お困りの飼い主さんも多い、犬の「分離不安」。今回は、「分離不安」の概要と、最近あった実際の事例をいくつかご紹介していきます。
犬の「分離不安」とは?
分離不安とは、犬がもっとも愛着を感じている対象と離れたときにみられる、苦痛を伴うストレス反応です。主に飼い主の外出時に見られ、犬が、飼い主が外出するサイン(服を着替える、カバンを持つ、鍵を持つ等)に気づくと、ソワソワして左右に動き続けたり、飼い主に跳びついたり、吠え続けるといった、不安行動を示します。外出時に、失禁・脱糞や、家具や家を破壊する行動、場合によっては、窓を破壊して逃走するという行動も起こります。
分離不安は、飼い主と離れることがきっかけとなる問題ではありますが、日常生活での適切な刺激や社会的関わり合いの不足、分離以外への恐怖や不安、飼い主への過度の愛着など、分離以外の要因が関連していることがあります。
音恐怖症や雷恐怖症と併存することがよく見られます。これは、留守番時に大きな雷が鳴ったことで、不安を感じるようになったというような、きっかけがある場合に起こります。
犬が「分離不安」を起こしやすい理由
ときに飼い主を大変困らせる問題行動を引き起こしてしまう「分離不安」ですが、実はこの反応は一般的に犬には多くみられるものであり、犬のうち約14%が潜在的に「分離不安」の可能性があるともいわれています。
そもそも、愛着に関連する行動は、社会性を持つ動物種においては重要な行動レパートリーのひとつです。
群れの仲間に対して、愛着を抱くことは、群れのメンバー間の適切な関りを促進し、社会的集団の維持に役立ちます。犬が、愛着を抱く群れのメンバーから引き離された際に不安を感じるのは、群れに戻ろうとする行動を促すためです。それがなければ、集団を維持することができません。
社会性が高く、群れで生活する動物であり、特に人との親和性・依存性を高める家畜化が行われてきた犬だからこそ、「分離不安」を引き起こしやすいといえます。一方で猫は、犬に比べて、人との親和性・依存性を高める家畜化の過程が短いことから、犬に比べれば分離不安発症のリスクは低いと言えます。
「分離不安」と「分離不安症」の違い
人の分離不安と分離不安症の違い
人の子どもの分離不安・分離不安症については、明確に違いが示されています。
分離不安とは、親など愛着を感じている相手と離れることでの不安であり、誰しもが感じるものです。保育園に行く際に、「離れたくない」と言って泣く子どもは分離不安を感じています。しかし、それが病気というわけではありませんね。いったん保育園の活動になじめば、友達と遊んだり、先生と活動をすることができます。
一方、「分離不安症」の子供では、その年齢で生じる分離不安よりもはるかに強い不安を感じ、親と離れてから再開するまで、迎えに来てくれることだけしか考えられなくなってしまいます。この状態では、通常の社会生活を営むことができません。このような子どもの場合、一定の診断基準を元に、専門の医師により、分離不安症と診断されることがあります。
犬の分離不安と分離不安症の整理
一方で、犬猫の分離不安に関しては、子どもと同じように、愛着を感じる相手との分離には当然不安を感じています。分離に不安を感じるからといって、直ちに、それが病的であるわけではありません。
ややこしいのが、日本獣医学会疾患名用語集には、「分離不安(separation anxiety)」と記載されているため、獣医師が診断名として使う用語が「分離不安」になっている点です。そのため「分離不安症」という言葉は獣医師の間ではあまり使いません。獣医師が「分離不安」と診断する場合、それは生理的なレベルの分離への不安ではなく、病的なレベルでの分離への不安が現れている場合であると理解すると良いでしょう。
「分離不安」の症状
「分離不安」の問題行動
分離不安では、以下のような問題行動を生じることがあります。
留守番中
- 吠える(過剰咆哮)
- 飼い主の外出中、吠え続けている
- いったん収まっても、すぐに吠えだす。
- 失禁・脱糞/不適切な場所での排泄
