ぎふ動物行動クリニックは猫の問題行動も扱っております。
また、オンラインにてもご相談を承っておりますので、お困りの方は一度ご相談ください。

【猫の排泄の問題について】

猫は「自分でトイレを覚えてくれる」「しつけに困らない」という話をよく耳にし、猫の排尿の問題で困っている方は犬ほど多くないと感じます。しかし、一旦排泄を失敗するようになってしまうとほかっておいても良くなることはなかなかなく、犬よりも行動範囲が広いため、いたるところに排泄を失敗してしまい、家族のお困り度合いが大きいように感じます。

その原因となるものは、ストレスや不安・葛藤(同居動物の増加や死別、屋内外での工事、飼い主の生活パターンの変化、食餌の変更、トイレの変更、野良猫の出現など)が根本的な原因となっていることが多くあります。

【排泄の失敗に関わる医学的な原因】

まず、行動学的疾患を考えていく上でどんなときでも最重要なのが、医学的な疾患の除外です。行動学的問題だけを考慮していくと、行動学的アプローチは間違っていないのに治療成果につながらない、ということになりかねません。

以下、考慮すべき医学的疾患を記載します。

・多飲多尿となる疾患
・整形疾患
・脳神経疾患、認知機能不全症候群
・膀胱炎、尿路結石
・腸炎、肛門嚢炎
・その他尿漏れとなる尿路系疾患

など……。これらの疾患でない可能性が高い場合、次に行動学的原因を考えていきます。

まず、排泄に関する行動学的異常であっても、それが「不適切な排尿」なのか「スプレー行動」なのか考えなければいけませんので、見分け方を掲載します(あくまで参考まで)。

【スプレー行動と不適切排尿の見分け方】

<スプレー行動>

・姿勢は?⇒通常立っている(座っていることもある)
・尿量は?⇒少量
・トイレの使用は?⇒通常の排泄時には使用する
・場所は?⇒通常は垂直面で決まった場所(水平面のこともある)
・排便は?⇒通常はトイレを使用

<不適切な排尿>

・姿勢は?⇒座っている
・尿量は?⇒多量
・トイレの使用は?⇒使用しなくなることが多い
・場所は?⇒好みの場所、素材
・排便は?⇒不適切な場所で行うこともある

【不適切な排尿の原因】

■トイレ自体の問題
トイレの清潔さ・形や大きさ・砂の種類・トイレの位置
■トイレの使用中に伴う問題
排尿排便時に伴う痛みや不快感、不安や恐怖。例えば、「トイレ中に嫌な音がした」「排泄時に痛い思いをした」「臭いが嫌だった」など。
■トイレに向かうまでの問題
向かうまでに伴う痛みや不快感、不安や恐怖。例えば「向かうまでに嫌な同居犬、同居猫がいる」「行こうとしたら嫌な音がした」など。
■そこで排泄したくなっているという問題
「その場所が好みだった」「素材や吸収力が好みだった」「その場所の清潔さが好みだった」など。

【不適切な排尿の治療法】

不適切な排尿に対して、以下の5点に注意してみてください。

1. 猫の快適な環境を提供する
トイレ自体の問題であればより良いトイレ環境にしましょう。猫は綺麗好きなので、広く清潔で臭いがないトイレを好みます。トイレそのものに対する印象が原因となっている場合には、この対策で改善が大いに見込めます。
トイレの使用前または使用中にともなう痛みや不快感、不安恐怖の軽減・除去も必要です。
不安や葛藤を取り除くことが不可能な場合もあるので、抗不安薬やフェリウェイ®といったツールを使用することもあります。

2. 体罰の禁止
体罰は飼い主と飼い猫の関係を悪化させるだけでなく、ストレスや不安・恐怖によって起きている問題であれば、なおさら事態を悪化させることにつながりかねません。場合によっては飼い主が見ていない場所でしてしまうようになるかもしれません。

3. 酵素入り洗浄剤での清掃
排泄物の臭いが残っていると再び同じ場所で排泄する可能性があるため、臭いを十分に分解できる洗浄剤で掃除しておかなければいけません。

4. 不適切な排泄場所へ接近できなくする
場所が常に決まっているのであれば、アルミホイルを敷いたりテープを裏にして設置したりすることで、その場所に近づけさせなくさせます。

※治療法3、4に関しては根本的な解決方法ではないので、その対策した場所ではしなくなるかもしれませんが、ネガティブな原因であればなおさら、他の場所で不適切な排泄をするようになるかもしれません。ポジティブな原因であれば有効かもしれません。

