猫の咬みつく行動やしつこい甘噛みに困っている飼い主さんは多いと思いますが、中には、突然、飼い猫に咬まれて出血し、びっくりしてしまった…急に本気咬みで襲い掛かってきて、大ケガをしてしまった…という緊急の内容でご連絡を受けることもあります。

このように、飼い主さんが大ケガをしてしまうほどの咬みつき方をするのは(いわゆる「本気咬み」)、多くの場合、猫が、何かに対して脅威や恐怖を感じた時に、自分自身を守るための行動です。

猫が恐怖を感じる理由

猫が恐怖を感じる理由はたくさんありますが、この中には、元来猫が持っている天敵(捕食者)に対する恐れのように、自分が傷つくことを防ぐための重要で正常な行動も含まれています。

自分にとって恐れるべき相手なのかどうか、猫は、視覚的、聴覚的、嗅覚的など様々な情報をもとに判断します。

例えば、いつもと違う服装をした飼い主さんが部屋に入ってきて驚いたり(視覚的情報)、家の前の道路で工事が始まって隠れて出てこなくなってしまったり(聴覚的情報)、同居猫が病院のにおいをつけて帰ってきたら毛を逆立てて威嚇をしたり(嗅覚的情報)、様々な情報がすべて、猫が恐怖を感じる理由になり得ます。

過剰な恐怖による問題行動も

正常な範囲を超えて、過剰に恐怖を感じてしまい、問題行動が起きるような場合もあります。例えば、音に対する恐怖症などがあり、猫は隠れたり逃げたりする行動が表れることが典型的ですが、尿マーキングや不適切な場所での排泄など、二次的な問題のきっかけとなることがあり、この一つとして、大きな音に反応して攻勢的な攻撃行動を示す場合があります。

このように、通常よりも音刺激に対して恐怖を強く感じ過ぎてしまう場合は、遺伝的に聴覚感度が高い可能性や何らかの原因による聴覚の変化(聴力の損失があるなど)など、身体的要因が関係している可能性もありますし、幼い頃にある種の音に関して心的外傷を負うような経験や嫌悪学習をしている可能性もあります。

飼い主の反応・対応が問題を助長することもある

「恐怖症」などの恐怖に関連した問題行動の要因のひとつが、飼い主の反応や対応による学習である場合があります。

例えば、猫が軽度の不安を示している時に、飼い主がなだめることで、猫がその飼い主の反応を好ましく受け取った結果、その不安行動が頻繁に強くあらわれるようになります。逆に、飼い主が不安を示している猫を叱ったり叩いたりして罰した場合、恐怖が増悪することで問題行動が助長されることもあります。

不安を示している時に限らず、猫が飼い主さんにとって都合の悪いことをした時に、その猫を叱ったり叩いたりして「罰」を与えることは、猫にとっては「威嚇されている」と感じられることであり、脅威や恐怖を与え、自身の身を守るための攻撃行動である「恐怖性/防御性攻撃行動」を引き起こすきっかけにもなりますのでやめましょう。

恐怖による攻撃が起きないようにするには

初期対応としては、恐怖の対象となっている刺激を特定し、その特定の刺激を避ける必要があります。また、信頼できる隠れ場所や逃げ場所を作っておくことも大切でしょう。

その特定の刺激に反応しないようにし、恐怖による攻撃が起きないようにするには、その刺激についてどの程度で反応するのかを判定し、反応が出ない小さな刺激から段階を踏んで与えながら、猫にとっての「良い物」を一緒に与える「系統的脱感作・拮抗条件づけ」という方法を実施します。フードやおやつ、おもちゃなど猫の好きなものを、反応が出ない程度の小さな刺激と一緒に与える形で、少しずつ刺激に慣らします。この時、ステップアップを急がずに段階を細かく分け、少しずつ進めていくのがポイントです。

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