- トイレではない場所で排せつしてしまう
- 排泄した物を踏んでしまう
- 室内での破壊行動
- 家具や物を齧り、壊す
- 壁を掘って壊す(外に出ようとする)
- 出口周辺にある物や、飼い主の匂いのするものが対象となることが多い
- 自傷及び常同行動
- 左右に動き続ける(糞尿を踏んでしまって、毎日身体中汚れてしまう場合が多い)
- 過度に舐めて皮膚を傷つける
- 自分の尾を追って咬み、傷つける など
- 逃避を試みる
- ケージから出ようとする(鉄のケージが壊れることや、歯が折れることも)
- 窓ガラスを割って逃走する
飼い主の在宅時
- 過度の後追い行動
- 飼い主のことを監視し、常に近くにいようとする
- 過度に抱っこを要求する
- ハウスができない
- 自分一人でハウスに入って休むことができない
- ハウスに閉じ込められることを嫌がり、出ようとする
飼い主の外出準備中
- 過度の後追い行動
- 外出が近づくにつれ、飼い主への監視がつよくなる
- 攻撃行動
- 飼い主の外出を阻止するために、足に咬みつく
- 過剰な吠え
- 外出することを察した犬が、過剰に吠えるようになる
「分離不安」の犬によくみられる身体的症状
- 震え
- 過剰によだれが出る
- 呼吸が速い
- 食欲不振
- 元気がない、活動性が低下する
「分離不安」以外の原因がある可能性も…
留守番中に問題行動があるからといって、すべてが「分離不安」によるものとは限りません。
例えば、「分離不安」でよくある過剰に吠えてしまう行動については、飼い主の不在とは関係なく、環境で起きた何らかの刺激(大きな音など)に対する反応や、老犬の場合は認知機能の低下が関係している場合もあります。破壊行動であれば、遊びや探索行動の結果である場合もありますし、留守番ではなく他の刺激に対する恐怖反応(雷恐怖症など)である可能性もあります。また、不適切な場所における排泄の問題行動については、医学的な身体疾患が原因となっていたり、単純にトイレで排泄する学習が不十分であるということも考えられます。
留守番の間に起きており、「分離不安」でよくみられる問題行動がある場合にも、それが本当に分離と関係しているのかどうか、よく見極める必要があります。
叱らないで!その行動は「仕返し」ではありません
留守番中に起きた破壊行動や不適切な場所における排泄などの問題行動を発見すると、誰しも、犬が「置いて行かれた腹いせでやっている」「仕返しでやっている」「悪いことだとわかってやっている」と感じてしまうものかもしれません。破壊されたり汚された部屋の惨状を目の当たりにして、腹を立て、裏切られたと感じ、犬を叱ったり罰を与えてしまう場合もあるかもしれません。
しかし、ここで重要なのは、その行動が悪意ではなく不安や苦しみの結果であるということです。その行動によって叱られた犬は、留守番の時に苦しみ続けるばかりか、飼い主の帰宅時にも「叱られ、罰せられる」という恐怖を与えられ、それ以降は飼い主が帰宅することに対しても常に不安を抱くことになる恐れがあります。それに加え、罰せられることへの恐怖により、防御性の攻撃が起こり、もうひとつの問題行動を生じさせることになる可能性もあります。
犬の「分離不安」の治療
まずは安全対策&環境整備
不安に伴う犬の行動(逃亡しようとする行動・破壊行動など)の時に犬自身がケガをしてしまう可能性があります。問題行動の程度によっては、犬を同伴しての外出、不安を誘発しない代替場所の利用(知人に預ける、ペットホテルを利用するなど)も検討しましょう。また、留守番させる場所が安全かどうかをよく確認しましょう。
また、快適なクレートや専用の部屋を準備するなど、留守番中に犬が安心して快適に過ごせる環境を整備することが不可欠です。普段から飼い主への過剰な後追いがある場合、後追い行動を減らすよう、場所を柵で仕切ったり、繋留できる場所を作るなどの環境整備も必要です。
経過観察のために、飼い主が出かけている間の様子を見守りカメラなどで録音・録画できる設備を整えることも治療に役立つでしょう。
外出時や帰宅時の対応修正
