノミの寄生によるアレルギー性皮膚炎)など。病原体により、抗生剤や駆虫薬などの方法で治療が行われます。
  • 痛みがある
    • 重度の皮膚炎:上記の痒みが非常に強い場合、掻いたり噛んだりすることで外傷となり、痛みを引き起こすこともあります。
    • 内臓の疾患:例えば、猫がお腹をしつこく舐めている場合、膀胱炎の痛みや違和感により引き起こされている場合もあります。
    • 骨格や神経の疾患:骨や関節に痛みがあったり、脊髄神経の疾患による痛みがある場合も考えられます。
  • 神経学的疾患
    • 知覚過敏を引き起こす神経疾患(脊髄空洞症など)で、皮膚を掻く行動や舐める行動がみられる場合があります。
  • 飼い主の関心をひきたい
  • 常同行動・常同障害

②美味しい匂いがするわけでもないのに、家具や床、布などをずっと舐めたり噛んだりしている。

犬が家具や床を舐め続ける場合、食事の中に何かの栄養素が不足していたり、神経学的な感覚異常が原因となっている場合もありますが、常同行動である場合もあります。

また、猫が布などを舐めたり吸ったりし続けてしまうことがあり、織物吸い、ウール吸い、ウールサッキングなどと呼ばれています。シャム猫などのオリエンタル種に多く発生するという研究や、早期離乳した猫に多いとの考察もされていますが、一般的に常同行動と考えられています。

③執拗に飼い主の手などを舐めてくる。甘噛みもしてくる。

手をペロペロ舐めてくるのは可愛らしいですが、あまりにも舐め続けているようだと飼い主さんも困ってしまいますし、「どうして??」と心配になってしまいますよね。その上、舐めさせないと、手を咬んでくるという状況も起きてくる場合があります。

犬が飼い主の手などをしつこく舐めるのは、なんらかの「関心をひくための行動」であると考えられます。

この行動の背景にはいろいろな可能性が考えられます。

[犬が飼い主の関心を求める背景の例]

  • 飼い主との触れ合いが足りない
  • 同居動物や小さな子どもがいる場合に、飼い主の愛情を独占したい
  • 日常生活の中に刺激が足りない
  • 体力が余っている

常同行動・常同障害とは?

常同行動や常同障害とは、今回のテーマである「舐め行動」以外にも、尾を追う・かじる、影や光を追う、実際には存在しないハエを追ったり空気を噛んだりするなどの行動が異常な頻度や持続時間で繰り返されるものです。肢端を長期間舐め続けて炎症が起き、「舐性皮膚炎」から肉芽腫(皮膚が固く盛り上がってしまう)ができる場合もあります。

関心をひくためにしつこく飼い主の手を舐める犬への対応

関心をひくための行動として飼い主の手を舐めたり、咬んだりする場合、そもそものところで、欲求不満であったり、疲れていないということがあるかもしれません。十分に活動させることが大切です。

散歩について、週に1~2回程度しか行かないという飼い主さんがいますが、これは問題です。散歩は犬にとって中心的な活動です。1日2回30分程度行くようにするとよいでしょう。それによって十分に活動させ、欲求を満たすことができれば、関心を引く行動は少なくなるかもしれません。

あるいは、フードが出てくるおもちゃなどを利用して、活動を促すことも重要です。フードをお皿から与えてしまうとすぐに完食してしまって、活動が少なくなってしまいます。フードが出てくるおもちゃを利用すれば、活動時間を伸ばし、欲求不満を解消することができるでしょう。

犬に関わる時間をしっかり持ち、しっかり活動させることが何より必要ですね。メリハリをつけて活動と休息をさせるようにしましょう。

過剰な舐め行動・グルーミング行動をしてしまう猫への対応

もし、過剰に舐めている部分が炎症を起こしていたり、傷ついたりしている場合には、動物病院で、その皮膚症状に対する適切な治療を受けましょう。

この行動は、欲求不満、不安、ストレスなどがきっかけとなっていることが多いため、猫の暮らしている環境を見直し、整備することも大切な治療のひとつです。例えば、休息場所・トイレ・水入れ・爪とぎ器などの材質・場所・数などを見直し、生活環境の中に適切な資源が十分にあるようにしましょう。

複数の猫を飼っている場合は、猫同士の関係に問題があることでストレスが生じている可能性もあります。ケンカなど思い当たるところがあれば、関係する猫について部屋を分けるなどの対策も考えてみましょう。

同居猫だけではなく、飼い主と猫との間の関係も、不安やストレスの軽減のために大変重要です。もし、猫を叱ったり、叩いたりすることがあったならば直ちに止め、できるだけ落ち着いた対応を心がけましょう。また、おもちゃを使って遊んだり、好きなおやつを使ってトレーニング的な活動を一緒にすることで、猫の欲求不満を解消するとともに、飼い主と猫との信頼関係も作ることができ、問題行動の軽減に効果があると考えられます。

また、これらの対応のほかに、飲み薬による薬物療法も併せて行うと効果がある場合もあります。抗うつ薬やSSRIと呼ばれる薬が使われます。

こちらの記事も参考になさってください!

【Q&A】猫の過剰なグルーミング どうしよう? (2021年12月27日)

猫の毛織物吸い(ウールサッキング)行動への対応

猫が食物ではないものを食べてしまうと、命に関わる場合もあります。まずは、安全対策のため、猫が口に入れてしまいそうな危険な物は環境から取り去る、あるいは猫が近づけないようにしましょう。例えば、これは毛織物ではないですが、電気コードなどもかじってしまう猫もいますので、その場合はカバーを付けて保護をしたり、腸内異物となり命に関わる物(ひも状の物など)は部屋の中から除去しましょう。

ごはんの回数やあげる方法、内容を変えてみるのもひとつの方法です。1日1食ではなく、1日分のごはんを数回、できるだけ回数多く小分けにするとよいでしょう。また、おやつやフードを中に入れるような知育おもちゃを使い、食べ物を探したり工夫して時間をかけて食べ物を得るという活動をすることで、口を使って食べるという行動に費やす時間をできるだけ長くしてみましょう。部屋の中の様々な場所に、小皿などに少量ずつ分けたフードやおやつを隠し、宝探しゲームで探索活動をするのもよいでしょう。

欲求不満、不安、ストレスを減らすことも必要です。前の項目での対応と同様に、猫の暮らしている環境を見直し、整備しましょう。例えば、休息場所・トイレ・水入れ・爪とぎ器などの材質・場所・数などを見直し、生活環境の中に適切な資源が十分にあるようにしましょう。

複数の猫を飼っている場合は、猫同士の関係に問題があることでストレスが生じている可能性もあります。ケンカなど思い当たるところがあれば、関係する猫について部屋を分けるなどの対策も考えてみましょう。

同居猫だけではなく、飼い主と猫との間の関係も、不安やストレスの軽減のために重要です。もし、猫を叱ったり、叩いたりすることがあったならば直ちに止め、できるだけ落ち着いた対応を心がけましょう。また、おもちゃで遊ぶ、好きなおやつを使ってトレーニングすることも、猫の欲求不満の解消と、飼い主と猫との信頼関係構築に役立ち、問題行動の軽減に効果があると考えられます。

犬と猫の問題行動診療(犬の攻撃行動、猫の不適切排尿、咬みつきなど)

ぎふ動物行動クリニックでは、犬の攻撃行動や吠えの問題、猫の不適切排尿や咬みつき、過剰グルーミングなど、多岐にわたる問題行動について、ご相談を承っています。

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