動物の行動・心理を操作するもの
動物の行動は、内発的・外発的に動機づけられ、行動の結果によるフィードバックをもとにその頻度を増やしも減らしもします。
行動の結果として報酬を与えられることは、その行動を増やし、反対に行動に対し罰が与えられとその行動を減らします。あるいは、一度増加した行動も、報酬を提示しないことで、消去され、発現が減少します。
こうした学習理論に基づく、「行動の修飾」は、日常生活の中で意図せず起こっていると同時に、トレーニングの現場では、意図的に利用され、動物の行動に変化をもたらしています。
トレーニングの中で、積極的に罰を用いることは、一般に動物を抑圧し、苦痛を与える手法だと捉えられ、優先して用いられるべきものではありません。ですから、報酬をベースにしたトレーニングを行うことが、人道的な動物の扱いを実現するには必須となります。
報酬を用いたトレーニングを行うことは、確かに、急性の強い抑圧はないかもしれません。一方で、報酬で動機づけられた行動は、動物の『自発的な』行動といえるのでしょうか?
レバーを引くと脳内の報酬系に刺激が入る電極を埋め込まれたラットは、動けなくなるまでレバーを押し続けます。
スマホに依存した現代人は、何があろうとスマホを手放せず、フリックし続けます。
いずれも報酬に動機づけられた行動ですが、報酬に依存することで、行動の選択肢を奪われ、自己判断能力が低下している状態といえるでしょう。
一方で、罰となるような嫌悪刺激は、動物の自己判断能力を奪うものであると言い切れるのでしょうか?
元々、嫌悪の情動は「その刺激を回避すべき、その刺激から遠ざかるべき」事を教えるシグナルです。その動物が生きていく上で避けるべき刺激を学ぶために、嫌悪の情動が存在するのであれば、嫌悪刺激を用いることが、必ずしも、動物の自己判断能力を奪うものにはならないでしょう。
トレーニングは、動物が社会に適応するための学習を支援する取り組みにも、動物を人の意のままに操作しようとする試みにもなり得ます。
ある手法が動物にとって素晴らしいものであっても、その手法に対する学びは、使う者にとって手法への愛着を強め、手法を使うことの依存性を高めます。
「If all you have is a hammer, Everything looks like a nail」 という言葉があります。日本語にすれば、「ハンマーしか持っていなければすべてが釘のように見える」となります。
動物個体ごとの個性を見て、その個体が健全に生きていくために、適切な”道具”を選択することが私たちに求められます。
今回の勉強会では、動物の操作と自発性に目を向け、動物が本質的に自発的に行動しながら、私たちの社会と適応していくためには、どのような心構えが必要なのか考えます。

セミナーシリーズ「動物幸福論」

元京都大学霊長類研究所准教授で、動物の認知心理学、動物福祉の専門家として、東山動物園の再生プランに取り組む上野吉一先生。
年間120症例以上、人と犬猫の間で起こる問題行動を診察するぎふ動物行動クリニック院長で、全国に9人しかいない獣医行動診療科認定医の奥田順之先生。
2人が紐解く、セミナーシリーズ『動物幸福論』。
人と動物が共に暮らしていく上で、私たちが考えなければならない動物の福祉、倫理、関係、そして共生。それらの概念を用いて、人と動物とが共に暮らす世界で、私たち一人一人がが動物をどう捉え、どう接していくのか。その先に、現場レベルにどう落とし込んでいくのか。
正解のない問いに対して、「正解」ではなく「考え方」や「判断軸」を共に考える勉強会です。
「動物幸福論」では、上野先生を話し手、奥田先生を聞き手として、月に1回ずつ、動物福祉・関係学を中心としたセミナーを配信いたします。受講を希望される方は、ONELifeチャンネルにご登録ください。

開催概要

目的
動物の福祉や倫理といった概念や、人と動物の関係学についての学びを深めることで、人と動物がどのように関係を築いていったらよいのかを考え、それぞれの参加者が、現場レベルで実践できるようにすること。
対象
  • 動物福祉・関係学を学びたい人
  • 動物に関わる職業についている人
  • 動物に関わるボランティア活動をしている人
講師
上野吉一先生(話し手)
・東山動植物園企画官
・元京都大学霊長類研究所准教授
奥田順之先生(聞き手)
・NPO法人人と動物の共生センター理事長
・獣医行動診療科認定医
日時
2020年10月24日 21:00~22:30
(多少(15分程度)延長する可能性があります。)
場所
  • ZOOMミーティング
  • YouTubeライブ

※リアルタイムでご参加いただけない方のために、開催後2週間限定で動画配信サイト(vimeo)にて配信いたします。
概ねイベント開催の3日後に公開し、配信期間はイベント開催から2週間です。

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ONELifeチャンネル

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今後の予定

「動物幸福論」は、毎月1回開催。開催日程は、月によって変わります。概ね月の後半の土曜日です。開催時間は随時決定していきます。

主催団体・問い合わせ先

認定NPO法人人と動物の共生センター
058-214-3442
info@tomo-iki.jp
担当:鈴木
【オンライン行動カウンセリングのご案内】
当院では、獣医行動診療科認定医らによる、オンライン行動カウンセリングを実施しております。人の危険があるなど、緊急の対応の必要がある場合は、ご相談ください。詳細はこちら

【預かりによる問題行動トレーニングのご案内】
家族に対する攻撃行動など、非常に危険で、人の安全確保が難しい例をはじめとして、飼い主では手に負えない場合には、獣医行動診療科認定医監修の元、長期預かりトレーニングを行っております。詳細はこちら