留守番に対して不安がある犬は、飼い主が外出に出かける時、そして帰宅した時に過剰に興奮するなどの強い反応を示すことが多いものです。また、飼い主側も興奮した犬に対しておとなしく留守番をするよう言い聞かせたり、帰宅直後にお互い大喜びで挨拶をするなど、犬がより興奮してしまうような儀式が習慣となっている場合もあります。
外出前、帰宅後の15分間程度は、犬を無視するようにして、興奮させないようにしましょう。帰宅後、犬が落ち着いて静かになってから、挨拶をしたり、相手をするようにしましょう。
自立心を育てるトレーニング
犬の要求に応えて関心を与えるのではなく、犬と関わる時間は必ず飼い主が犬を誘うことから始め、終わりも飼い主が終わらせるようにしましょう。また、飼い主への過剰な後追いがある場合は、マテの練習をし、少しずつ待てる時間を伸ばしていくなど、できるだけ後追いを減らしていくようなトレーニングも必要です。
また、犬自身が考えて起こした行動に対してごほうびを与えることで、自立した行動を強化することが大切です。この自立した行動の強化に役立つプログラムのひとつにノーズワークがあります。ノーズワークは匂いを探索することで犬自身の自発的な行動を促すアクティビティであるため、自立心を育てるためにおすすめできる方法です。
飼い主の外出準備に慣れるトレーニング
- 犬が飼い主の外出を予期する手がかりとなっている準備を部分に分けて点検してみる
- 着替える、化粧をする、鍵を持つ、かばんに荷物を詰める、コートを着る、玄関まで移動する、ドアを開ける など
- 犬がリラックスしている時に、外出前の準備をする
- 点検したうちの一部分だけでもよい
- 犬が不安になってついて来たりしても無視する
- 準備をしても家を出ず、準備した物は元の場所に戻す
- これを1日に2~5回練習する
- 犬がリラックスしている状態を保てるよう観察しながら練習する
- 目標は、飼い主の外出準備を見ても外出を予期しなくなり、不安による反応が減ること
外出中にも安心していられるトレーニング
- 知育トイの活用
- 飼い主の外出時には、犬の好きなおやつやフードをつめられるおもちゃを与えて出かけるようにしましょう。飼い主の外出と好きなもの・うれしいものを結びつけるようにするためです。
- 外出時間に犬が空腹になるよう、ごはんの時間を調整しておくとより効果的でしょう。
- クレートトレーニング
- クレートやケージが安心でリラックスできる場所であることを、犬に教えるため、クレートトレーニングを行うとよいでしょう。おやつやフードを投げ入れて出入りさせたり、身近な場所に常に置いておくなどして、安心して休める場所という認識をつけましょう。これにより、静かで、不安に感じる必要のない、安全な場所を犬に提供することができるようになります。
計画的な留守番のトレーニング
犬に、飼い主が必ず帰宅するということを学習させ、飼い主の外出時やいない時間も安心して過ごすという経験を積ませるトレーニングです。
治療期間中は、犬が留守番に対して不安を感じずに落ち着いてリラックスしている必要があるため、犬がすでに留守番場所と不安を結びつけている場合には、新しい場所を用いてトレーニングを行うことが理想です。
1日に1~2回、トレーニングを行います。
- 犬が落ち着いている時に、特別なおやつを与えてから外出します。
- トレーニング時は、飼い主は本当の外出時と同様に行動しましょう。(外出時に車を使うなら車を動かす、必ず持つ物があれば持って出る など)
- 外出時間は、ストレス反応が生じることのない時間にする必要があるため、落ち着いてリラックスしていられる外出時間を分単位、秒単位で、確認しながら進めます。
- 帰宅時は、飼い主は感情を表現することなく落ち着いて家に入りましょう。
- ストレス反応が出てこなければ、徐々に外出時間を増やしていきます。飛躍的に延ばしすぎず、最初の頃は秒単位で、その後も1~3分程度としましょう。いつも決まった時間分を増やすのではなく、日によって変化させるのがよいでしょう。
