猫の爪とぎは、猫ならではの生まれ持った大切な行動。・・・とはいえ、壁紙やだいじな家具などでがりがりされてしまうと「やめてー!」と叫んでしまう飼い主さんもいるのではないでしょうか。今日は、猫が爪をとぐ行動との上手なつきあい方について考えてみたいと思います。

どうして猫は爪とぎをするのか

爪を鋭くお手入れしている

爪とぎには、文字通り爪を鋭く保つ意味があります。

孤独なハンターを祖先種に持ち、もともとは狩りをする動物であった猫にとって、爪は大切な狩りのための道具であり、また、護身用の武器でもあります。大切な道具をいつも調子の良い状態に保つため、爪とぎをして表面の古い爪をはがし、鋭くしておきます。

また、爪が伸びすぎていると、爪がひっかかって外れなくなってしまったり、丸まって自分の皮膚に食い込んでしまうこともあるので、いつも安全に動けるよう爪をケアしておく意味もあります。

マーキング(視覚的・嗅覚的)

爪とぎには自分の縄張りを主張するための「マーキング」の意味もあります。

爪をといで爪跡を残すことで視覚的マーキングをすることができるため、猫はできるだけ身体を伸ばして高い位置に爪跡を残し、自分の大きさや強さをアピールしようとします。

また、猫の前肢の裏の肉球の間には、においを出す臭腺があり、爪とぎでこのにおいを残し、嗅覚的マーキングも同時に行っています。

気分転換にもなる

猫は、気分転換や準備運動にも良く爪とぎを使います。朝起きるとまず爪とぎをしに行く猫ちゃんも多いのではないでしょうか。

何か失敗したり、うまくいかなかったりした時にも「転位行動※」として爪とぎをすることがあります。

※葛藤や欲求不満がある時に出現する状況とは関係のない第三の行動

猫の爪とぎで困らないための基本の整備

猫の嗅覚に配慮した環境を整えよう

猫の爪とぎには「嗅覚的マーキング」の意味もあることは、すでにお話しました。

猫の嗅覚は、人間よりずっと優れています。猫にとっては、顔や体を擦り付けてフェロモンによってマーキングしたり、尿や爪とぎで自分のにおいをつけてマーキングすることが、他の猫に自分の存在を知らせる重要な嗅覚によるコミュニケーションとなっているのです。

そのため、知らない動物の匂いや芳香のある洗剤の匂いなどは猫に脅威を与えることがあり、不適切な場所で爪とぎをしてしまう要因となっている可能性があります。

お部屋の中を点検して、猫の嗅覚を尊重し、配慮した環境となっているか確認する必要があるでしょう。

なお、これらの猫に脅威を与えるにおいは、不適切な場所での排泄・尿スプレーなどの問題行動やストレス関連の病気につながる可能性もあります。

猫が爪とぎしたくなる場所には重点的に爪とぎ器を置こう

お部屋の中には、「特に猫が爪とぎしたくなる場所」があります。そういった場所には重点的に爪とぎ器・爪とぎ板を設置することで、して欲しくない場所での爪とぎを減らすことができます。

猫が爪とぎしたくなる場所は、猫がマーキングする必要がある!と感じる場所です。外の匂いが入ってきやすい玄関や窓の周辺、エリアの境界となる扉や部屋の境界周辺、柱や大きな家具など大きくて目立つ物などには、爪とぎしたくなる傾向があります。

気に入ってもらえる爪とぎ器を探そう

どんな爪とぎを好むかは猫によって違いがありますので、様々な素材やサイズの物を試して、うちの子お気に入りの一品を探しましょう。

素材には、段ボール、麻素材、木製などがあります。また、大きさや形も様々。床に置くタイプが良いのか、縦置きできるタイプが良いのか、また、身体を伸ばしてとげる大きな物など試してみましょう。既に置いてある爪とぎ器が古びてしまっている場合もあります。古くなって引っかかりが悪くなる前に、新しい物と交換するようにしましょう。

どうしてそこで爪とぎするの!?困る場所での爪とぎ対策

決まって爪とぎしてしまう場所があって困っている場合、まず前述の「基本の整備」をしっかり実施してみましょう。その上で、困っている爪とぎ場所に気に入ってくれた爪とぎ器を設置します。常にその場所に爪とぎ器があっても困らないなら、その状態で生活します。もし、本来は爪とぎ器が置いてあると困る場所なのであれば、その場所に置くのは一時的にして、1日に数cmずつ、困らない場所に向かって爪とぎ器を移動していきます。

この方法を実施する際に、一番ポイントとなるのは、困っている爪とぎ場所よりも、用意した爪とぎ器の魅力が高いこと。お気に入りの一品探しが肝要となります。

また、飼い主の関心をひきたくて、その場所で爪とぎをしていることもあります。

例えば、飼い主さんがお仕事中で構ってもらえない時に、たまたま壁紙に爪をかけたら「あっ!やめて!」と飼い主さんが急いでやってきた…という偶然の経験をすれば、猫はこの結果から学び、退屈で構ってほしい時にはその場所の壁紙に爪をかけるようになります。

こういった経験からの学習の要素が強い行動の場合、その行動に対して望む結果が得られないようにすることで、その行動を減らすことができます。この例の場合、壁紙に保護シートなどを貼った上で、猫が壁紙に爪をかけても特に注目したり声をかけたり急いで駈け寄ったりしないようにすることが効果のある対策となります。

猫のしつけ教室で、もっとたのしい猫ライフを!

しつけ教室ONELife/ぎふ動物行動クリニックでは、愛猫と飼い主さんが学ぶ場として、成猫向けの「猫のしつけ教室」と子猫及びこれから猫を飼う方向けの「こねこ教室」を実施しています。

「猫のしつけ教室」は、猫とより楽しく生活したい飼い主さん、また、粗相や尿マーキング、咬みつきなどの攻撃行動、要求鳴き、同居猫同士の不仲など、生活の中で困っている猫の行動を改善したい飼い主さんを対象としたマンツーマンのプライベートレッスン。ご来校のほか、オンラインや出張でのレッスンも可能です!お気軽にお問い合わせください。

お気軽にお問い合わせください。058-214-3442受付時間 9:00-17:00 [ 不定休 ]

お問い合わせ