ご相談の主旨
- 家族への攻撃行動(咬みつき)についてご相談いただきました。
基本の情報
- 犬種:ミックス
- 年齢:1歳8ヶ月
- 性別:メス(不妊手術済み)
- 飼い主さんは、30~40代ご夫婦と10代娘さんの3人家族。
- 生後2ヶ月くらいの頃に保護団体から迎えた。
【咬みつき】攻撃行動の経歴
[経緯・詳細]
- 2022年夏
- 1歳過ぎから唸る、歯を見せることはあった。
- ケージを閉めると唸る行動がたまに出るようになってきた。
- 2022年秋
- 1歳3~4か月の頃、お母さんに跳びかかって咬みついてくる行動がみられるようになった。血は出なかったが痛かった。
- 2022年秋
- 娘さんと一緒に寝ていて、寝返りを打った際に咬まれた。
- 2022年12月25日
- お父さんが夫婦の寝室に犬を連れていき、少し後にお母さんが布団に入ろうとしたら唸り、跳びかかって顔を咬まれた。
- 2023年3月
- お母さんが帰宅した時にケージを開けると、出てきてお腹を見せることが多く、毎回撫でているが、たまに唸ることがあった。(お父さんが帰宅した時は、お腹を見せず、喜んでぴょんぴょん跳ねている。)
- 2023年3月28日
- 娘さんが散歩に行った後、足を拭いた時に唸り、苦労して拭いた。その後、犬がゴハンを食べ終わり、リビングでくつろいでいた所に、娘さんが近くの床に座ったら、犬が跳びかかって馬乗りになっている状態で顔を咬まれた。多少犬が落ち着いて離れた後、お母さんがオヤツを出してケージに入れようとしたがいつものオヤツではつられず、ペースト状のオヤツでなんとかケージに入ったものの、扉を閉めるときは怒った。
- 2023年4月17日
- 犬がリビングで鹿の角をかじっていて、お母さんがそこから1メートル程離れた場所にあった毛布を片付けようとしたところ、跳びかかられて咬まれた。顔・腕・足を咬まれながらも、首輪を持って制御したところ、徐々に落ち着いた。娘さんにペースト状のオヤツを皿に入れてもらい、ケージの中に設置したら、ケージに入っていった。この時も、ケージを閉めようとすると吠えかかった。この日以降もシカの角を与えているが、取り上げようとしても唸ることはなく、問題がない。
[最近の攻撃行動の状況(ここ1週間程度)]
- ここ1週間程度、お母さんは細心の注意を払っているので、唸られていない。
- 娘さんは日常的に唸られている。触ったり、寝返りを打ったりしたときに唸っている。
- 昨日は、娘さんが1回唸られた。夜21時前、お父さんと犬が一緒にリビングにいる時に娘さんが帰ってきて、犬を触っていたところ、しばらくしたら鼻に皺を寄せ、唸った。
[攻撃が発生しやすい状況]
- 眠い時に近づいた場合
- 朝は機嫌が悪い印象がある。(飼い主さんがでかけるまで)
- 夜も機嫌が悪い印象がある。(21時以降)
- 留守番前、ケージに入れた後
- ケージを閉める時に吠えかかる頻度・強度が増している。(お母さんがケージに入れた後に、オヤツを与えようとすると、手を目掛けて攻撃してくるため、最近はお父さんがケージに入れるようにしている。お父さんには唸らない。)
[対応]
- 最初は、唸った時は、叩いたり叱ったりすることがあった。逆上する印象があったので最近はそうせずに、無視するようにしている。
- お父さんは、強く叱ったり、叩いたりすることはない。
- 娘さんは、唸っていても「避けられるから大丈夫」という感覚で、あまり気にしていなかった。
診断とお話し
- 攻撃行動が発生する対象は、お母さんと娘さんにほぼ限定されているとのことで、お父さんとは小さい頃からの信頼関係の構築がよりうまくいっているのだと考えられます。今後、お母さんと娘さんが安全にお世話をしていくために、マイナスとなる事象を避けた上で、徐々にプラスとなる好意的なトレーニングなどを行い、関係を再構築していく必要があるでしょう。
- 以前から唸ることはあったそうですが、最近になって咬みつきに発展する攻撃が多発しており、唸る様子なく突然跳びかかってくることもあるとのこと。唸る行動は、犬が発している警告ですので、それを無視せずに対応することで、攻撃も回避することができます。逆に、警告を無視することが多ければ、犬は警告の意味がないと判断し、前触れなく咬むという攻撃に至るようになってしまいます。
- 現在は、攻撃行動の頻度が増しているため、冷却期間が必要です。まずは犬にとって悪い印象が付いている事象が生活の中にできるだけないようにし、唸ったり咬みつく行動を引き起こさないことに集中して対処していきましょう。
具体的な対応策
- 唸った場面の記録を取っていきましょう。
- 唸った場面を記録しておくことで、どのような場面で唸るのか確認することができます。
- 娘さんと一緒に寝るという状況に関しては、一旦止めてみましょう。
- 寝返りの際に咬まれてしまうことについては、寝ている状況で回避できるものではないため、リスクが高く、繰り返し起きてしまうことが想定されます。しばらくは、一緒に寝るということは我慢しましょう。
- ケージの扉を安全に閉める工夫をしましょう。
- ケージの外にサークルを設置して二重にする。
- ケージの扉を閉めるための棒をはじめから設置しておく。
- 犬が寝てしまう前にケージに入れるようにしましょう。
- お父さん・お母さん・娘さんと好意的なトレーニングを行ってみましょう。
- オヤツを使った簡単なトレーニングをやっていきましょう。
- ボディランゲージを家族全員が理解できるよう努力をしましょう。
薬物療法について
- 塩酸フルオキセチンを内服してみましょう。
- 副作用としては、食欲低下/下痢/眠くなりやすい などがあります。