- 一般的に、30分間問題がなければ、外出時間をそれ以前より長めに延ばせると言われています(一度に5~10分程度ずつ延ばす)。
- 2~3時間の計画的な留守番が問題なくできるようになれば、一日中の留守番もできることが多いと言われています。
- トレーニング中にストレス反応が出てしまった場合、進め方が速すぎたと考えましょう。ストレス反応が出ないレベルまで戻り、再度、よりゆっくりとトレーニングを進めていきましょう。
薬物療法
不安や恐怖に関連する神経伝達物質を調整する薬剤を使った薬物療法が有効である場合があります。
分離不安の事例①連休明けに破壊行動が始まった11歳柴犬
基本の情報
- 犬種:柴犬、年齢:11歳、メス(不妊手術済み)
- 飼い主さんはご夫婦お二人
- 一戸建て、普段は部屋の中を自由にしている
- 留守番時は、玄関脇の土間に繋留している
問題となっている行動について
- 以前から飼い主さんが出かける時に察して落ち着きがなくなることはあったが、吠えはしなかった
- ゴールデンウィーク中は飼い主さんがずっと在宅している状態だった
- ゴールデンウィーク明けから、留守番時に以下の問題が発生するようになった
- 留守番スペースに連れて行く時に誘導できなくなった
- 以前はおやつで誘導
- 今はおやつでつられない
- 抱っこして無理やり連れて行って何回か咬まれた
- 繋留した瞬間から吠えが発生
- ゴールデンウィーク前は全く吠えず、繋留するとクッションに座るかクレートに入って落ち着いていた
- 破壊行動
- 衝立にしている段ボールを噛みちぎる
- 柱を噛む
- 留守番スペースに連れて行く時に誘導できなくなった
具体的な対応策
- 留守番場所などの事情により、下記の対応策のみ実施することとなった。
- 散歩時間を変えて、散歩の流れで繋留、ごはんの間に出かける
- 【現状】お散歩→犬のごはん→お母さん出かける準備→お母さん出かける
- 【変更後】お母さん出かける準備→お散歩→犬のごはん(知育トイにごはんを入れて時間がかかるようにする)→犬がごはん食べてる間にそっとお母さんが出かける
- 薬物療法
- 抗不安薬2種類(トラゾドン及びガバペンチン)を併用し、外出する日のみ事前に内服
経過
- 3週間後まで
- 留守番時は、開始時の用量にて抗不安薬2種類を併用
- 薬物療法によりストレス反応は軽減したものの、治療開始前よりは軽度だが破壊行動がある日もあった
- 3週間後
- 服薬していれば落ち着いて留守番ができるようになった
- 薬剤の用量を徐々に減らしていくこととした
- 5週間後
- 薬剤1種類のみ(ガバペンチン)、低用量の使用でも留守番時のストレス反応がみられなくなった
- 8週間後
- 薬剤を使用しなくても、留守番時のストレス反応がみられなくなった
- 現状についての評価
- 良好
- 諸事情によりほぼ薬物療法しか実施できなかったものの、薬物の補助により留守番中に落ち着いて過ごせる期間を設けることができたことで、犬の留守番に対する認知を変えていくことができたと考えられる
分離不安の事例②留守番場所への不安が強かった2歳柴犬
基本の情報
- 犬種:柴犬、年齢:2歳、メス(不妊手術済み)
- 飼い主さんはご夫婦お二人
- 一戸建て、普段は、リビングにいることが多いが、家の中は基本的に自由
- 留守番時も、家の中を自由にしている
- 同居動物として、猫が複数いる
問題となっている行動について
- [昨年9月]引越し
- 新居で人間も猫もいない時、1~2時間犬をケージに入れておいた
- 口の中をケガするくらいケージを齧ったり、ガリガリと引っかいたりしていた
- これ以前はケージ内や留守番時での問題行動は全くなかった
- [今年1月]
- 部屋に1匹で置いて行かれるのを嫌がり、お風呂の中まで無理やり入ってきた
- 家の中では常に人間の後ろをついて歩いていた
- ケージに入ることを嫌がり、入れることができなくなった
- [今年2月以降]
- 家の中での留守番で問題が大きかったため、外の駐車場にケージを置いてみた