【スプレー行動の原因】

猫がスプレー行動をする理由として、以下のような原因が考えられます。
■同居猫や野外猫に対する社会的葛藤(同居猫との不仲、野良猫の出現など)
■対象となる人や物の特定の匂い(対象となる匂いが決まっている)
■生活環境の変化(新しい家族、引っ越し、新しい匂い、近くで工事を行っているなど)
■不十分な生活環境(高い位置に上れない、遊ぶ時間を設けていない、家の中に好奇心をくすぐるものが無いなど)
■スプレー行動に対する体罰や叱責(家族に対して不安・恐怖を抱く)
■分離不安

【スプレー行動の治療法】

スプレー行動を治療したい場合は、以下の点に注意してみてください。

1. 避妊去勢をする(最重要!!)
スプレー行動は去勢したオス猫の10%、避妊したメス猫の5%にもみられます。裏を返せば、スプレー行動は去勢した90%のオス猫、避妊した95%のメス猫にみられないということです。ある程度の年齢をいってからやるよりも、やはり若くスプレー行動に関する学習の入ってない段階で行うべきです。

2. 猫に快適な環境の提供
<猫が猫らしく生活するための環境を提供する>
例えば、「十分な時間、好きなオモチャで遊ぶ」「トイレ環境の整備」「高い場所へのアクセスの確保」「落ち着いて休める環境をつくる」など。
<不安や葛藤のきっかけを発見して取り除く>
野良猫がきっかけとなっていれば、近づけなくさせたり見えなくしたりすることや、高い位置に逃げられるようにする。同居猫と不仲であれば隔離するなど。

3. 尿スプレー場所の提供
スプレー行動自体は正常行動なのであえて禁止せず、その本来の行動を表出させる場所を作ることも一つです。なおかつそこでスプレー行動するように誘導することにより、よりその場所のみでスプレーするようになる可能性があります。

4. 体罰の禁止
排泄の問題に対して体罰は禁忌です。ストレスや不安恐怖によって起きている問題であれば、事態を悪化させることにつながり、飼い主が見ていない場所でしてしまうようになるかもしれません。

5. 酵素入り洗浄剤での清掃
排泄物の匂いが残っていると、再び同じ場所にスプレーする可能性があるため、匂いを十分分解できる洗浄剤で掃除しておかなければいけません。

6. 尿スプレー場所へ接近できなくする
場所が常に決まっているのであれば、アルミホイルを敷いたりテープを裏にして設置したりすることで、その場所に近づけさせなくする。

※治療法5、6に関しては対策した場所ではスプレー行動をしなくなるかもしれませんが、他の場所でスプレー行動するようになるかもしれません。

【快適なトイレの条件】

快適なトイレの条件は以下の様にまとめられます。

①. 形状

あまり深くなく、カバーがないもの
猫の体長の1.5倍くらいの大きさのもの
なるべくシステムトイレを使用しない

②. トイレ砂
粒の細かく砂状で無臭のもの
3㎝の深さにする
野良猫歴がある場合はより土に近いタイプがベター

③. トイレ数

飼育している猫の数+1
排尿排便を使い分ける猫もいるため、1頭でも2つは必要

④. 設置場所

静かでスペースが十分な場所
1つずつ別の場所に離して設置する
トイレにたどり着くまでの経路に猫の障害になるものがないようにする

⑤. 掃除頻度

可能な限り排泄の直後に掃除して臭いを残さないようにする
どれだけ忙しくても1日に1回は排泄物を除去する
システムトイレであってもシーツは1日1回交換することが望ましい
固まる砂の場合1~2週間に一回の頻度で砂の全交換をする
固まらない砂の場合、1日おきに1回砂の全交換をする
砂の全交換の際、トイレ自体もよく洗う

【まとめ】

ざっと治療法についてご説明させていただきましたが、不適切な排尿・スプレー行動のいずれの場合においても、医学的疾患によりいったんトイレ以外の排泄を学習してしまうと、去勢避妊された場合であってもトイレで排泄しなくなることがあったり、トイレに対する嫌な記憶(トラウマ)により、不適切な排尿・スプレー行動が継続してしまったりするかもしれません。それを治療するためには適切な知識と対策が必要となってきます。
わからないときは行動診療科を実施している動物病院に相談しましょう。

【引用文献】

■A Meta-Analysis of Studies of Treatments for Feline Urine Spraying
Daniel S. Mills, Sarah E. Redgate, Gary M. Landsberg PLoS One. 2011; 6(4): e18448
■Feline Urine Marking
TODAY’S VETERINARYTECHNICIAN, An Official Journal of the NAVC January/February 2016
■小動物臨床医のための5分間コンサルト 犬と猫の問題行動 診断・治療ガイド
Debra F.Horwitz, Jacqueline C.Neilson著
■犬と猫の治療ガイド 2015 私はこうしている (SA medicine books)
■猫における問題行動 藤井仁美 動物臨床医学26(3)101-104, 2017
■ネコの行動学 Paul Lethausen著 今泉みね子 訳 丸善出版
■臨床行動学 森裕司 武内ゆかり 南佳子 著 株式会社インターズー出版

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