ご相談の主旨
- 家族に対する攻撃行動についてご相談いただきました。
- ここ10ヶ月、徐々に攻撃の頻度が高くなってきた中で、かかりつけの動物病院に連れて行った時にハーネスを外せなくなり、獣医師に相談したところ、当院を紹介され、来院されました。
基本の情報
- 犬種:チワワ
- 年齢:2歳10か月
- 性別:オス(去勢手術済み)
- 飼い主さん家族は、70代ご夫婦。
- 別に住んでいる10代のお孫さん兄妹がときどき遊びに来る。
- 1年半ほど前から2回引越しがあり、その前には攻撃行動はみられなかった。
- 過去に誤飲による内視鏡処置や膝蓋骨脱臼整復手術は受けているが、現在の健康状態は良好。
【咬みつき】攻撃行動の概要と経緯
[概要]
- ハーネスの付け外しの際の攻撃
- ハーネスを付ける時は、おやつを使うようにしたら問題なくなったが、外す時は咬まれる。ハーネスにリードを付けるときは問題ない。お孫さんと一緒に行くと余計に攻撃性が高くなるため、今は飼い主さん(奥さん)1人で行っている(1日1回)。
- 足ふきの際の攻撃
- 散歩の後、足を拭こうとすると攻撃されるようになったため、5~6か月前くらいからは拭くことを諦めた。
- 物を守る際の攻撃
- おもちゃで一緒に遊んだ後などは問題なく放すが、スリッパなど、自分で持っていった物を取り上げようとすると唸り、手を咬んでくる。
- 犬がウンチをした後に片付けようとすると唸ったり咬んだりする。ウンチをした後に食べてしまうことは以前からあった。オヤツで気をそらしているうちに片付けるようにしているが、うまくいかない時もあり、唸られたりした時にはしばらく片付けずにそのままにしている。
- 話している時の攻撃
- 飼い主さん(奥さん)とお孫さんが向かい合って話している時や、お孫さん(兄)とお孫さん(妹)が話している時、飼い主さん夫婦かお孫さん(妹)の足先(スリッパ)に咬みつく。お孫さんが居るだけで、話をしている状況でなければ、攻撃はない。
- 攻撃の前後には口がワナワナしている。
[経緯]
- 家の建て直しをするため、1年半ほど前から会社の方に飼い主さん(ご主人)と犬だけでの生活となった。日中は事務所の中に犬だけとなり、6ヶ月くらいその生活が続いた。その頃は、散歩に行くこと(ハーネスの付け外し)も、足を拭くことも問題はなかった。その頃に、飼い主さん(ご主人)と一緒に寝ていて、寝返りを打った時に攻撃的になる場面があった。
- 2022年7月から新居に移ったものの、犬の使うサークルや身の回りの物は同じものをずっと使っており、元の生活環境から大きく変化はしていない。移った当初は足を拭かせてくれたが、帰ってきてからしばらくして、攻撃の頻度が増えたように感じる。今は足も拭けない。
- 1週間前から、ハーネスを外す時は、声掛けして外すようにしたら少し良くなった。
診察室での様子
- クレート内で、人の気配や物音に対して吠えることが多かったが、布を被せて見えないようにすると落ち着いた。
- クレートから出ると、獣医師に向かって吠え、足先に咬みつく様子がみられた。飼い主さんが診察室を退室しても、行動は変わらなかった。
- 飼い主さんがハーネスを付けることはできた。診察室でもウェットタイプのオヤツをよく食べたため、食べている間に獣医師がハーネスを外すことを試みたが、ハーネスに触れる刺激に敏感に反応し、手に咬みつこうとした。
具体的な対応策
- お孫さんが来る時の対応の検討
- 離れていれば攻撃が発生しないということなので、人間が逃げられるゾーンを作っておき、当面はそこに逃げるよう対応しましょう。
- 時間があるときに、お孫さんと飼い主さんが一緒にリビングで、オヤツを使ったトレーニングをすると良いでしょう。
- ハーネスや首輪などの変更
- ハーネス・首輪をつけっぱなしにして、攻撃のタイミングを作らないようにしましょう
- 具体的にどのハーネス首輪を使うかは、家にあるものやペットショップで調達してみて、考えていきましょう。
- ウェットタイプのオヤツを与えながら、リードを外す。
- リードを外す際は、マットにウェットタイプのオヤツを塗って、食べさせながら外すようにしましょう。
- ウンチの時は、ウェットタイプのオヤツではなくドライタイプのオヤツを使う
- ウンチしたら、オヤツの音を立てながら、よくうんちできたねと声掛けして、オヤツを与えるようにしましょう。音の立てやすいドライタイプのオヤツのほうが、気をひきやすいでしょう。
- 一般的なトレーニング
- オヤツを使いながら、トレーニングをすることは重要ですので、なるべく毎日続けてもらうと良いでしょう。
- プライベートレッスン
- プライベートレッスンで時間をとり、基本的なトレーニングとハンドリングのトレーニングにじっくり向き合っていき、最終的に首輪やハーネスを外すという部分を目指すことができると良いでしょう。
- 身体を触る練習
- 身体を触ったり、抱っこしたりする練習は将来的には行っていきたいところです。飼い主さんと一緒にレッスンをする形と、お預かりして、ある程度プロの手で馴らす方法があります。
薬物療法について
- もし、上記対応を行ってみて、生活がまだ難しいという事であれば、薬物療法を検討しましょう。