- ケージには入れることができなかったため、結局繋留した
- 外出して帰ってくると暴れて車を傷つけた跡があった
- 留守番中、閉めてあった寝室のドアに飛びついて開け、寝室の網戸を破った
- 留守番中、玄関のドアを引っかき、扉がキズだらけになった
- 家の中での留守番で問題が大きかったため、外の駐車場にケージを置いてみた
- [半年くらい前から]
- 寝る時は寝室で一緒にいるようにした
- それからは少し落ち着き、破壊行動もやや改善している
- [現在]
- 現状で困っているのは玄関のドアへの破壊行動
- リビングから玄関に出るドアも留守中は飛びついて自分で開けてしまう
- 出かける時は暴れたり吠えたりすることはない
- 1時間くらい経つとドアを引っかき始める(見守りカメラで確認)
- 問題行動があるのは留守番時のみだが、引越し後に飼い主さんの在宅時にも不安な表情をみせるようになった
- 現状で困っているのは玄関のドアへの破壊行動
具体的な対応策
- 留守番時の対策
- 集中して取り組める仕事を提供する(知育トイなど)
- コングなどを使い、長く時間がかかるよう工夫する
- いろいろな知育トイを使ってみて飽きさせないようにする
- 布などにフードをくるんで探索させてみる
- 留守中にテレビやラジオをつけておくのも良い
- 集中して取り組める仕事を提供する(知育トイなど)
- トレーニング
- 飼い主さんが出かける時の練習
- 本当のお出かけの予定がなく時間のある時に練習する
- 「出かけて行ったけど平気だった」「なんともないうちに帰ってきた」という経験を積ませたい
- ①ドアを開けて短時間出るけどすぐ戻ってくる
- 反応が出る前に戻ってくることが大切
- 最初は一瞬でもOK
- ②繰り返すうち平気になってきたら時間を少しずつ少しずつ増やす
- 急に長時間にしない
- 反応が出ない範囲で時間を少しずつ増やす
- 出かける準備の段階で反応が強い場合は、出かける準備をするけど実はでかけない、という練習をするのも良い
- 飼い主さんが出かける時の練習
- 飼い主さんとの信頼関係構築
- コミュニケーションとしてのトレーニング
- 犬が楽しみにできることが大切
- オスワリなどの簡単なコマンドでよい
- もったいぶらずにおやつを頻繁にあげる
- トレーニングはだいたい時間を決めて毎日行い、習慣づける
- 毎日「この時間にたのしいことがある」という期待感が大切
- 予測可能で好意的な関わりを持つことが安心につながる
- コミュニケーションとしてのトレーニング
- 薬物療法
- フルオキセチンを使用していく
- 留守番時以外にも不安な表情がみられることから、飼い主さんが継続的に使用する薬剤を希望
- 眠くなる、消化器症状(下痢、食欲不振)などの副作用が出る場合あり
- 効果が出るまで3~4週間かかる
- フルオキセチンを使用していく
経過
- 2週間後
- 家での様子
- 問題行動は変わりない
- フルオキセチンを内服し始めて以降、飼い主さんの在宅時に後追いをするなど、不穏な様子が強くなった
- 内服から10日後からは、体の震え、パンティング(荒い息遣い)もみられるようになった
- 現状についての考察
- 飼い主さんとの分離以外の不安要因が強い
- 新奇環境及び閉所に対する不安:昨年9月の引越し時に、新居のケージ内で1匹にしたことで感作してしまったものと考えられる
- 飼い主さんとの分離は、これらの不安を助長する形で、問題行動のきっかけとなっていると考えられる
- 薬剤(フルオキセチン)については、逆説的な興奮が現れてしまっているため、変更が必要
- 飼い主さんとの分離以外の不安要因が強い
- 対策として考えられること
- 新奇環境の刺激を減らす(留守番中の居場所変更)
- リビングでの反応がより強いので、留守番中の別の居場所を作る
- 居場所を寝室に制限(閉所に対する恐怖もありそうなので、閉じ込める形になると逆効果の可能性もある)
- 2階の使っていない部屋を開放して、犬がくつろぎやすい部屋にしてみる
