優位性と問題行動の再考
犬は家族との間に序列を作らないということは、行動学の考え方として一般的に語られています。
序列とは、直線的で硬直的な順位関係のことを指します。かつて、飼育下のオオカミの研究において、直線的な序列関係、序列に関わる闘争が観察されました。その結果から、犬も同じように直線的で硬直的な社会関係がベースにあると考えられるようになりました。
それが体罰や強制的な訓練を行うことで、犬を従わせるという、考え方を肯定する材料となったという過去があります。今でも「犬は家族との間に順位を作る」という認識が広がっています。
しかし、その後の野生下のオオカミの観察などを通じて、オオカミの群れは血縁関係をベースにした個体の集団であり、親が優位性を発揮するものの、直線的な序列関係や、序列に伴う闘争が頻繁に行われるものではなく、むしろ協力的であることが知られるようになってきました。
これらの観察から、序列関係や、序列に伴う攻撃は、血縁のない成獣が緊密な状態で飼育された場合に起こりやすくなるもので、野生下での構造とは異なると考えられます。
一方、優劣関係は、その場その場で個体同士のコミュニケーションとして生じます。
たとえば、人間同士でも、何かの資源分配の権限には、個体同士の優劣が存在するでしょう。子どもたちに、ケーキを8等分して渡すのは、多くの場合親です。子どもの自由にさせていたら、独り占めしてしまうかもしれません。だから親が優位性を発揮して、資源の分配権を握ることで、資源分配に関して平等な社会を形成しています。
犬と人の間でも、資源獲得に関わる優劣が存在します。食べ物に関する分配権は、多くの場合飼い主が握っています。しかし、中には、人間の食事中に吠え続ける犬に根負けして、毎回食べ物を与えてしまう(与えないことができない)飼い主もいるでしょう。
このような、日々行われる優劣をめぐるコミュニケーションは、犬と飼い主の関係を構築していきます。犬が優位性を発揮する場面ばかりが続くことはリスクをはらみます。
人間生活を営む上では、飼い主が優位性を発揮すべき場面も少なくないでしょう。しかし、犬が、飼い主のそうした態度を、受け入れがたく思うことで、犬が要求と攻撃をもって、飼い主の行動を制御し、自信の要求を通そうとする事態になる事があります。
問題行動の要因になる事もあります。今回の勉強会では、飼い主と犬の優劣関係に焦点をあてて、考えていきたいと思います。
今回の問題行動解決塾では、優位性・劣位性と人と犬の関係、そして、問題行動との関係に焦点をあて、優劣の社会関係と問題行動について再考します。
セミナーシリーズ「-問題行動解決塾-理論編」
過去のセミナー(アーカイブ配信中)
4月12日
怖がりの犬のための行動学
恐怖刺激に馴らすということの基礎基本
5月10日
老犬の行動的ケアと犬の認知症の基礎基本
6月13日
犬の攻撃行動への対応の基礎
7月11日
行動学の基礎、学習の基本である二つの条件づけについて学ぼう!(古典的条件づけ編)
8月8日
問題行動を治療するとは!?
獣医行動診療科を安心して活用するためのイロハ
9月19日
攻撃と回避の学習
関係を再構築するための行動修正
開催概要
日時
2020年10月14日 21:00〜22:30
講義 21:00~22:00
質疑 22:00~22:30
講師
奥田順之獣医師
・獣医行動診療科認定医
・ぎふ動物行動クリニック院長
・鹿児島大学獣医学部講師(動物行動学)
場所
- ZOOMミーティング
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