犬は高齢になると、どうしても、身体的な問題から動きが悪くなったり、集中力が続かなくなったり、意欲が低下して、活動する機会が減少してしまいます。しかし、だからと言って、ずっと寝ていていいかと言えばそうではありません。身体も精神も、使わなければ衰えていくのみ。如何に、意欲を引き出して、活動をさせるのかと言うことが大切です。そのためには、その子の好きなこと、楽しいと感じること、喜ぶことが何なのか、よく観察して、犬の気持ちに寄り添って、活動をさせてあげることが大切です。
高齢犬にとって、定期的な運動を行うこと、ヒトや他の犬との社会的な交流を持つこと、新しいおもちゃに関心を寄せることなど、社会的刺激を増加させることは、認知機能の低下を予防することに有効と言うだけでなく、その犬が、一生を最後まで充実して過ごすために大切なことです。犬でもヒトでも、最後までイキイキ過ごしたいと感じるのは共通です。誰も、寝たきりにはなりたくないし、させたくないですよね。そのためには、まだ精神も身体も衰えきらないうちに、どれだけの栄養を与えてあげられるかが大切です。
ヒトの高齢者の機能維持についても同じです。フレイル(加齢に伴って心身の機能(筋力・認知・社会性など)が少しずつ低下し、要介護状態に至る前の段階)の発生と、日常的な運動には相関関係があることが分かっています。日常的な運動は、身体的な機能を維持するだけでなく、認知機能や社会活動の維持にも影響するのです。また、ヒトの認知機能の低下に影響する要因については多数の研究が行われていますが、総じて、精神刺激が多い生活を送っている人の方が、認知機能低下のリスクが低いという相関関係があることが示されています。
犬においても、精神的刺激をいかに増やしていくかを考えることが、認知機能低下を和らげる戦略として有用であると言えます。第一に散歩を充実することです。散歩は運動だけでなく、多くの精神的刺激を含みます。オスワリ・フセ・マテ・オイデといった基本的なトレーニングを日常的に取り入れることも大切です。最近ではしつけ教室などで、ノーズワークやバランスボールといったアクティビティを体験できるクラスも増えてきています。犬の幼稚園を活用し、若い犬との交流の機会を持つこともよいでしょう。自宅の中でできることとしては、頭を使ってフードを取り出す知育トイや、おやつ探しゲームなどもよいでしょう。
高齢犬になると寝てばっかりになりがちですが、できる限り日常的に刺激を与えて、脳を活性化させることが認知機能低下の予防には必要です。