- リビングでの反応がより強いので、留守番中の別の居場所を作る
- 新奇環境の刺激を減らす(留守番中の居場所変更)
- 家での様子
- 系統的脱感作・拮抗条件づけ
- 閉所に対して
- クレートトレーニング
- 引越し時に入れていた檻と似たものではなく、ハードクレートなどで落ち着けるとよい
- 上記の2階の開放する部屋に置いてみるとよい
- 当面扉は閉めず、置いておくことと出入りの練習だけ行う
- 飼い主との分離
- 家の中で別の部屋にいる練習をするのもよい(手順は基本的には同じ、スモールステップで進める)
- 閉所に対して
- サンダーシャツを試してみる
- 薬物療法
- ガバペンチン+トラゾドンを留守番前に内服させてみる
- 3週間後
- ガバペンチン+トラゾドンでも不穏な様子が出るとの連絡があったため、ガバペンチンだけで様子をみてもらうことにした
- ガバペンチンと手持ちのジルケーンを併用したところ、不穏な様子なく落ち着いたとのこと
- 4週間後
- 家での様子
- リビング以外の場所を試すため、ガレージに繋留することにした
- 以前は車をひっかいたりしていたが、今はしない
- 普段からガレージに繋留し、留守番時も同じにしている
- しばらくガバペンチンとジルケーンを飲ませていたが、今は薬なしでも落ち着いており、何も困っていることがない
- リビング以外の場所を試すため、ガレージに繋留することにした
- 現状についての評価
- 大変良好
- 新奇環境(リビング)及び閉所への不安が、ガレージで繋留することでクリアできたものと考えられる
- 以前はガレージでも落ち着かず、破壊行動が出ていたが、薬物療法が補助的に効果があったものと考えられる
- 家での様子
分離不安の事例③同居犬との死別により過剰咆哮が発生した10歳ミニチュアダックス
基本の情報
- 犬種:ミニチュアダックスフンド、年齢:10歳1か月、性別:メス
- 飼い主さんは、ご夫婦2人家族
- 飼い始めた頃からずっと先住犬と一緒だったが、昨年2月に亡くなった
- 昨年11月にかかりつけ動物病院にて血液検査したところ肝臓の数値が急上昇、体重も以前より減っていたが、他の検査上異常なく、先住犬を亡くした精神的ショックから来ているのではないかと言われた
- 生活環境:庭ありの一軒家、犬は1階にいることが多い
- 留守番時の居場所
- 以前はLDKにいた
- お隣の家より吠え声の苦情が来てしまったため、その家から遠い和室にいてもらっている
- 今後LDKの窓を防音にリフォームするため、7月以降はLDKにいることになる
問題となっている行動について
- [昨年2月~]留守中のトイレ失敗
- それ以前はトイレの失敗は1回もなかった
- その当時はリビングで留守番していたが、トイレ以外の場所で排尿することが出てきた(毎回ではない)
- 留守番の場所を和室にしてからは失敗が減っていたが、先日、布団の上にしてあることがあった
- [昨年内]近隣宅の通報で吠えていることに気づいた
- 近隣宅から保健所に連絡があったため、ペットカメラを設置
- 留守の間、ずっとではないがたまに激しく鳴いていた
- [今年5月8日]近隣宅から直接申し出あり
- 直接、鳴き声の苦情を受けた
- 以前より鳴く頻度が増し、10分も我慢できなくなっていた
- GWに、別に暮らす家族も戻ってきて賑やかだったが、GWが終わって静かになってしまったことがきっかけではないか
- 出かけるときの様子
- ドア前で伏せて待っており、そのときは吠えない
- お母さんが出ていく時はすぐ吠えることもある
- できるだけそっと出ていくようにしている
- 帰宅時の様子
- とても興奮して吠える
- 以前は吠えることはなかった
- 落ち着くまで相手をしないようにしている
- 家族に対する後追い
- 家族全員に対してついて歩く
- お風呂、トイレなどに行くとき
- そのときは吠えない
具体的な対策
- 出かける時・帰宅時の対策
- そっと気づかないうちに出ていく
- 帰宅時は落ち着くまで構わない
- 現在すでに注意して対応しているので、継続する
