酸化ストレスと言う言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、認知症と酸化ストレスには密接な関係があります。

 まず、酸化ストレスとは何でしょうか?動物の身体は呼吸をして、化学反応を繰り返しながら、生命活動を維持しています。生きている以上、そうした化学反応を止めることはできません。化学反応の過程で生み出されるのが、活性酸素やフリーラジカルと呼ばれる、身体を酸化させる物質です。ヒトや犬の身体には、活性酸素やフリーラジカルが生じても、身体の酸化を防ぐための抗酸化システムが備わっています。しかしながら、活性酸素やフリーラジカルの発生が多くなったり、抗酸化システムの能力が低下することにより、身体の酸化が進んでしまいます。

 脳は、身体の他の器官に比べ、エネルギーを多く使う器官であり、酸素の消費量が多い器官です。その分、活性酸素が発生しやすい状態になっています。また、脳には神経細胞が集積していますが、神経細胞には不飽和脂肪酸が豊富で、この不飽和脂肪酸は酸化に弱く、酸化を受けると過酸化脂肪酸になり、神経細胞の機能を壊してしまいます。また、脳の神経細胞は、一度障害を受けると再生しにくく、そのため、酸化ストレスによるダメージが蓄積しやすいと言う性質もあります。

 また、ヒトのアルツハイマー型認知症に関する研究の中で、酸化ストレスがアミロイドβの沈着を促進することが知られています。逆にアミロイドβは、神経細胞膜やミトコンドリアに作用して活性酸素を発生させます。酸化ストレスとアミロイドβの悪循環により、脳へのダメージがより速く進行すると考えられています。

 このような背景から、脳を守るためには、抗酸化システムを活性化させ、脳に酸化ダメージを蓄積しないことがとても重要と言うことがわかります。では、どのように脳を酸化ダメージから守れば良いかというと、①酸化ダメージ発生させるようにすること、②抗酸化システムを活性化することの2つが必要です。

 ヒトにおいては、喫煙や過度の飲酒、運動不足、睡眠不足、持続的なストレス等が、酸化ダメージを発生させる要因として指摘されています。喫煙や飲酒は犬には当てはまりませんが、運動不足や持続的なストレスと言う面は犬にも当てはまる面があるでしょう。運動については毎日の散歩が第一ですね。ストレスについては、暇すぎてストレスになっている犬もいるでしょう。このあたりは、脳への刺激という意味での『脳の栄養』にあたりますね。

 抗酸化システムを活性化させるためには、シンプルに抗酸化物質を摂取することが第一です。身体に備わる抗酸化システム自体は、年齢によって衰えてしまいます。自分自身で抗酸化物質を作り出せないのだから、外から摂取してこようと言う考え方ですね。これは、口から摂取できる『脳の栄養』にあたります。