- 留守番時の対策
- 集中して取り組める仕事を提供する(知育トイなど)
- 今使っている知育トイの難易度をあげてみる
- コングなどを使い、長く時間がかかるよう工夫する
- いろいろな知育トイを使ってみて飽きさせないようにする
- 布などにフードをくるんで探索させてみる
- 留守中にテレビやラジオをつけておく
- 集中して取り組める仕事を提供する(知育トイなど)
- トレーニング
- 飼い主さんが出かける時の練習
- 本当のお出かけの予定がなく時間のある時に練習する
- ①ドアを開けて数秒出るけどすぐ戻ってくる
- 犬が吠える前に戻ってくることが大切
- 最初は一瞬でOK
- ②繰り返すうち平気になってきたら時間を少しずつ少しずつ増やす
- 急に長時間にしない
- 犬が吠えない範囲で時間を少しずつ増やす
- 出かける準備の段階で反応が強い場合は、出かける準備をするけど実はでかけない、という練習をするのも良い
- 「待つ」トレーニング
- 犬自身が楽しめるように取り組んでいくのが大切、無理強いしてがんばる必要はない
- 最初は一瞬待つだけでOK
- 短時間でも毎日トレーニングの時間を作ってみると良い
- 毎日1秒ずつでも、待てる距離や時間が伸びていくと良い
- 自立心を育てるトレーニング
- ノーズワークがおすすめ
- 今後プライベートレッスンから始めて、トレーナーさんと勉強していけるとよいと思います
- 飼い主さんが出かける時の練習
- 薬物療法
- フルオキセチンを使用していく
- 眠くなる、消化器症状(下痢、食欲不振)などの副作用が出る場合あり
- 効果が出るまで3~4週間かかる
- フルオキセチンを使用していく
経過
- 4週間後
- 薬物療法開始後の様子について
- 吠え方は多少弱くなったが、吠える頻度、持続時間は変わらず
- トイレの失敗もある
- 出かける前の一連の飼い主さんの行動の中で、和室に入れる時の反応が一番強く、興奮のスイッチが入るポイントはそこであると考えられるものの、防音の関係上しばらくは和室に居てもらいたいという事情がある(リビングの防音工事を控えており、工事以降はリビングを居場所にできる)
- 以前はリビングが居場所であり、留守番時もリビングのほうが今より落ち着いていた
- 当面は、薬を変更して和室に入れるタイミングでしっかり落ち着けるようにし、工事以降はリビングを居場所に変更して、その様子次第で環境をどう改善するか検討する
- 薬剤はトラゾドン+ガバペンチンを留守番前に内服するよう変更
- 薬物療法開始後の様子について
- 7週間後
- 家での様子
- 10日ほど前から、リビングで生活するようになり、和室にいるときより出かける時の反応弱くなった
- 吠えの持続時間は減った(半分程度)
- 午前中は吠えずにいられるようになった
- 昼頃から吠えている(見守りカメラにて)
- 体重が200g程度増えた
- 以前は小屋の中で寝ていたが、今はリビングのドア前で張っている感じで寝ている
- 評価
- 前回よりは落ち着いている
- 薬の効果が弱まってくると吠え始めるものと考えられる
- 指導内容
- 環境修正
- ドアの前で見張っている感じが強いので、ドア前まで行けないように区画し、ドアが直接見えないよう目隠しできるとよい
- トレーニング
- 自立心を育てるトレーニングを実施していきましょう
- プライベートレッスンで、ノーズワークなどにもチャレンジするとよいでしょう
- 環境修正
- 現状に対する評価
- 治療成果はまだ不十分
- 今後も、さらなる環境整備及び行動修正法、犬の自立を促すトレーニングを実施していく必要がある
- 家での様子
犬と猫の問題行動診療(犬の攻撃行動、猫の不適切排尿、咬みつきなど)
ぎふ動物行動クリニックでは、犬の攻撃行動や吠えの問題、猫の不適切排尿や咬みつき、過剰グルーミングなど、多岐にわたる問題行動について、ご相談を承っています。
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